地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第十章

10-24 ドワさんズ

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 かき氷と子供の遊具の話をし、俺は遊具をドワさんズに作ってもらえるよう紙に絵を描き始めた。
女性陣は部屋に帰すが、みんな不服そうに帰っていく。
 今日やらなければならない事を明日に引きずらない、これは俺のモットーだ。

 ジャングルジムを描こうとするも、なかなか上手く描けない。
どうしたものか…と考えていると、ドアをノックする音がする。

「どうぞ。」
「カズ様(お館様)(主殿)」

 お、ディーさん、ナズナ、ベリルの3人だ。

「どうした?またかき氷が食いたくなった?」
「もう、こりごりです…。主殿、そういじめないでください。」
「ごめん、ごめん。で、どうした?って、多分言いたいことは分かっているんだけど…。」
「では、お願いしたいのですが…。」
「いや、まだ宿題というか、仕事があるんだよね。」
「どんな仕事なのですか?」
「明日、アイナと一緒に酔いつぶれたドワさんズに作ってもらおうと思ってね。」
「どういったモノですか?」
「これなんだけどね…。」

それぞれの絵を見せる。

「これがブランコ、これがシーソー、これがジャングルジム…、“じゃんごーじむ”だ。」
「ブランコとシーソー、それにジャングルジムですね。」

RとLの発音の差なのか?
そう言えば、俺、RとLの発音が苦手だった…。
米のことをライスって言ってるのに、シラミと間違われたもんな…。

「だいたい想像できましたので、私が描きましょうか。」
「お、ナズナが描いてくれるか?頼むよ。」

サラサラと描いていく…。何でこんなに上手いんだ?

「ナズナ、凄いな。」
「えへへ、もっと褒めていただいても良いですよ。」

 隣を見ると、ディートリヒとベリルも描いている。

 うん…。俺と一緒のレベルだよ。ベリルに至っては線が踊っているようだ。
ヒトそれぞれ得手不得手があるんだ。それでいいよ。

「という事で、お館様、仕事はこれだけでしょうか?」
「え、はい。これだけです。」
「では…、そろそろ…。」



 はい、朝チュンです。
三人とも幸せそうに寝ています。
三人にキスをして起こす。

「さて、みんな、今日はドワさんズとの交渉だよ。」
「そうですね。ではドワさんズとの交渉事はカズ様と私で、ナズナさんはミリーとニコルを連れて、商業ギルドに行ってもらい、あの土地を購入してもらうようにしましょう。
 ベリルさんとアイナさんは可能であれば、カズ様が見つけられた土地までの道のりを整地してもらいましょう。
私とナズナさんとベリルさんは、念話はできますので逐次情報を共有しましょう。」

てきぱきと人選され、各々の仕事に向かう。
アイナは面通しだけして、ベリルと一緒に山の上に向かった。

「ニノマエさんだっけ、昨日はすまなかった。あれだけ美味い酒をもらって申し訳なかった。
 ここに居る輩は、この街で鍛冶、大工をやっている。
 それと、あんなに鉱石をもらってもいいのか?」
「はい。ただし、街の再興に使っていただければと思います。」
「街の再興って?」
「近いうちに、自分はここの土地を収めることになりそうなんです。
 その時に、いろいろとお力添えをいただきたいんです。」
「おう、そりゃ問題ないが…、そう言えばニノマエさんはシェルフールに住んでるジョスとマルゴーと親しいんだってな。」
「はい。マルゴーさんには武器や鉄骨を作ってもらいましたし、ジョスさんには店を2軒改修してもらいました。」
「ほう。あの頑固者がか?」
「ええ。おかげで満足した店ができましたよ。あ、でも、商売はまだですけどね。」
「そうか、で、ここでも商売をしようって事かい?」
「いえいえ。ここではどちらかと言えば、皆さんが満足してもらえるような施設を作っていきたいですね。それと自分の家も作ってほしいんです。」
「ほう、家か。どれくらいの大きさなんだ。」
「そうですね、できれば…。」

豪邸になってしまった…。そりゃそうだ。先日シェルフールに残る伴侶とこちらに住む伴侶を大まかに分類したが、それでも6人はこちらに住むことになるから。

「これだけの家を建てるなら、金貨40枚は必要になるな…。」
「あ、問題ありませんよ。シェルフールでもそれくらいしましたから。」
「そういや、ここに比べればあそこは建具や木材といった物価が高いからな。
 ま、問題ないな。ここは物価は安いから。」
「木材も少しはこちらでお渡しすることも出来ます。
 昨日、ダンジョンに行って少し採って来ましたから。」
「ほう、あそこの木材は結構いいモノがあるからな。
 で、どんな木材を採って来たんだ。」
「ディートリヒ、何て魔物だっけ?」
「はい。炎樹です。」
「は?え、炎樹だって?で、炎樹の材木を採って来たのか?」
「はい。そうなりますね。その木材が50本ありますね。もちろん足りなければもっと採って来ますが。」
「お、おぉ…。頼む…。って、炎樹ってどえらい強い魔物だぞ。それをやっつけたのか?」
「まぁ、そうなりますね。」

『お館様、聞こえますか?』
『ナズナか、大丈夫だよ。』
『商業ギルドで、あの山頂の土地について購入をと聞きましたら、あそこは何の価値もないところだから、金貨1枚で売っても良いという事ですが、どの辺りまで買いましょうか。』
『それじゃ、あの山頂までの一帯を買うことにしようか。
 そうだな…、敷地内に庭や露天風呂、それに従業員の家が数軒と馬車工場と鍛冶工房、小さな工場もあると良いよね。』
『分かりました。では、あの山全体を買う事にいたします。
 後ほど、契約書と商業ギルド証を見せてもらいたいということなので、商業ギルドまでご足労いただきますでしょうか。』
『分かった。もう少ししたら合流しよう。』


「すみません。考え事をしていました。
 えと、場所はここから1㎞くらい上に行った山頂なんですけど。」
「ん?崖になっている山か?」
「そうです。その場所に家を建てて欲しいんです。それに家を建ててもらった後も、工場や工房なども建ててほしいんですけど。」
「おいおい、ニノマエさんは上客か?」
「上客かどうかは分かりませんが、先ずはお近づきの印としてこれを。」

 4本のテ〇ーラを渡す。

「お一人一本ずつ。先ずはこれを手付に置いていきましょう。
 その後、自分がもう一度この街に訪れた時から工事をお願いしましょうか?」
「お、おい。これって昨日飲んだ、あの美味い酒か。
 よし、分かった。土地を買ったんなら、先ずは土地の下見からだ。
 なぁに。お代は今度で良いから、工事を進めておいた方が良いからな。
 で、どんな間取りにするんだ?」

 そこから1時間ほど間取りについて話し合った。

 地下には風呂を、一階はリビングにダイニング、執務室など、2階には主寝室と客室2つ、3階は妻となるメリアさん、ディートリヒ、ナズナ、ベリル、ニコルの部屋の他、予備の部屋も必要。
そんなこんなをリクエストしていくと、ドワさんズはあぁだ、こぅだと言いながら、平面図を描いていく。

「ま、こんなもんか。ただ、地下を作るなら土を掘って固める必要があるな…。」
「あ、それでしたら、今日やっておきましょうか。こう見えても俺の仲間は土魔法を得意としてますからね。」
「そうか、んじゃ、手っ取り早くやっちまうかね。
 あ、まだ、俺たちの名前を言ってなかったな。
 俺はゴッツ、この街の大工の頭領だ。こいつはベニトで鍛冶師の頭領、こっちはムニルで俺の弟子、最後はフアンでベニトの弟子だ。よろしくな。」

 全員と握手をする。

 宿屋を出て商業ギルドに行き、ナズナ達と合流し土地の売買契約を済ませた。
ギルド職員は、『変哲も無い土地を購入されるとは…』と心配しているが、それでもあの高台から見下ろす街の風景は圧巻だと思う。

 皆で歩いて道づたいに歩いていく。

「なぁ、ゴッツ。あの山まで行く道って、こんなに舗装されていたか?」
「あぁ、俺も気づいていたが、凄く綺麗になっているよな…。これなら馬車でも問題なく山の上まで行けるな、って、おい、前を見てみろ。」

 ナズナとベリルが土魔法を駆使して道を舗装していた…。
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