上 下
273 / 318
第十一章

11-2 皆へのプレゼント

しおりを挟む
 添い寝だけで終わる訳がないじゃないか…。

しかし6人はキツいよ。無理だよ。死ぬよ。
なので、約束通りメリアさんとレルネさんだけにしてもらう。
申し訳ないけど、皆は明日以降ということ…、あ、4日後か…。

 ディートリヒたちはしぶしぶ部屋に戻っていったが、ちゃんと埋め合わせするモノは買って来たからね。朝になったら渡すから!と思いながら、メリアさんとレルネさんと愛し合った。

「お疲れのところすみませんでした…。でも、居ても経っても居られなかったんです。」
「そうじゃ、イチが居なくなってからは、ディートリヒ達も不安になって、心ここにあらずだったの。」
「俺の家はここですよ。
 帰ってこない理由はありません。」
「しかし、向こうの世界では…コホン…、その事は抜きにしようかの」
「そうです。カズさんが居る。それだけで満足です。」

これまで考えていた事…。
準備を進めている事もちゃんと皆に伝えよう。

「メリアさん、レルネさん…。どうか俺の話を聞いてほしい…。

 確かに俺は向こうの世界に戻っていく。でも、そろそろ決めようかと思う。
 向こうの世界では、俺はしがないおっさんだ…。
 俺は、皆といる方が楽しいし充実している。
 おそらく、俺の寿命はあと20か30年…。
 第二の人生として、この世界に腰を落ち着けたいと思っている。
 でも、そうすると便利なモノを持ってこれなくなる…。
 それが一番気がかりなんだ。」
「カズさん…、あなたってヒトは…。
そんな事で悩まないでください。
ここでは一人ではありません。
 それに私たちはカズさんの便利なモノに期待して、こうやって夫婦になった訳ではありません。
 カズさんさえ居てくれれば、私は満足です。」
「イチよ。儂は便利な道具が欲しいぞ、というのは嘘じゃ。
 前の“渡り人”のように消えてしまうのは、もうこりごりじゃ。」
「メリアさん、レルネさん…、ありがとう…。
 いつか分からないけど、こちらに根を下ろすよ…。」
「皆も喜ぶことでしょう。」

俺は泣いていた。
大粒の涙を流し、おいおいと男泣きをした…。
それをメリアさんとレルネさんが抱きしめてくれる。
愛されているんだ…と感じた。

 向こうの世界で感じられなくなったこの思い…。俺はヒト恋しかったんだ。
嬉しい時、悲しい時、怒った時、笑った時、その感情を皆と共有していきたかったんだ…。
やはり、一人では生きていけないんだ…。
前を向いて歩いていこう。このヒト達を愛し、幸せにしていきたいと心から思う。
ホント、自分勝手だな…。息子や娘はなんて思うんだろう…。
こんな父親ですまない…。

「イチが脆いのは、“渡り人”であるというサガなのじゃろうな…。
 二つの世界を行き来する者…、精神がいつ崩壊してもおかしくはないのじゃろう…。
 崩壊せぬよう、儂らが守ってあげないといけないのぉ…。」
「レルネ、その通りですね。
 カズさんは強い、でも脆い…。その脆さを私達で助けていかないといけませんね。
 ふふ。でもカズさん、可愛いです。食べちゃいたいくらい可愛いです。」
「ほう、メリアもそう思うのか。やはり、母性をくすぐる存在なのじゃな。」

言いたきゃ言え、笑いたきゃ笑えば良い…。
俺は、この二人に心底甘えていきたい…。
ディートリヒにしか見せなかった弱さ、脆さをこの二人なら受け止めてくれる、そう感じた。
俺の居場所…、存在…、そして生きた証をここに残していく…。
それまで、皆と言の葉を重ね、そして繋がっていきたい…。





「カズさん、朝ですよ。起きてください。」
「昨晩はいろいろとあったからの…。でも、そろそろ起きる時間じゃ。メリア、すまないが氷魔法をイチの背中にぶつけてやれ。」
「死んでしまいますよ。」
「いや、死なぬように手加減するのじゃ。」
「そんな事できれば、私は大魔導士になってますよ。」

なんか、俺を肴に遊んでいるとしか思えない。

「大丈夫です。もう起きましたよ。」
「ちっ、起きてしもうたか…。」
「レルネさん、本気でやろうとしてましたね…。
 じゃ、レルネさんのお土産はナシという事で…。」
「わ、わ、嘘じゃ、冗談じゃ。さ、早う下に行くぞ。」

2階に行き、皆と顔を合わせる。
皆が笑顔だ。それに期待を込めた瞳がコワイ…。

「えと…。」
「カズ様、すべてお話しいたしました。皆、承諾しております。」
「そうか…。すまないな。ディートリヒ。」
「それでは、皆に朝の挨拶をお願いしますね。」

一人ずつにキスをしていく。
雇用している10名は目のやり場に困っているが、アデリンさんのところのお針子さんたちとサーシャとネーナは好奇心なのか、目をキラキラ輝かせている。

クラリッセさんが作ってくれた朝食を食べ、皆がくつろぐ。

「すまないが、今日もお休みにしようか。」
「え、よろしいんですか。」
「あぁ、差し当たって、石鹸としゃんぷりんを売る準備くらいしかないからね。
 それと、皆で今日は店を出す際の練習をしよう。」

先ずは昨日リストをもらったとおりに袋に入れてある下着を渡すことにする。

「えと、これはメリアさんね。そしてレルネさん、ディートリヒ、ナズナ、ベリル、スピネル、アイナ、ミリー、ニコル。」

可愛い紙袋に入れて渡す。

「この袋…、可愛いですね。これをここで作ることはできますか。」
「紙はダンジョンの楮でできるから問題ないと思うが、染料を考えないといけないな。」
「イチよ。そんなの簡単じゃ。儂にまかせておけ。スピネル、ミリー後ほど紙を漉くぞ。」
「分かりました。」

「そして、これがクラリッセさん。サーシャさん、ネーナさん。
 こっちがレイケシアさん、アデリンさん、トニュフさんに、フラヴィさん、エルリカさん、アネッテさん、最後にルカさん。ってルカさんは向こうの店か。んじゃ、後で渡しておくか。」
「イチよ、それなら儂が行ってくるぞ。」

「ありがとうございます!」

皆がお礼を言ってくれた。
レイケシアさんに至っては、既に眼が血走っている。

「それじゃ、みんな部屋に戻って着けてきて良いよ。
 んと、1時間後にここに集合ね。あ、アデリンさん、昨日お願いしたもの出来てるなら持ってきてね。」

全員が、猛ダッシュだ。アデリンさんに至っては、サムズアップをしながらダッシュして行った。
レルネさんはルカさんに持っていくと言って家を出る。
メリアさんと寝室に行く。

「では、カズさん、着けてくださいませんか。」
「ひゃい!」

妖艶な眼差しで俺を見つめるレルネさん…。
うん。綺麗ですよ。

「こんなに綺麗になるんですね…。それにこれを着ればカズさんを襲うことができる、と。」
「いえ、それはあくまでも下着ですからね。下着ではないモノも入ってますので。」
「この黒いスベスベしたものですね。
 これは何というモノなのですか。」
「ナイトガウンというもので、夜寝るときに着るものです。」
「ふふ。これは凄いですね。私が見ても艶やかに見えますね。」
「こういったものも、将来的には作っていければと思います。
 やはり、女性は美しくあって欲しいですからね。」
「で、こちらは何か下着とは違う素材のようですが…。」
「これは水着です。クローヌで造る大きなお風呂のようなところで着るものです。」
「下着とは違い、ピチっとしますね。
 ただ…、少し恥ずかしいのですが…、あの…、出ちゃうんですが…。」
「え、何が?あ、ごめんなさい。」

そうだよね…。少し食い込んだ水着は大切なところを覆う○が出てしまうんだった。

「この世界で脱毛剤はあるんですか?」
「あ、脇に使うものならあります。」
「ただ、薬品であれば大切な部分にダメージが残りますので、俺が治療しましょうか。」
「ではお願いします。」

死滅の光で毛根を無くせばいけないか。
それをメリアさんで試すのも何だけど、最初はメリアさんしかいない。

“死滅の光!”

うわ!綺麗になった。跡もない。これ使えるね。

「カズさん、これを皆さんにしてあげてください。」
「えと…、妻と伴侶は良いのですが…、それ以外の女性は…。」
「あ、では、その魔法を教えてくださいませんか。」

メリアさんに、ウィルスという存在を教えるのは難しい。
なので、先ず一本髪の毛を抜いてもらい、毛根があるのを確認してもらう。

「この部分が毛根といって、髪の毛などを作る場所です。
 この場所を無くすようにイメージしながらマナを当てるという感じです。」
「分かりました。丁度レルネが戻って来たので、レルネに試してみましょう。レルネ~カズさんの部屋に紙袋持って入ってきて~!」
「え、あ、それはマズい…。」

レルネさんが入ってきて、メリアさんが水着を着るように言う。
レルネさん、水着を見つけて着るも、出ない…。

「なんじゃ、メリアとは全然違う水着ではないか?
 なんで、メリアは下着のようなのに、儂のは一枚なのじゃ?それにメリアは黒なのに、儂のは紺なのじゃ?」

「えと、レルネさんとアイナさんには小さい子が着る水着を入れてあるんです…。」

すみません…。遊び半分、冗談半分でスクール水着を入れてます…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

真夏の温泉物語

矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

【完結済み】正義のヒロインレッドバスターカレン。凌辱リョナ処刑。たまに和姦されちゃいます♪

屠龍
ファンタジー
レッドバスターカレンは正義の変身ヒロインである。 彼女は普段は学生の雛月カレンとして勉学に励みながら、亡き父親の残したアイテム。 ホープペンダントの力でレッドバスターカレンとなって悪の組織ダークネスシャドーに立ち向かう正義の味方。 悪の組織ダークネスシャドーに通常兵器は通用しない。 彼女こそ人類最後の希望の光だった。 ダークネスシャドーが現れた時、颯爽と登場し幾多の怪人と戦闘員を倒していく。 その日も月夜のビル街を襲った戦闘員と怪人をいつものように颯爽と現れなぎ倒していく筈だった。 正義の変身ヒロインを徹底的に凌辱しリョナして処刑しますが最後はハッピーエンドです(なんのこっちゃ) リョナと処刑シーンがありますので苦手な方は閲覧をお控えください。 2023 7/4に最終話投稿後、完結作品になります。 アルファポリス ハーメルン Pixivに同時投稿しています

【R18】淫魔の道具〈開発される女子大生〉

ちゅー
ファンタジー
現代の都市部に潜み、淫魔は探していた。 餌食とするヒトを。 まず狙われたのは男性経験が無い清楚な女子大生だった。 淫魔は超常的な力を用い彼女らを堕落させていく…

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

処理中です...