地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第十章

10-29 ファミリー報告会②

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「カズ様と出会えて私たちは幸せです。」
「本当にそうです。もう死にゆく運命しかなかった私を救っていただけたので…。」

皆しみじみと話す。
しんみりし始めたので、話題を変えなければ…。

「まぁ、屋敷の執事と屋敷の事をしてもらえるヒトもカルムさんのところでお世話になるとして…、
 レルネさんの方の石鹸はどんな感じですか?」
「ふむ。石鹸であれば、月3,000個は製造できるところまでいった。
 しゃんぷりんは、月1,000個だが、ミリーが加わればどこまでいけるかじゃな。」
「そう言えば、石鹸を作る工程で冷やす作業があったと思うんだけど。」
「自然冷却の時間が長くての…。その時間が短縮できれば倍にはなるじゃろう。」

 という事は石鹸は月6,000個、少なく見積もっておけば4,500個か…。

「えと、一個いくらで売るんだっけ?」
「素材とかの値段を考えれば、石鹸であれば銅貨5枚でも十分じゃが、しゃんぷりんは薬草などの素材が、なかなか手に入らんので、銀貨2枚でないと売り上げが出んな。」

 石鹸1個500円、シャンプリン1本2,000円…。高いね…。
でも、手作りの石鹸やシャンプーはこれくらいするんだろう。

「んじゃ、その価格でいきましょう。レイケシアさん、市場にいっぱい出てきたら、価格の見直しをするという事でどうかな。」
「社長、それであれば大丈夫だと思います。さらに社長が自ら素材を集めてくだされば、もっと儲けがでますね。」
「まぁ、儲けの事は置いておいて、その薬草などの依頼をレベルの低い冒険者にお願いするってのも有だね。であれば、シーラさんにでも頼むのも一つだね。」

 冒険者の育成も大切だ。
ダンジョンの低層にも薬草は沢山あるから。

「次は俺たちで良いか。」

ヤットさんとラットさんだ。

「ミシンは3日で一台作ることが可能だ。
 ノーオの街にあと何台必要かを教えてもらいたい。」
「そうだね。一度聞いてみるが、それまでにここに居るお針子さんたち分のミシンを作ってもらえないかな。」
「分かったぞい。今一台ストックがあるから、あと3台作れば問題ないな。
 その後、ノーオの街に卸せるミシンを作っていくか。ま、月10台なら問題ないか。」
「あ、その前に、もう一台馬車を作ってもらえないか?
 ここに置いておく馬車とクローヌで使う馬車があった方が良くないか?」
「社長、そりゃ構わないが、馬はどうするんだ?」
「あ、そう言えば馬車を引くのは馬だけなのか?」
「そりゃ、馬車って言うくらいだから馬なんだろうが、帝国ではトカゲみたいなものも馬車を引いているって聞いたことがあるが…。」
「そんなのが居るんだ…。でも、ここは馬って事なら馬を買って飼いならした方がいいのかい?」
「社長~、そんな事はありませんよ。
 馬は買わなくてはいけませんが、その馬を世話してくれる店も多くありますからね。」
「で、馬一頭はいくらくらいするの?」
「金貨2,3枚ってところですね。」

高っ!普通自動車並みじゃないか。
でも、これまでの世界ではもっと高いんだろうな…。

「それか、どこかで野生の動物を捕獲して飼いならすって事もありますね。」
「へぇ…。そんな事もできる…って、コカトリスが居るじゃん。ナズナ、コカは馬車は引けないのか。」
「お館様、馬車が空飛んじゃいますよ…。」
「ダメか…。」
「カズさん、そう言えばアドフォード領にある湖畔にリザードライダーという魔獣がいます。
 とても足が速くてなかなか捕獲はできないのですが、それを馬の替わりにするのはどうでしょう。」
「リザード?って、トカゲ?」
「はい。二足歩行のトカゲです。」

いかん…、頭の中にエリマキトカゲが真っ先に浮かんだ。
そいつがペタペタと歩きながら進む姿…、笑える…。

「どんなトカゲか分からないけど、一度見てみることにしよう。
 あ、ヤットさん、ラットさん、ごめん。脱線しちゃったが、馬車は何日くらいかかる?」
「まぁ多く見積もって7日だな。」
「それじゃ、ミシン3台が終わったら、馬車を作ってほしい。」
「分かった。あと、前にもらっていた鉱石で武器と防具を作ったから見てくれ。」

ヤットさんが、アイテムボックス付きのバッグからリビングに所狭しと並べ始めた。
「社長は既にダガーを持っているから、今回は無し。
 次にディートリヒ様だが、アダマンタイトで出来たレイピアと少し短いフランベルジュの両刀。
 ナズナ様はエンペラー・サーペントのショーテル一対が水属性だが、火属性の武器があった方が良いと思って、火属性のショーテルを一本。戦闘に応じて武器を換えるような感じだ。
ベリル様は、火属性の大太刀と太刀、これもアダマンタイトだ。
あと、戦闘に参加するのは?ニコル様、え?!メリアドール様もですかい?だ、旦那…、あ、違った、社長、良いんですかい? え、良い…。分かりやした…。
えと、ニコル様がヒーラーで、奥方様が魔導師って事で良いんですかい?
では、ニコル様はこのミスリル製のメイスが良いかと。そして、メリアドール様はオリハルコンのワンドってので。付与はそこのばば…、レルネ様にお願いすれば…。」
「あ、付与は俺がするよ。」
「へ? 分かりました。それじゃ、次は防具ですが…」

一つ一つ説明されたが、いつの間にいろんな武器を作っていたんだ?
 まぁ、そんな些細なことは置いておいて、防具については、俺好みの防具だ。
ディートリヒはドレスアーマー一択で決まり!
銀と青のコントラストが綺麗だ。
ナズナは黒一色の中に白い胸当てが光っている。ベリルはハーフプレートのような美しいアーマーだ。

「レルネさん、申し訳ないがメリアさんとニコルの装備を作ってくれないか。」
「これだけの素材があれば、何でもできるんじゃが、奥方はどのような装備がお好きなのじゃ?
 それとニコルもじゃが、ニコルは動きやすいような装備にした方が良いのかの?」
「レルネさん、私はこんな感じが良いですわ。」

メリアさんが、すらすらっとデザインを描いていく。

「ほう…、これは動きやすそうじゃが、魔導師らしからぬ服装じゃが…。」
「動きやすいのが一番ですわ。」
「そうかの。それじゃ、素材はこれとこれ…、まぁ2日もあれば出来るな。
 ニコルも奥方様のようなものにするかの。」
「レルネさん、ルカさん、すまない。」

「社長、あともう一つ報告があるんですがね。
余ったアダマンタイトで、護身刀を30本作っておきやした。これを皆さんに持ってもらうってのはどうですかい?」
「ラットさん、それは良い考えだね。
 じゃぁ、この紋章を柄の部分に入れて欲しいんだけど。」

メリアさんが描いた紋章を見せる。

「社長、これは…?」
「さっき、メリアさんが描いてくれた俺たちファミリーの紋章だ。」 

「紋章(((((紋章))))!?」

皆の目が輝いている。

「あぁ。冒険者として登録してある名前が“繚乱”だから、花が咲き乱れるような紋章になっている。」
「繚乱…、綺麗ですね。」
「響きが良いです。」
「社長、店の名前も繚乱なんですか?」
「あ、それは決めてないが、店の印もこれにしようかと思うよ。」

皆、へんな世界に入り込みそうだ…。

「えと、次は?」
「次は、あたしだね。」

アデリンさんが話始める。

「ここにいる4人の針子は優秀だよ。
 今店に並べてある服なら2日で一着作ることができるね。
 問題は、店員さんにどんな服を着せるのか、メイドさん方にどんな服を着せるのかで店と家の雰囲気も変わってくるだろうね。」
「うん。そうだね。
 であれば、みんなで決めてもらおうか。」
「分かったよ。トニュフ、すまないが、店の左の棚にある服を一着ずつ持ってきてもらえないか。」
「分かりました。」

数分後…。

女性陣の戦いが始まった…。

ドン引きする男性陣…、と言っても3人しか居ないが、ヤットさんとラットさんは戦々恐々している。
必要なことだけ伝えてドワさん2名はお休みしていただくこととし、酒を2本渡しておいた。

さて、この戦いは何時終わるのか…、
温かいコーヒーを入れなおし、ダイニングテーブルで女性陣を横目にコーヒーを飲むこととした。
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