地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第九章

9-4 3人の奴隷

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 翌朝とは言っても分からないので、時計を見る。
9時を指している…。
あ、夕ご飯食べるの忘れたな…。そんな事を思いながら周りを見ると、ディートリヒ、ナズナ、ベリルがあられもない姿で寝ている…。
 やはり凄いのか?俺自身何をしていたのかも分からない…。
なんだか、ジキルとハイドのような二重人格者なのか…。そんな悩みが脳裏を過った。

 彼女たちをそのまま寝かせて置き、テントを出て朝食を作り始めた。
別のテントで寝ている女性3名分も作らなきゃいけないな…。それに服はあるのか?あとでディートリヒに聞いてみよう。

 まだ再生は十分ではないと思うので、7分粥くらいでいいかと考えながら料理をしていく。
ディートリヒたちはこれから彼女3人を守りダンジョンの外に出なくてはいけないので、スタミナのある食事にする。
 生姜焼き丼にしよう!超簡単だから。
簡易魔導コンロにご飯を炊き、もう一つのコンロで生姜焼きを焼き始めた。

「ふわぁ~、お館様、おはようございます。」
「お、ナズナか。おはよう。chu」
「ふふ、お館様からのマナいただきました!」
「え、マナ吸われてたの?」
「いえ、違います。それだけお館様の力をいただけるという事です。」
「あ、それ、エネルギーって言うんだ。」
「そんな良い言葉があるんですね。“えーねる木”ですね。」
「木ではないけど…。」

 言語理解は良いが、やはりこれまでの世界の言葉を発するとおかしな発音となるのだろうか…。
でも、アイナは何故か話しているよな…。

 次にベリルが起きてきて同じくキスをする。
ナズナが“エーネル”だと教える…。どんどん異訳されていくが、まぁいいか。
そして最後にディートリヒが起きてくるのだが、なぜか涙目だ。

「カズ様、朝は真っ先に私にキスをと…。」
「だって、起きてなかったから…。」
「そ、それは、昨晩最後に愛していただいたのが私でありましたので…、その…、ゴニョゴニョ。」
「ん?どうした?」
「は、はい…。腰が抜けて動けなかったんです。」
「へ?」
「お館様、昨晩の事は…」
「すみません。何も覚えておりません…。」
「主殿、私はああいう主殿のお姿も好きです。や、野性味を帯びているというか、もうどうにでもしてくださいと思えるくらい素晴らしいものでした。」
「そ、そうか…。」
「そうですね。やはり3人ではまだきつそうですね。
 今度はスピネルとアイナも交えて5人で行けば問題はないでしょうかね。」
「ディートリヒさん、5人でもきついかもしれませんね。」
「ごめん…、みんな、許して…。恥ずかしすぎる。」

 最後にディートリヒに少し長いキスをして、その場を収めることとした。

「ディートリヒ、悪いがテントの中の3人の容態を診てきて欲しい。
 それと、彼女たち確か裸だったよな。何か着る服はあるかい?」
「それでしたら、私たちが予備でいくつか持ってきていますので、それを着てもらいましょう。」
「あぁ、だけどメイド服はダメだぞ。あれは俺をダメにしてしまう…。」
「あ、しまった!昨晩、その姿で襲っていただくという手がありましたか!」

 ディーさん、何故そういう話になるのかな…。

 3人を診に行ったディートリヒが戻って来る。
まだ全員意識が無いが、呼吸は安定しているようだ。
まぁ、問題はないだろう。

 朝食を摂り、これからの事を話し合う。
彼女たちを残しておくわけにはいかないので、ここで足止めとなるが、ここに居ただけでは勿体ない。
であれば、採取できるものは採取していかないといけないという事になり、ここのモンスターボックスを周回することにした。
だれか一人は残っておく必要があるので、俺を除いて1名ずつ残り、3名での殲滅を試すこととなった。

「主殿は規格外です。」
「お館様、少しは残しておいてください。」
「カズ様ではこんな簡単にいくものですね。」
「すまん。皆を守りたいから先に魔法を撃っちゃうんだよ。」

 魔銃、フリーズで一掃してしまう無双ぶりに3人は呆れ顔だ。
しかし、コカの肉とアラクネの糸は大量にゲットできた。
当面の目標となる素材の採取もほとんど大丈夫か?
楮や綿は移動中にディートリヒとベリルの剣撃で刈り取られているし、唯一鉱物のみは採取していない。

「お館様、3人とも目を覚ましました。」
「そうか、んじゃ、3人に服を着せてやって欲しい。」
 
 10回ほどモンスターボックスの部屋を周回した後に彼女たちが目を覚ました。
ディートリヒたちの服を着て、テントを出てきた3人だが、眼が挙動不審状態だ。

「皆、無事でよかった。」
「あ、助けていただき、ありがとうございます。あと2人居たと思うのですが、彼らはどうなりましたか…。」
「先ずは、お腹がすいただろ。お粥を作ったから食べながら話そう。」

 お粥を皆に配り、お互いの話を始める。
向こうの話では、リーダーで死亡した男性のアレックを筆頭に、死亡した剣士のコルデリア、魔導師のエレメンツィア、ミリー、治癒魔導師のニコルの5名で20階層のボスに挑む予定だった事。
20階層を歩いているうちに木製の扉を見つけ、ボス部屋と勘違いし中に入るとジャイアント・バジリスクが居た事。
それを倒すことが出来ず、前衛のアタッカー2名が石化。3人も危険を感じながらも彼らを守り土魔法で防御したが自分たちも石化してしまい意識を失ったという事だった。

「うん…、話は分かったけど、それにしてもおかしな点がいくつかあるんだよね。」
「え!?な、何でしょうか。」
「先ず、あの部屋は出入り口が2か所しか無かったよね。
 逃げるなら来た道を戻るのが定石だけど、何故反対側の出入口で防御していたのかが一点目。
次にあれだけ強固な土魔法が撃てるなら、3匹のバジリスクの足止めもできたのではないかと思うのが二点目。」

流石に、魔導師ズ3名は覚悟を決めたようで重い口を開いた。

「私たち、リーダーのアレックに騙されて奴隷になっていたんです…。」
「奴隷だから、主を守るという事なのか?」
「そういう契約を騙されてしていました…。契約はこの紋に刻まれています。」
 
「なぁ、ナズナ、雇用主が居なくなった奴隷はどうなるんだ?」
「はい、契約の中身にもよりますが、所有者が死んだ奴隷を見つけた、守った者が所有します。
 さらに契約内容も継続されます。」
「は?それじゃ、彼女たちの雇用主は?」
「自動的にお館様になります。」
「ちょと待ってくれ。俺、そんな契約はしていないぞ。」
「ですので、契約の正当性を証明するためにも、ギルドに行き、証明する必要が出てきました。」
「はぁ…。なんだか面倒くさい事になってきたな…。
あ、でも死んだヤツに騙されて奴隷になったんだろ?騙されたという事を証明できればいいんじゃないか。」
「どんな内容かにもよります。」

 騙された彼女たちに詳しく聞いてみることにした。
要約すると…、
・彼女たち3人と死んだ2人はもともとは別パーティーで活動していたが、1か月ほど前に知り合い、パーティーとして再登録した。
・その後活動をしていたが、めでたく2週間前にCランクに昇格した。
・そのCランク昇格のお祝いに皆でお金を出し合い装備を購入していった。
・前衛から購入していったが何せお金が無い。仕方がないので知り合いに金を借りたが、支払いの期限となる一週間前までに支払うことができず、借金のカタに3人が奴隷となった。
・今回のボス討伐のドロップ品で借金を帳消しにする予定だった。

「なぁ、そこに騙されたという証拠は一つもないんだが…。」
「いえ、このダンジョンに入る前日、私がアレックとコルデリア、金を貸したヒトが3人で話しているのを聞いたんです。
その内容は、バジリスクの討伐後、奴隷となった私たちをダンジョン内で殺し、ドロップした品はアレックとコルデリア、金を貸したヒトで3等分すると…。」
「ふーん。そうなんだ。」
「あの、信じてもらえないのでしょうか。」
「奴隷が持っているモノは、基本、所有者の持ち物になるんじゃなかった?
まぁ、ちょっと意味は違うが、“死人に口なし”って言ってね。死んだヒトの事を言っても信ぴょう性が無いんだよ。
 それを証明する何かないのかな。」
「それであれば、彼らが宿泊している部屋を探せばよいのではないでしょうか。」
「それもあるけど、もう一つは金を貸したヒトを探すのが一番じゃないかな。
 ただし、もう逃げている可能性もあるけど…。」
「それでは、私たちの潔白を主張することはできません。」
「そうだね…。では、一旦自分がその話を取り持とうか?」
「え?!」
「まぁ、おっさんだけどね。」

 何やらおかしな雰囲気になってきたぞ…。
 揉め事は嫌なんだよな…。
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