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第十一章

11-10 二号店とばして三号店?

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 ようやく人の列がなくなり、一息入れることができた時にはもうお昼だった。

「みんな、お疲れ様。とりあえずの山は越えたので、適宜交代で昼食を食べて来てね。」
「ありがとうございます。今日は何ですか?」
「旦那様と奥様方の手作りのサンドウィッチです。」
「え…、恐れ多くて食べる事ができません…。」
「食べないなら、俺達が食べるけど…。」
「いえ、いただきます!」

皆ウキウキとしながら順番に昼食をとる。
店に残っているクラリッセさんと話をしていると、レルネさんがやって来た。

「午前中にどれだけ売れたんじゃ?」
「そうですね。石鹸は軽く2,000個は売れましたね。しゃんぷりんは400個いってます。」
「ほう…、それじゃもっと作った方が良いということじゃな。」
「奥様、左様に思います。」
「そうすると、研究室に置く場所が無くなって来るの…。」
「へ?レルネさん、午前中に何個作ったんですか?」
「そりゃ、ミリーの氷魔法のおかげで作るのが格段に速くなっての。かれこれ1,000個は作ったかの。
 それと、何と言ったかの。“ぐろす”なるものじゃが、ほとんどが植物の油なので、この世界でもできると思うが、あれも生産していくのかの?」
「そうですね。追々という事にしましょうか、って言っても、レルネさんの事ですから、ルカさんに頼んで作らせるつもりなんでしょ?」
「はは、バレておったか。
 先ほどルカが来ての。あの店でも売るモノが無いかって相談があったのじゃ。」
「そうですね。石鹸としゃんぷりん、下着はこちらで売って、ファッションとアクセサリーはアデリンさんの店となると、コスメをルカさんの店で売るってのが良いかもしれませんね。」
「なんじゃ、その“はくしょん”と“あくさそり”と“ごずめ”と言うのは?」
「“はくしょん”ではなく、“ふぁっしょん”。“あくさそり”ではなく“あくせさり”、“ごずめ”ではなく“こすめ”です。」
「用語はいいから、ふぁっしょんとは何ぞや?」
「服や下着などで綺麗にすることです。」
「あくさそりは?」
「イアリングやリング、ネックレスといった身に着ける貴金属のことですね。」
「こすめは?」
「化粧品のことです。」

もう、言葉なんてどうでもいいや…。

「そうか、ではルカの受け持つ店にも店員を入れる必要があるの。」
「レルネさん、もしかして、もう作っちゃったとか…。」
「紅はこの世界でもあるからの。あれを“りっぷくりいむ”として花のエキスと色素を取り出したものを作っておいたぞ。
 “ぐろす”も、夕方までには試作品はできるじゃろうて。
 あと、何と言ったかの?そうそう“ふぁんで”というものも植物の色素から摂り出したモノを加工すればできるじゃろう。」
「“ふぁんで”を“おしろい”にしないでくださいね。あの中には銀や水銀が含まれていますので、肌には良くありませんから。」
「ほう、イチはおしろいを知っておるのか。」
「遊郭で見ました。ブランさんには使わないように言ってます。」
「であれば、銀や水銀を入れないものであれば、すぐにできるぞ。」
「それは良いですね。ブランさんも喜びますよ。」

研究室の話を聞くと、少し手狭になってきたようだ。
あのスペースに3人が黙々と石鹸やらしゃんぷりんを作っているだけならいいが、それ以外にも…となるとやはり手狭になる…。

「そう言えば、レルネさんの店の奥はどうなっているんですか?」
「後ろは倉庫兼工場のようなものじゃな。」
「寝る場所は?」
「2階になるが、それでも間口も狭いからの。」
「改修しますか?」
「そりゃ、そうしてもらえると嬉しいが…。」
「分かりました。では、ジョスさんを連れてルカさんのところに行ってきますよ。
 メリアさん、その間お店の方を頼んで良いかい?」
「任せてくださいね。」

ジョスさんのところに行って、改修工事をまた頼むのだが、その場合はお酒が効果的だ。
強い酒はたっぷり買ってきた。

「こんちゃ~。ジョスさんいますか?」
「おう!ニノマエさんか。店開店したんだってな。」
「はい。これ奥さんに使ってもらってください。」

石鹸としゃんぷりんを渡す。

「これが噂の石鹸としゃんぷりんってやつか。もらっちまっても良いのかい?」
「そのために持ってきたんですよ。あ、それといつものやつです。」

スピ〇ッツを出す。

「おぉ!いつもすまないな。
で、今日も工事か何かか?」
「えぇ。三号店を改修しようと思いまして。」
「何?あんた、もう3店舗目を作ろうとしているのか?」
「えぇ。でも今回は既に店舗として開店している店の改修になります。」
「分かった。それじゃ、今から見に行くか。」

ジョスさんと一緒にルカさんが店番をしている魔道具店に行く。

「ルカさん、いる~?」
「ルカってのは売りもんじゃありませんよ~。」
「ほな、しゃーないな…。って言ってる場合かい!」
「ははは、ニノマエさんですね~。もしかしてレルネ様のお話を聞かれたんですか?」
「あぁ。この店を化粧品を売る店にしてはどうかと思ってね。」
「あ、朝にレルネ様からいただいた試作品のこれですね。」

リップクリームを見せる。

「そうだ。りっぷくりーむとかぐろすとかふぁんでを錬成して売るってのはどうだろうと思ってね。」
「今よりも忙しくなりますか?」
「多分ね。それも女性ばかり来る店になるだろうね。そう言えばルカさんは錬成魔法とか使えるの?」
「初歩的なモノだけですね。それに一人で店を切り盛りするのは正直難しいですね。」
「そうか、それじゃ、ヒトを雇うか?」
「そうですね。それと錬成できる魔導師も一人欲しいですね。
 私だけだと心もとないので…。」
「分かった。じゃ、店を改修してる間、ルカさんも俺の研究室に行って錬成魔法を練習しておくと良いよ。どういった店舗にしたいんだい?」
「間取りはこれ以上変えることはできないと思いますので、1階は店舗と事務所と研究室、2階に住める部屋があると嬉しいです。」
「ジョスさん、この間口と奥行きだとどれくらいの期間で改修できる?」
「そうさな…。簡易なものであれば3日もあればできるが、ただなぁ…。」
「何か問題でもあるんですか?」
「ここって、一応3階建だぞ。3階をどう改修するんだ?」

 へ?ルカさん何も言ってなかったんだが…。
一抹の不安を覚える。

「ルカさん、3階には何があるんですか?」
「えぇ~、うちも知りません。レルネさんが知っていると思うんですか…。」

ディートリヒに念話でレルネさんに3階には何があるのか聞くと、レルネさん用の研究室のようだ。
好きにしてもらって良いという事なので、3階を研究室にして1階の店舗と事務室を少し広くしてはどうかとジョスさんから提案された。

 奥の部屋に行くと…、うわ…。倉庫じゃん…。それもたくさんの魔道具がある…。
これどうするんだ?とは言え、整理しないと改修もできないから、ジョスさんには間取りだけ見てもらい、改修は明後日からにしてもらいつつ、奥へと進む。
次の部屋は研究室か…。この3間で構成されている。
うん…、俗に言う“ウナギの寝床”のような作りだ。
2階に上がると…。
うん…。材料が野積みになっている…。
そして3階はレルネさんの研究室と…。
そう考えていくと一つの疑問にぶち当たった。

「なぁ、ルカさんはどこで寝てるんだ?」
「店のカウンターですが…。」

こりゃいかん…。明日は石鹸販売班とこの店の断捨離班に分けなくてはいけなくなった…。

ジョスさんに明後日からの工事と金額を聞き、工期を5日にしてもらい、今日は店に戻ることとした。

帰りに市場に寄り、新鮮な野菜とミルク、堅パンを買う。
その足でトーレスさんの店に行き、ヒップバッグの試作品を5個買って店に戻った。

 今夜はメイドさんズに手伝ってもらい、ハンバーグにした。
ミンチ機を使い、バジリスク、ブル、オークの肉を混ぜ堅パンと卵を混ぜる。
野菜サラダとスープも作って、笑顔で皆を迎えた。

「みんな、お疲れ様。」
「社長、今日一日すごい売り上げになりました!」
「食事をしながら聞こうか。先ずはみんな手を洗ってね。」



22名が勢ぞろいする。圧巻だ。

「今日の売り上げをご報告いたします。
 石鹸が4,500個、シャンプリンが1,250個、計金貨4枚と大銀貨75枚の売り上げになりました。」
「おぉ~(((((おおお))))))」

 そこから原材料費を引いても金貨3枚以上の儲けか…。
ただ、石鹸としゃんぷりんは一回買ったら数日は売れないから、明日以降の売り上げがどうなるかだ。

「みな、今日はお疲れ様。ゆっくり休んで明日からも励んでほしい。
 でも、今日ほどは売れないと思うので、一人一人何をすれば定期的に売れるのかを考えてもらえるといいね。
 明日は、店の販売を任せるヒトと、レルネさんとルカさんの店の整理に行く人に分けたいと思います。
 レルネさん、ディートリヒ、ナズナ、ベリル、ルカさんでお店の整理をしようと思います。
 アイナは馬車、アデリンさんたちは服の製作、ヤットさんラットさんはミシンと馬車を担当してください。残りのヒトはお店をお願いします。」

「はーい!」
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