地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

文字の大きさ
上 下
157 / 318
第六章

6-19 葛藤を癒す者と一生添い遂げる

しおりを挟む
「皆を苦しませてしまう、悲しませてしまう?とは、どういう事でしょうか。」

 俺は何故か涙を流し泣いていた。

「俺は“渡り人”だ…。いつ、この世界から消えるか分からない…。
そんな男に全身全霊を捧げてくれるディートリヒやナズナ、そしてベリルやスピネルが分からないんだ。後十数年しか居られない、それでも愛してくれるのか?
 十数年しか居られない事が怖くないのか?
 俺は怖いんだよ…。
 俺が居なくなることで、君たちを苦しませてしまうんじゃないのか?」

 ディートリヒは俺を後ろから抱きしめながら、ゆっくりと言葉をかみしめながら喋る。

「カズ様、あなたが居なくなることは私にとって、それは苦痛になるでしょう。
 しかし、カズ様は仰いました。『皆を笑顔にさせるんだ』と…。
 その笑顔の中に苦痛や悲しみはありません。
 言ったはずですよ。私はあなたが居なくなれば私もいなくなります。
 それはナズナも一緒の事だと思います。
 そうやって、カズ様は私達に愛をくださっているのです。
 カズ様ご自身が苦しいことは、傍から見ていて感じておりました。
 それもカズ様の良さなのです。
皆を愛してくれる苦しみを持っていらっしゃること、そして、その愛が愛するヒトが増えても少しも変わらないことを私は知っています。
 カズ様、大丈夫ですよ。
 私たちは決して苦しんでいませんし、悲しんでもいません。
 カズ様も苦しまないでください。」

 ディートリヒは、俺が座っている椅子の上に俺の方を向いてまたいで座った。
今度は前からゆっくりとそして強く抱きしめてくれた。

「私共は、カズ様と居て、これだけ目まぐるしく変わっていく生活に驚きを隠しきれません…。
 それは、カズ様があちらの世界からこの世界に無いモノを見せていただく驚きもあると思います。
 しかし、もっと驚いたのは、この世界に無い考えを持たれていることなのです。」

 ディートリヒは俺のスキンヘッドを撫で、キスをしてくれる。

「カズ様は女性が悦ぶことをご存じでした。
それを身をもって教えていただきました。そういった考えを伝えることで、伯爵様ご夫妻も夜の楽しみが増えてきたのだと思います。
それに、身分関係なく、そして権威にも屈せられません。
上を上と見ないその物怖じしない姿、下の者と同じ目線で考えてくださる姿は、私たちに無いモノを見せてくださいます。
 そして、あちらの世界のモノをこちらにあるモノで作ろうとされ、私達にくださいます。
 それと…、あの…、とにかく、カズ様は私にとってすべてなのです。」

 ディートリヒは、俺に口づけをしてくる。
それはフレンチキスを通り越したディープキスだった。
舌を絡ませ、お互いの感覚、お互いの存在を確認する。
その唇と舌が俺の瞼や耳、首筋へ口づけする。

「カズ様は、このようなことは男性がすることだとお思いかもしれません。
 でも、女性でもしたいのです。
 それを教えていただいたのもカズ様です。」

 俺の上の服を脱がせ、肩や胸、脇へと口づけする。

「こんな事もしてはいけない事はないですよね。
 私はカズ様を満足させたいのです。
 それは、身体で繋がるものではなく、私自身とカズ様自身を繋ぎ止めておきたいのです。」

そして、俺の膝に座っていた腰を床に落とし、そしてズボンの方に手をかけ、あの部分を愛おしく愛撫する。

「カズ様は悩みながら進まれています。
chu…
その悩みを無くすことは私達にはできません。
でも、悩みぬかれた末、戻ってきていただける場所は私たちの場所であると信じています。
chu…
私達は笑顔でその場所を作り、カズ様が戻ってくださるのを待っています。」
カズ様は決して一人ではありません。
愛するヒトが増えようが、私たちはカズ様と一緒にいますからね。
んしょっと。」

ディートリヒは、自身の下を脱ぎ、もう一度椅子の上、俺の腿に跨りゆっくりと腰を落とす。
…一つになった。

「私のこのような行為を止めていただくことができるのは、カズ様以外おりませんから。」

彼女はにっこりと笑い、もう一度キスをした…。





朝チュンです…。

悩みはディートリヒがすべて受け止めてくれた。
弱さも脆さもすべてディートリヒが受け止めてくれる…。
これまでの俺は、一人で踏ん張り、我慢し、何度も壊れかけた。
でも、この世界にはディートリヒが居る。そのディートリヒと一緒に生きていける。
いつも一緒に居れる。それが嬉しい。
これが一番なのだ。
 
 ディートリヒが俺の胸で目を覚ました。

「おはよう、ディートリヒ。」
「カズ様、おはようございます。」

 自然に口づけをする。

「昨日はごめん…。」
「カズ様の帰ってくる場所は、いつもここにありますからね。」

 ディートリヒは俺の手を持って彼女のお腹に手をあてる。

「ありがとうな…。
 それと…、愛してる。」
「私もです。カズ様。」





 俺たちが起きたのが、8時頃だった。
二人でリビングに行くと、3人は安堵した顔になった。

 それ以上は何も語らない。
いつもの朝ごはんになる。

「皆、昨日はごめんな。少し情緒不安定になってた。
 あ、ベリル、スピネル、君たちに俺の正体を言っておくね。
 俺はこの世界でない世界から来た“渡り人”だ。
 多分、この世界には無いような事をするかもしれないから、びっくりしないで欲しい。」
「は、はいぃ~!?」

 うん、お約束のようにびっくりしてるわ。
とにかく今日と明日かけて彼女たち、そしてディートリヒとナズナにも少しマナの使い方と付与できる魔法を渡しておくつもりだ。
そのためにも今日は屋内でマナを修練したい事を伝える。
そして明日はベリルとスピネルの武具の再調整だ。その方向性が決まれば2回目の出張が終了する日を迎える。

「それじゃ、先ずはマナを動かすことから始めるからね。」

 彼女たちにスポーツブラセットを着てもらい、俺のキングベッドの上で胡坐をかいてもらう。
因みにベリルはLサイズだけど、胸はLLが良いのか、少しきつそうだ。
スピネルは上はMで下はSでOKだな。あ、後で二人のサイズも測っておく必要があるな…。

 俺は下腹のあたりにマナを集める事を教える。
女性は分かりやすく、女性しか持っていない器官に集中してもらう。
“月のモノ”のイメージが分かりやすいのかと考える。
ディートリヒとナズナは、マナを集めそれを移動することを容易にやってのけるも、ベリルとスピネルはイメージというのがなかなか難しいのかマナを集めることができなかったが、午前中にはようやくマナを集めることができ、移動もできるようになった。

 昼ごはんの際、自分が口から食べたものが喉をとおり体内に移動するイメージを持ってもらう。
ま、その反対がリヴァース、ゲロである…。

 午後からは少し森に行く。
魔力を込められる武具はディートリヒのレイピアとナズナのショーテルとソードブレイカーの3本か…。
その中のショーテルはマナが入れば黒くなるという、残念な“迷い人”さん、もといレルネさんの力作だ。

「じゃぁ、これのショーテルにマナを流すようにしてほしい。
 イメージは身体に集めたマナを腕に流し、持ち手からマナを入れる感じで。」
「はい(はい)。」

 ベリルとスピネルは交互に試してみる。完全に黒くなるまでやってもらおう。
ナズナはソードブレーカーで剣撃ではなく、剣塊をイメージできるかやってもらう。
ディートリヒはもう一段階上をレイピアで。

「お館様、こんな感じでよろしいのでしょうか。」

 ナズナはマナで剣塊のような弾丸のようなものを5個くらい出している。
お!結構いい出来だ。

「ナズナ、それを10個だせるようにし、飛ばせる距離を測っておいてね。」

 ディートリヒはマナを十字にできるのかを試す。
一個目の剣撃を錬成し、直後に二個目の剣撃でを繰り出した瞬間に2つのマナを合体させて撃てるようにする。そう、十字に剣撃を出すのだ。

「カズ様、なかなかタイミングが難しいですが、これは身体に覚えさせる必要がありますね。」

そう言いながら、さまになってきている。よしよし。

 あとは、ベリルとスピネルだ。
彼女たちを見ると、汗を出しながらもなんとかやろうとしている二人がいるが、まだまだだ…。
ただ、これをいつもできないと無理だ。

 ディートリヒとナズナに話をし、彼女たちに今夜俺の部屋に来るように伝えてもらうと、二人もにっこりとする。

 いえ、そこまではしませんよ…。多分…。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

テイマー職のおっさんが目指す現代ライフ!

白眉
ファンタジー
異世界召喚には代償が必要。 ある時は召喚術を使った者、人柱となる者…。 とある世界の召喚は、代償にその世界の者と異世界の者を交換(トレード)する方法であった。 万年低ランクのテイマー、イサークは勇者と交換条件に異世界に行く事となった。 召喚された先でイサークが見たモノとは…。 (カクヨム様にて先行配信中)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平
ファンタジー
 パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。  神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。  パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。  ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。    

処理中です...