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第十章

10-33 三回目の扉

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 ごめんなさい…。
起き上がれません…。
最も美しい30代の女性のパワーには、おっさん、どう足掻いても勝てません…。
なので、いろんな手法でメリアさんを満足させた…、と思う。

 メリアさんは俺の胸で軽い寝息を立てている。
その寝顔は凄く幸せそうだ。

 もう泣かなくていい。
ずっと笑顔で居て欲しい。そのために俺は踏ん張る!

 フラフラするが、向こうから持ってきた栄養ドリンクを飲んで、頬を叩いて覚醒させる。

「よし!今日も一日踏ん張ろう!」

メリアさんをキスで起こし、二人で照れ笑いする。

「カズさん、はしたない女だと思わないでくださいね。」
「いいえ、そんな事思っていませんよ。それに綺麗ですよ。」
「そう言っていただけると嬉しいです。」

 アヌーク・エーメのような妖艶かつ美しい女性…、それがこの世界で俺の妻に…。
以前は葛藤していた。でも、その葛藤もいつかは終わるだろう…。
今後の事もいろいろ考えていく必要がある…。

 2階に降りていくと、皆が朝食をとっていた。

「おはようございます。旦那様。」
「おはようございます!((((おはようございます))))」
「皆、おはよう。」

レルネさんにキスし、ディートリヒ、ナズナ…順番にキスをしていく。
その姿を見て、アイナとミリー、ニコルが拗ねた顔をする。

「アイナ、ミリー、ニコル。今日から君たちも俺の伴侶となってほしいが、いいかな?」

 3人の顔がパッと明るくなった。
そして、3人にもキスをした。

「イチめ、ようやくか…。このヘタレが…。」
「はいはい、どうも。どうせ俺はヘタレですよ。」
「分かっとるなら、今日の予定を皆に伝えんか!」

え?今日の予定って?
何するんだっけ?

「カズ様、今日は皆でカルム様のお店で契約魔法の紋章を彫ってもらいます。」

あ、そうなのね…。

「分かったよ。でも、それだけじゃだめだから、今日は給料日にしてお休みにしよう。」
「給料日((((給料日?))))?」

日割りで計算することもできたけど、その間にも仕事をしてもらっているので、全員一律に大銀貨30枚を渡す。
総額金貨約6枚…、すごい額だ…。
ただ、そんな金額であっても、月に入ってくる金を考えれば全然問題ない。

始めて給料をもらう子も居て、皆もらった大銀貨を見つめている。

「旦那様、このお給料から食費とかを引いていただきたいのですが…。」
「えと…、それは不要だよ。お給料は自分のモノを買ってね。」
「こんなにいただいても、使い切れませんが…。」
「別に全部使わなくていいよ。今後の君たちの為に取っておくという事も必要だと思うからね。」
「それはどういう意味でしょうか。」
「好きな男性が現れたら、結婚もするでしょ。そのための生活資金に取っておくという事だよ。」
「そうすると、この家から出ることになるのですよね…。」
「まぁ、そうなるかもしれないね。」
「では、結婚はしません。この家で一生生活する方が良いです。」

 まぁ、そういう考えもあるけど、いつかは良いヒトが現れるよ。

「カズ様、それじゃ、皆さんでカルム様のところで紋章を入れてまいります。
 その後は、皆自由行動といたしますが、よろしいでしょうか。」
「あぁ、良いよ。それじゃ、みんな行ってらっしゃい。」
「あ、ディートリヒさん、皆さんをカルムさんの店に連れて行って紋章が終わりましたら、お話があるのですが、良いですか?」

 メリアさんが何やらディートリヒに頼んだ…。
何だろう…?

「奥方様、分かりました。では、皆さんが終わり次第、戻ってまいります。」
「じゃの。では、その間、少し石鹸でも作っておるかの。」

皆が店を出て行った。

「レルネさん、何かディートリヒにあったんですか?」
「いえ、本日カズさんが帰る事を知っているのは、ディートリヒさん、ナズナさん、ベリルさんとスピネルさんだけだと仰っていましたので、そのお話をしなくては、と思いまして。」
「そうですか。何か話があるのですかね?」
「それは沢山ありますよ。だって、カズさんに持ってきて欲しいものがたくさんありますからね。」

そういう事ですか…。
そう言えば、昨晩の採寸の結果ももらわないといけないし…。
って、何人分買ってくるんだ?今回よりも多くなるのか?
あ、それとナイトウェアも必要だよな…。それにクローヌの家のトイレも買ってこなくちゃいけないし…。

「メリアさん、少し部屋に戻って俺も整理しておきたいんだけど…。」
「そうですね。では、ディートリヒさんが戻ってきたら、お呼びいたしますね。」

部屋に戻り、購入しなくちゃいけないものを整理する。
念珠は多く買ってくるけど、こちらでも石を見つけたから、今後は不要だな。
下着、ナイトウェア、シャンプー、リンス等生活道具は必須と…。
リストアップしていくとどんどん増えていく。
こりゃ、入りきれないと思い、T〇MIのバッグに付与スペースと重量を増やしておく。

なんだかんだしていると、メリアさんが呼びに来たので、2階に降りて行った。

メリアさん、レルネさん、ディートリヒ、そして俺…。
なんか、修羅場に連れて来られたみたいだが…。

「ディートリヒさん、カズさんが今晩向こうの世界に帰ることはご存じですね。」
「はい。ただ、私たちが寝ている間に戻ってきていただいております。」
「では、昨晩の採寸表はありますか?」
「こちらです。」
「では、カズさん、これを向こうの世界から持ち帰っていただければ嬉しいです。」

うぉ!なんだこの量と色は?
全員分の3サイズとアンダーバストは分かるが、何故好きな色までご丁寧に書いてあるんだ?

「サイズが合わないヒトはどうしますか?」
「“すぽぉつぶら”でお願いします。それとダンジョンに入るヒトにもお願いします。」
「あと、必要なモノは?」
「カズさんが私たちを離したくなくなるようなものはありませんか?」
「そんなもの無くても離しませんよ。あ、皆がもっと綺麗になってもらえるようなものを買ってきましょうか。」
「それは、どんなものでしょうか。」
「例えばリップ、あ…、口紅とかファンデーションとか…、でも俺余り知らないので適当に買ってきますか…。あとはピアスとか、ピアスを開ける機械とか。」
「ピアスというものは?」
「耳に穴を開ける“ふぁっしょん”ですね。まぁ、イアリングの一種です。」
「ファッションというんですね。」

お、カタカナが通じた。

「カズ様、クラリッセさんが、調味料、コーヒーを潰す機械、食器用洗剤、シャンプー、リンスが欲しいと言っておりました。
それとトイレの紙が欲しいです。それと、全員分の羽毛布団セットですね。」

あ、コーヒー豆は俺が風魔法で細かくしてたんだった…。
ミルを一個持ってきてヤットさんらに作ってもらおう。

洗濯機と掃除機は…? まぁいいか。

なんか、こうやって考えると引っ越しの時に必要なものを考えているような気分になる。
あるモノは使う。無いモノは魔道具で。
なんとなく、そんな生活が楽しい。
これまでの世界で必要だと思っていたモノが無くても過ごしていける。
順応したのか、満喫しているのか…。

「ディートリヒさん、今晩私とレルネとでカズさんの帰りを待とうと思いますが、ディートリヒさんはどうしますか?」
「奥方様が一緒にお出迎えされるのであれば、私はご遠…」
「ディートリヒ、あなた、我慢してますよ。
 昨晩、カズさんに言われました。我慢はしてはいけない。自分を出して、と。」
「はい…。私もカズ様に同じことを言われました。
“Just the Way You Are.”と。
では、私もお待ちしたいです。」

メリアさんがニコッと笑う。

「私たちは所謂後から来たヒトです。一番最初にカズさんをこの世界に引き留めてくださったのは、ディートリヒさんなのです。
こうやって私たちがここに居るのもあなたのおかげなんですよ。
ありがとうございます。」
「いえ、ナズナもベリルもスピネルも皆カズ様の事を真剣に考えておりますよ。」
「ふふ。本当に皆良い女性たちですね。
 では、カズさんが向こうの世界に行かれるまでは、愛していただける順番を決めましょうか。
 そして、カズさんが帰ってきたら、ディートリヒさん、ナズナさん、ベリルさん、スピネルさんで出迎えましょうか。」
「はい!」

何故か皆仲が良い。すごく嬉しい。

「君たちが居てくれるから、俺は戻って来れるんだ。
 みんな、ありがとう。」

 その夜、一人になった寝室にドアが現れ、白い世界に入っていった。
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