地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第七章

7-4 倉庫改築

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「なぁ、ニノマエさん…。」
「なんでしょうか。」
「そこまで信用してもらえる事は嬉しい限りだがよ、万が一、対抗する勢力が出てきて俺たちが連れ去られて口を割るってことは考えないのか?」
「はい。考えません。」
「しかし、今ニノマエさんが言った事は世界を変えると思うが…。」
「そうなるかもしれませんね。でも、早かれ遅かれ誰かが考えるものです。
 そうなった場合を想定して製法と言いますか、技術をギルドに登録しておこうと思います。」
「そうか…、なら良いがよ。ただアイナが心配なんだよな…。
 あ、じゃぁ契約の紋章でも付けておくか?」

 契約の紋章?

「それは何ですか?」
「契約したことは口外できないという紋章を付けるんだよ。
 信じてもらえることはありがてーんだが、こいつぁ冒険者でも何でもない一般人だ。
 戦闘能力も…、ちったぁあると言えばあるが、冒険者ほどではない。
 だから、紋章だけ付け解けば、それを解除することも出来ないし、口外もできないって事になる。
 まぁ、一種の奴隷紋みたいなものだが、大きな商店などは従業員にそうさせてると聞いてるぜ。
 それに、うちの弟子だって、あの鉄骨の製法を守るために付けているからな。」
「そんなものがあるんですね。
 ではアイナさん、契約の際はそれを付けていただくことで構いませんか?」
「構いません。それに何だか楽しそうですね。ワクワクします。」

 うん。それは今だけだよ…。途方もない作業に辟易とする可能性もあるからね。

「でも、その契約紋って雇用が終了すれば終わりなんじゃないですか。」
「契約の中にその製法を忘れるモノを入れておけばいいんだよ。」
「ほう、そんな事ができるんですね。」

 これから製作するものは秘匿性の高いモノばかりだ。
であれば、従業員を雇い契約紋を付ければ製法が守られるわけだ。

「では、その方向で進ませていただきますね。マルゴーさん、マーハさん、お嬢さんを使わせていただきますね。」
「何なら娶ってもらっても良いんだが…。」
「それは…、十分です…。
 では、その契約紋とやらを付けることができる店はどこですか?」
「あ、そりゃ、奴隷商人の店だ。」

 なんだ。そんな事ならカルムさんの所に頼めばいいんだ。

「あ、それでしたら、お店を知っていますので大丈夫です。
 では、契約内容をまとめて後日お伺いしますね。」
「おう、できれば明後日がいいな。そうすりゃ、防具も出来上がるし。」
「そうでしたね。では明後日お邪魔しますね。」

 マルゴーさんの店を後にした。
その後、ブラブラしながら家に戻るが、奥に倉庫があった事を思い出し、その倉庫に行ってみた。
ここはまだ改修していないから前のままだ。
 倉庫を開けると、埃がすごい。
でも、中は広いな…。ここを片付けるだけで、石鹸の材料を置いて石鹸のもととなるものを作っても問題は無いだろう。二階もあるし、ここに従業員さんに棲んでもらっても良いかもしれない。
やっぱり本宅は愛すべきヒトと一緒に暮らしたいからね。
 あ、それとアイナさんに頼む試作品を作る場所も必要だ。
そうすると石鹸を作る場所は地下の研究室で作った方が良いな…。その方が防犯面も安心できる。
 それじゃ、この倉庫はアイナさん用の研究施設としますか。
ドワーフ工房を持つか。それも面白い。

 もう一度マルゴーさんの店に戻り、ジョスさんの家を教えてもらう。
ジョスさんの家は、マルゴーさんの近所で、割と簡単に見つかった。

「こんちは~、ジョスさん居ますか?」
「はーい。どちら様ですか?」

 出てきたのは、ちっちゃな女の子だった。

「ジョスさんに、ニノマエが来たと伝えて欲しいけど、できますか?」
「はーい。ちょっと待っててね~。」

 女の子はちょこちょこと裏に行き、ジョスさんと一緒に出てきた。

「おう!ニノマエさんか。どうだ、あの家は。」
「最高ですね。もう毎日家に帰るのが楽しみになります。」
「そうか、そうか。そりゃよかったよ。んで、今日はメンテナンスか?」
「いえ、家の裏の倉庫を改修してもらいたいと思いまして。」
「へ?あんた、家建てたばかりだぞ。金は大丈夫なのか?」
「ええ。何でしたら前金で支払っても良いですよ。」
「お、おう…。そりゃ構わないが、何を作るんだい?」
「倉庫に工房を作って欲しいんですよ。それと2階があるので、そこに寝泊まりできる部屋と事務室ですかね。」
「工房を作るなら、工房の上層階は吹き抜けにしておかないと、上に熱がこもるぞ。
 まぁ、一回見に行くか、なぁミーシャしゃん。」

 娘さんなのか、ちっちゃな女の子はミーシャさんって言うんだ。

「おーい、かかぁ、ちょっくらニノマエさんの所に行ってくるわ。」
「はいはい。あまり遅くならないでね。」

 裏から出てきたのは、ちっちゃな絶世の美女…。ドワーフ族?にしてはごつくない…。
俺が怪訝そうな顔をしているのを見て、ジョスさんが笑顔で答える。

「あ、家のかみさん、ハーフリングだ。」

ハーフリング族ってのも居るんだ。ヒトの半分くらいか、でもヒトにそっくりだ。
そうすると、ドワさんとハーフリングさんの子供ってどっちになるんだ?

「ははは、ニノマエさんよ。別に異種族で結婚しちゃいけないってルールはないんだよ。
 それにな、かみさんも酒飲みだからよ。気が合うんだ。」
「いえ、そこを気にしているんではなく、ミーシャさんはどちらの種族になるのか…と。」
「そりゃ、ハーフリングだ。かみさんの種族を引き継ぐからな。」

 あ、そうなんだ。
じゃ、ナズナとの間でできた子供は妖狐族で、ベリルかスピネルとの間でできた子供は竜人族になるのか。ちっちゃな妖狐族、竜人族って可愛いじゃないか!勿論、ディートリヒとの子はヒトだから、それも可愛い。
 遺伝子としては問題ないって事か…。女性の遺伝子が強く出るって事は、やはりこの世界は女性が強いんだな、と改めて実感した。

 3人で歩き、家の倉庫に着くと、中を見ておおまかな平面図を描いてくれた。

「これだけの広さがあれば、工房だけ作るのはもったいないから、作業部屋も作っとくと良いかもな。」
「あ、その件ですが試作機を置く場所も必要なので。」
「ん?試作機って何を置くんだ。」
「馬車です。」
「あぁ、馬車か。それなら一台分を置いたとして、こうでこう。奥に工房を作れば問題ないな。
 工房は大きくするのか。」
「そんな大きなものは作らないので。」
「んじゃ、炉と打ち込み場、作業スペースで、こんなもんだな。」
「あ、あとお風呂も作って欲しいんです。汗かくとつらいでしょ。あ、浴槽はこれを使ってください。」
「お、わかった。そうだな。じゃ、ここのスペースを削って、こうすればいいか。
 そう言えば、あのお湯がでる魔道具はまだあるのか。」
「ええ、これですね。」
「おうよ。じゃ、これくらいのスペースで作るとなると、金貨5、6枚って事になるが。」
「大丈夫です。それにジョスさんなら間違いないですからね。」

 俺は金貨10枚を渡す。
 
「しかし、ニノマエさんよ…。あんた太っ腹というか、相手を信用しすぎているというか…。」
「それが取り柄です。それにジョスさんは逃げませんからね。」
「まぁ、そこまで信用されてちゃな。
よっしゃ分かった。明日からまた弟子連れて早めに作るぜ。
 ただ、工房だけは少し時間がかかるが、そうだな…、1週間は見といてくれ。」
「ありがとうございます。では、明日からお願いしますね。
 それと、これ渡しときます。また郷から送ってきましたので。」

 俺はウ〇ッカを1本渡す。

「うひゃ、いつもいつもすまないな。じゃぁ、明日から来るからよろしくな。
 さぁ、ミーシャしゃん、かえりまちゅよ~。」

 デレデレだ。子煩悩なんだな。

「お館様、あの姿をご覧になられ、お子が欲しくなられましたね。
 私もお館様のお子が…ゴニョゴニョ。」

 うぉ! いつの間にナズナさん背後にいたんですか?
それもクネクネしていますけど…。
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