地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第七章

7-23 魅力的なツープラトン

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 はい…。すみません。俺間違ってました…。

下着がパンパンになるはずなんてありません…。

ブラジャーは胸です。パンツは下腹です。
当然、胃の部分は下着は着けていませんでした…。

でも、消化する段階で下腹が大きくなるのかな、なんて思う…。

「さて、続いてデザートを出しますね。」
「兄貴、デザートって何です?」
「えと、ご飯の後に甘いものを食べて、口の中をすっきりすること…かな…。」

 正直デザートが何で最後にあるのかなんて知らない…。
コーヒーだけでも満足なんだが…。でも、この世界にコーヒーなる飲み物を見たことがない。

「お館様、もう、お腹いっぱいではいりません…。」
「うん。無理することないから。食べれなかったらやめておいてもいいからね。」

 さて、出すとしましょうか。
最終兵器、“ホールケーキ”を!

 テーブルの上に生クリームでデコレートされたイチゴのホールケーキを出す。
皆目を丸めている。

「兄貴、これは…、食えるのか?」
「あぁ。試しに少し舐めてみると良い。」

 おれは生クリームを少しだけスプーンにすくい、ザックさんに渡す。
ザックさんはスプーンを口に入れ……爆発した!

「甘ーーーーー。うめーーーーー。」
 
俺は、ザックさん、ルーシアさん、アリウムさん、ブランディーヌさんの順にカットしたケーキを小皿に移しサーブしていく。
 既にザックさん、戦闘開始しています。
負けずにザックさんの奥様ズも一口ケーキを口に入れ、恍惚の笑みが漏れる。

「このような甘いお菓子を食べたことはございませんね。」
「ほんにニノマエ氏は料理の魔術師ですね。」
「お腹がいっぱいだったのに、何故か食べられるのは不思議ですね。」

 甘いものは別腹って言うからね。
そう思いながら、ディートリヒ達にも渡していく。
ふふふ。これは初出しだから、みなびっくりするだろうよ。

「これは、パンに甘いものを塗ってフルーツを間に挟んだものですね。」
「はい。先日お館様につくっていただいた“サンドウィッチ”というものの“甘い版”です。」
「しかし、美味しいです。」
「これも、主様がお作りになられたのでしょうか。」

 ふふ、俺にはできないよ。
ただ、スポンジだけなら簡単にできる。問題は生クリームだ。
ゼラチンがこの世界にあるのかが分からない。動物の骨からできるんだが、砕いたり不純物を取り除いたり面倒くさい作業工程を理解しているとは思えない。

「これも向こうからのモノだが、出来ないことはないんだが、材料を見たことがないんだ。」
「兄貴、どんな材料なんです?」
「動物の骨や皮を砕き、煮詰めるとドロッとしたものができるだろ。それだけを取り出したものだ。」
「ん?そんなようなものならあるかも…。」
「なに!」
「俺っちの建設で使っている“のり”だ。」

 あ、“にかわ”のことか…。
そうだよな…。膠ができるのであればゼラチンもできる。

「ザックさん、そのノリを少し分けてほしい。」
「あぁ、あんなものだったらたくさんあるから、樽ごと渡すよ。」
「ありがとう。また作ってみるよ。」
「あの…、ニノマエ様…」

 えと…第一婦人のルーシアさんだ。

「はい。ルーシアさん、どういたしましたか。」
「もし、これができるようであれば、売り出すことはできますか。」
「はい。できるでしょう。」
 
 めっさ喜んでいる。
ただ、白い粉の存在を世に出すことになるんだが…。
「ただ、一筋縄ではいきませんね。」
「それは何故ですの。」
「このケーキというものはふっくらとしています。
 ここのパンの製造技術では、まだここまで柔らかくパンを焼けないという事があります。」
「それでしたら、先ほどニノマエ様からいただいたものを使えばよろしいのでは。」
「それが問題なのです。
 あのようにふっくらと焼くためには、ひとつ素材が必要なのです。
その素材を世に出すためには、俺と俺の伴侶、そしてザックさんの家族を守るという約束を国から得ないといけないんですよ。」
「兄貴、それほどまでにヤバいモノなのか?」
「いや、ヤバくは無いが、何せ作ることができるのが、俺とスピネルの2人だけなんだ…。
 まぁ、錬成のスキル持ちであれば、何とかできない訳ではないんだがな…。」

 皆、真剣に考えている。
それほどまでにケーキの存在は大きいのだ。
売れば確実に利益となる。
しかし、その製法が問題なのだ。
活かすも殺すも俺の手腕にかかってくることになる。

「ま、それもあって、メリアドール様に会いに行くんだけどね。」
「あ、兄貴、今、メリアドール様って言ったか?」
「あぁ。言ったけど?」
「兄貴は、あの“氷の魔導師”を知っているのか…。」
「へ?氷の魔導師?」
「あぁ。あのお方は王族の中で唯一氷魔法を極めた魔導師だって聞いたことがある…。
それに、今領主様がお亡くなりになった後も、周囲からはこの領内への不干渉を取り付けるなど、政治の手腕も誰にも引けはとらない女傑だとも聞いているが、何で兄貴はそんな御仁を知っているんだ?」
「それはな…」

俺はスタンピードでの論功で伯爵邸で報告会に拉致られたこと、そこで見目麗しい女性に会い、その方と最初のダンスを踊った事、その女性がメリアドール様だと最後に告げられたことを説明した。
ディートリヒを除く全員が目を丸くしている。
俺なんか変な事言ったか?

「カズ様の周りには素晴らしい方しか寄ってこないのです!」

 ディートリヒがふんすかしている。
しかし、ディートリヒはあの夕食会で何枚もお好み焼きを食っていただけだと思うが…。
あ、今思い出したが、石の話はそれ以降どうなったんだろう…。
まぁ、念珠が売れているって事は、そう言う事なんだろうな…。

「しかし、兄貴…。
 兄貴はすげーとは思っていたけど、そこまですげーヒトだとは思わなかった…。
 俺っちは、とんでもないお方と兄弟の盃を交わしたんだな…。
 末恐ろしくなってきたわ…。」
「いえ、旦那様。そんな事はございません。
これまではノーオの街を中心に活動されておられたものをこの機会に王国中に展開せよとの神様のお導きであると思いますわ。」
「そうです。旦那様。この機会を逸してはいけません。
 ニノマエ様であれば、これからも多くの利益をもたらしてくださると感じます。
 その利益をもって、色街で働く女性をお救いください。
 彼女たちが自立できるよう、なんとかお取り計らいしていただきたいのです。」

 うん。すごく熱意があるね。
それに女性が自立することは大切。
よし!もっと話を進めよう。

「では、ザックさん、ルーシアさん、アリウムさん、ブランさん。ここから先はビジネスの話です。良いですか。」

 皆の顔が真面目になる。

「そうであれば、メイドも下げさせます。」

 俺は、アイナに“すき焼き”2鍋と“ホールケーキ”3個を渡し下がらせた。
アイナは大人しくメイド部屋に行った。
さすが食べ物の力、ツープラトンだ。

「皆、いなくなりましたので、音声遮断をかけます。この部屋の音は外に聞こえなくなりますので、大きな声で話しても問題ありません。」
「兄貴、すまない。」
「なんの!では、話を始めます。」

 俺はこれまで考えていた下着を作る工場をこの地でできないかを話した。
そのための脚ふみミシンも見せた。
さらに、この脚ふみミシンを製作する信頼のできるドワーフも必要であることも伝える。
ここまででいったん話を終えた。
ルーシアさん、アリウムさん、ブランさんが泣いている。

「ニノマエ様、ありがとうございます。
 私たちのような下賤の者が、お天道様の下で歩くことができるようになるんですね…。」
「ご存じのとおり、私達は娼館の出です。
そんな者達は、蔑み、忌み嫌われて来ました。しかし、好き好んでなったわけではないんです。
 やんごとなき理由からなった者もおります。
 口減らしのため、借金のために売られてきた者もおります。
そのような者のために考えていただけること、私どももニノマエ様の配下に加えていただければと存じます。」
「あ、それは結構です。それにザックさんのことをこれからも助けてあげてください。
 それと、鑑定ができる方はお見えですか?」
「私が少しできますわ。」
「では簡単です。ブランさん。
ザックさんの店で働いている女性の中で“裁縫”スキルと“家事”スキルを持った方を選別してください。それとザックさん、どなたか信用できるドワさんはいますか。」
「おう、俺っちの下で働いているドワで仕事を任せておける奴が2人居る。」
「では、明日、そのヒトに会わせてください。その後ブランさんの店でスキルを持ったヒトと話しをします。」
「兄貴、それで下着をって言ったけど、先ずは何から作るんだ。」
「あ、そう言えばお土産をお渡しするのを忘れていましたね。それと明日の女性の面接は“ショー”でお願いします。そこで働いておられる方にも渡さなきゃいけないモノもありますからね。」

 俺は、アイテムボックスの中から、シルク製のナイトドレスなどを出した。

「奥様へのプレゼントです。サイズが分かりませんので、お好きなものをお取りください。」
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