地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第十章

10-19 You can Fly!

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「さて、少しみんなで空を移動しようか。
 イメージは背中に風を強く当てるって事で。」

 皆ゆっくりとではあるが前進した。

「もっと風を当てるようにすれば早く移動できると思う。」

 スピードが上がる。
でも、スピードが上がれば、その分自分に負荷がかかる。

「前からの風が強くて、なかなか速く進みませんね。」
「前から来る力が重力って思えば良いんだよ。
 速く進めば進むほど、力がかかる。でも、それを解消する方法はある。
自分の前にバリアーをかけるんだ。でも、単にバリアーをかけるんではなく、先端をとがった状態にして、自分のほうを広げる感じで…。」

 手を合わせて、手のひらの部分を膨らませる。

「この手のひらの位置に自分が居る感じでバリアーと結界をかけると速くそして負荷がかからなくなるよ。」

 結界を張れるかは分からないが、張れなければ俺が張ってあげればいい。
しかし、優秀な生徒は自身で結界を張れるようになった。

「それじゃ、速度を上げて移動してごらん。」
「はい! うぉっ! 主殿、速く進みますが、前からの力がかかってきません。
 これは、速く進めますね。」
「これが空中で移動するときのコツだと思う。
 それじゃ、俺についてきてね。」

 それからは空中散歩ならぬ、編隊飛行だった。

「えと、この中で火を使えるのはベリルだけか…。
 ベリル、もっと速く移動できる方法があるが、試してみるか?」
「え、私だけが速く飛べるんですか?」
「あぁ、火魔法と風魔法を組み合わせれば、そしてベリルの後方で火球を爆破させる魔法を組み合わせれば、飛んでもないくらい速く移動することができるが…。」
「では、主殿、私にそれを教えてください。」

 やり方を3人にも聞こえるようにベリルに教える。
要は、背後で火球を爆破させるイメージで火魔法を使い、その爆破の波動を風魔法に乗せるという仕組みだ。
まぁ、ベリルの魔法一つで残りの3人も吹っ飛ぶわけだから、皆速く移動できるようにはなるんだが、それを誰かが気づいていくれると嬉しいね。

「では、主殿、やってみます。
 いきます!それ!
 どぅわぁぁぁぁーーーーーー」

 遥か彼方まで行ってしまった。

「カズ様、これは危険では?」
「いや、危険ではなく、要はいろんな魔法を応用できれば、速く移動できるって事なんだ。
 俺が使っているドライヤーの魔法も同じ原理なんだよ。」
「そういう事なんですね。
 では、私は風と風を二つ組み合わせてどこまで速く行けるかやってみましょう。
 えい!
  きゃぁぁぁぁーーーー」

 ディートリヒさんも行ってしまった…。

「お館様、土だと空中には無いので早くはいけません…。」
「私も、そこまでの魔法はまだ覚えておりません…。」
「うん。二人は今ベリルとディートリヒが使った魔法を借りて加速するって手もあるよ。
 それじゃ、俺が背後に火球を爆破させるから、それに乗じて風魔法で前に進んでね。
 いくよ。 それ!」

「んきゃーーーーーーー」
「うわぁぁぁーーーーー」

 凄いスピードで進んでいる。でも前方にバリアーがあるから負荷もかかっていない。
どんどん前に進んでいく。
二人を見ると、キラキラした顔で飛んでいる。

 最終的にクローヌから5㎞以上離れてしまった。

「皆、戻ろうか。今度は自力で行こうね。」

今度は、自前の風で移動していく。
バルコニーに戻って来たのはスタートしてから5,6分くらいかかったくらいか。

 部屋に戻り、皆に毛布と水分を渡す。
空を移動すると体温が下がるし、いつの間にか水分もなくなっている。

「確認するね。上空高いところに行ったら、どうなった?」
「はい!カズ様、寒くなったという事は気温が下がったという事です。」
「正解です。では、もっともっと高いところに行ったら?」
「寒いどころか凍ります。そのイメージを魔物にぶつければ氷魔法ができるという事ですね。」
「良くできました。これで、みなも氷魔法のイメージが出来たはずです。
では、皆が飲んでいるコップの水に自分がイメージする高いところの空気をイメージし、念じてみてください。」
「はい!では“フリーズ”!って、キャッ、水が凍りました。」
「氷魔法、会得したね。えらいよ。」

 皆が氷魔法を会得した。
全員の頭をなでなでしてあげると、たちまち笑顔になった。

「では、グラビティとフロートも会得したって事だから、皆は高等だと言われている魔法を2つ以上覚えたという事になるね。
 これで、今日の魔法講義はおしまいです。皆、よくできました。」

 皆が照れている。
余程嬉しいんだろう…。ナズナも涙を浮かべている。

「主殿、その…、ありがとうございました。」
「なんの、なんの。当たり前の事だよ。」
「私やスピネルのような竜人族は火を得意とする種族ですが、スピネルは火を得意としていませんでした…。
 しかし、彼女は錬成や錬金といったモノを作る方の魔法の才能が開花しました。
それに、私も火以外の土、氷、そして重力でしょうか、そういったいろいろな属性を覚えることができました。これも一重に主殿をお陰であります。」
「改まってそんなこと言わなくていいよ。
さっきも言ったけど、俺は魔法が何たるものかは知らない。だから、俺流の魔法なるものを皆に教えているだけ。覚えるか覚えないかは皆が決めることだ。
 そうだよな、ナズナ。」
「はい。お館様。しかし、それでも嬉しいのです。
 自分の才能がここまでだと思っていても、お館様はそれ以上の事を教えてくださります。
自分の才能の限界が無い事を感じております。」
「ニノ様、私も治癒職という名だけで満足はしておられません。
 今回、氷魔法を覚えた事は、攻撃にも使えます。」
「ニコル、君は治癒だから氷は覚えておく必要があるんだ。
例えば、ヒーレスが使えない場合、欠損部位を氷漬けにしておけば、ニコルのヒールで欠損部分を繋ぎ合わせることも可能になる。」
「え!?そんな事もできるんですか?」
「あぁ、できると思うよ。ま、俺たちには時間を止めるアイテムボックスがあるから大丈夫だが、アイテムボックスが無い場合は凍らせて保存しておくんだ。そうしないと欠損部分は腐ってしまうからね。」
「ありがとうございます。ほんとにニノ様は何でも知っておられるんですね。」
「いや、知っている事もあれば、知らない事もある。ま、この世界の事は知らない事だらけだよ。
 さぁ、みんな、そろそろ寝ようか。」
「はい!(((はい)))」




 で、何でこうなったんだ?
皆、俺の部屋で寝ることになり、皆好きな場所で寝ている…。
勿論、左はディートリヒ、右はナズナの定位置だが、ベリルはナズナの後ろで俺の手を握っている。
ニコルはディートリヒの後ろで俺の手を握っている。
・・・腕が使えない…、そう考えると鼻が痒くなる…。

「ディートリヒ、起きてる?」
「はい、何でしょうか。」
「すまないけど、鼻が痒いから、かいてもらえないか。両腕を取られてかけないんだ。」
「ふふ。分かりました。ここでしょうか…、はい。大丈夫です。
 それにしても、カズ様はやはりお優しいですね。腕を取られていても抜けばいいではないですか?」
「そうすると、起きちゃうだろ?可哀そうじゃん。」
「それがお優しいという事です。」
「ありがとな。」
「いえ、こちらこそありがとうございました。皆に魔法を教えてくださり…。
 少しはカズ様の心の中にある心配事は解消されましたか?」
「やはり、ディートリヒは見抜いていたんだな。
 火山があれば温泉がある、温泉があれば硫黄がある。
そして硫黄があれば、火薬ができる…。それが何年先になるかは分からないが、硫黄を見つけた段階で、もう火薬の発明はスタートしてしまったという後ろめたさがあったんだ。」
「遅かれ早かれ、誰かが見つけるものです。それをカズ様が見つけたという事だけです。
 後は誰にも教えなければ、ヒトを殺す道具としては、まだまだ先になります。
それよりも、硫黄というものが皮膚の病気に効くという事を大々的に言えば、皆がそちらに向きますから、もっともっと遅らせましょう。」
「そうだな。ディートリヒ、ありがとな。そう言ってくれると少し気が晴れるよ。」
「気が晴れるだけでよろしいのですか?
 ここ数日、カズ様は誰とも愛し合っておらないと思いますが。」
「いや、そんな事はないよ。って言ってもまだ3,4日でしょ。問題はないよ。」
「カズ様的にはそうですけど、私達女性陣はそうはいきませんので…。」
「そうか…。でも、今晩はニコルがいるからね。」
「そうですね。では明日はアイナ、ミリー、ニコルは自分の部屋で寝てもらい、私達だけでも愛していただければ嬉しいです。」
「そうか…。善処します…。
 ディートリヒ、ナズナには申し訳ない事をしたね。俺との最初が宿屋だってのも…。」
「それはそれで嬉しいのですよ。
カズ様は私達の思い出になるとの思いで最高の場所を、と思っていらっしゃるようですが、カズ様と一つになれる場所は私たちにとって、どこでも最高の場所なのです。」

 そう言って、ディートリヒは俺に口づけしてくれた。
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