地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第六章

6-5 掌で転がされる二人の策士

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「確かに男性と女性とでは身体つきも違いますし、力も違います。
 でも、お互いが夫婦となり、双方が美しくなっていくことに満足しない夫婦はいないと思います。
 自分はディートリヒとナズナに会えたおかげで、齢50を越えた今でも毎日楽しく暮らしています。
 それは、彼女たちに綺麗になって欲しいと思っているからなんですよ。
 だから自分は彼女たちの髪を洗います。それにですね、彼女たちも好きなヒトに髪を洗われると気持ちが良くなるんですよ。
 多分、ユーリ様もティエラ様も伯爵が髪を洗っていただく方が良いと思います。
 なので、本日はそのやり方を見ていだいただという訳です。」

「あなた。この髪を綺麗だと思われるのであれば、私どもとお風呂に一緒に入れば良いのです。」
「う…。」
「そうですわ。毎日でも良いくらいです。
 こうやって元気になってきた姿を見ていただけるのも嬉しいですもの。」
「むむ…。」

 あ、何となく伯爵が話したい内容が分かった気がする。
最近、奥方ズが積極的なんですね…。良いことじゃないですか。

「伯爵様が先ほど自分に話があると仰っていた内容がなんとなく分かりました。
違っていれば申し訳ありませんが、ここは奥方様に乗っかり、ご自身も楽しまれることが良いと思いますが。」
「いや、それはそれで良いのだが、いきなり変わり始めたもので…。
 少し戸惑っておるのだ。」
「伯爵様、女性は男性が満足する姿を感じることができます。
でも男性は女性が満足するという姿を感じる事ができると思われておりますか?」
「そ、それは…。」

 これは俺から言う事ではないので、ディートリヒに目配せすると頷いてくれる。

「伯爵様、女性も満足するものなのです。
 ただし、殿方の満足とは違い、女性の場合は徐々に甘美な気持ちになってきます。
 そして、何より違うのが殿方が満足された後も女性の満足は続いているという事です。」
「それは、どういう事か?」

 あとは、俺が。

「失礼な事を言うようですみませんが、女性が悦ぶお姿を見た事がない、と。
 そして奥方様があの手その手で迫られているのに、どうして良いか困っている。
 だから、奥方様に甘えれば良いのです。流れに身を任せれば良いのです。
 男性が主導だなんて思わなくても良いんですよ。
 行ったことは無いですが、遊郭は違いますよ。
 女性がリードしてくれます。

 男性と女性の間にはプライドなんて関係ないんです。
 好きな方と一緒に居る。一緒に笑える。
 そういったことができる男性を奥方様が御望みだという事です。」
「ぬ。ぬ…。分かった…。」
「おそらく、それが伯爵様のご相談なのですよね。」
「そうだ…。儂はユーリやティエラが迫って来ることをどうすれば良いのか分からなかったのだ。」

 まぁ、男性あるあるだよ。
男性はこうあるべきとか、女性はこうあるべきといった固定観念はあるだろうね。
でも、愛しているならその概念は捨てた方がいい。
もっと違う方法も試してみる事も必要だ。
こうして欲しいと思うなら、自分から動かないと。

「これで、解決されましたか?」
「お、おう。感謝するぞ。ニノマエ氏。」
「では、ここからは私の売り出すモノの話をさせていただいても?」

 ユーリ様がご満悦だ。

「はい。どのような方法で売り出しますか?」
「これから、サボーに似た“石鹸”というモノを作り、そこから加工していきます。」
「石鹸ですか?確かサボーは王族しか製法が伝わっていないものと聞いていますが?」
「はい。どうやって作られているのか自分も知りません。
 ですが、自分が知っている知識を総動員して作ります。
 言い方を替えれば、サボーに似たようなものを売り出すという事です。
 その点に関し、製法を守るという王族との干渉を避けたいのです。」
「つまり、王族が売り出すサボ―と似て非なる商品を売り出す。
 売り出した際にはサボーと違うことを王族の方に言質を取っていただきたいのです。」
「それを伯爵が出来ると?」
「できるでしょうね。何せ王族の息のかかった者を俺の傍に置いて監視しようと画策されていたくらいですからね。」

 俺はニヤッと笑った。

「参りましたわ。ニノマエ様。」

 ユーリ様が白旗をあげた。
うん、ナズナの件はユーリ様の忖度だったんだろうね。そして王族とゆかりのあるティエラ様と共謀し、メリアドール様をけしかけ王を動かした、と。
まぁ、王様は言われたことに対し、『任せたよ。』くらしか思っていないだろうけど。

「その言質を取れば、これまで通りお付き合いしていただけるという事でよいのですか?」
「ユーリ様、自分はこれからも今まで通りにお付き合いさせていただきますよ。ただ、自分の知らない所で、あれやこれやされる事は望んでおりません。」
「ふふふ。すべてお見通しという事ですか。」
「いえ、私はユーリ様ではございませんので、すべてなんて分かる事なんてできません。」

 ユーリ様がにっこりと笑う。

「降参です。
 ニノマエ様には何をしても勝てないことが分かりました。
 スタンピード報告後、確かに王家からはあなたを保護せよとの命令が来て、トーレスとカルムに動くよう命令した事を認め、その無礼に対し謝罪させていただきます。
 ニノマエ様を試すようなことをして申し訳ありませんでした。」

 ユーリ様は、お茶を飲んで一息つく。

「理由は…、そうですね、先ずは戦略魔法です。あの魔法を他国に使われますと危険と感じました。
次に発想力です。お好み焼き、ソース、そして恋人たちの聖地、更には工芸品…。ニノマエ様はこの短期間に様々なモノを創り出されております。そのような逸材をこの地に留めておきたかったという事です。」

 あぁ、ユーリ様の言動で誰の差し金か全容が明らかになったよ。
策士であるユーリ様がお付き合いとか少し違った言葉を使用している…。
既に見破られることを前提とした内容にも聞こえる。
それにサボーの話を伯爵家に聞いた時点で動き始めたという感も見える。
俺を含め、ユーリ様もすべてあの方の掌で転がされていたんだな…。

「ははは。ユーリ様、もう茶番は止めにしませんか。
 腹の探り合いは、もう面倒くさいんですよね。ね、伯爵様。
 そして、ユーリ様ご自身を悪者にさせてしまい、申し訳ございません。」
「へ(え)?」
「俺がサボーに興味を持っている事、護衛の出どころが伯爵様では無いと言われていた事…、いろんな事を想像するに、裏にメリアドール様がおられるのですね。
 どうせメリアドール様からは、
『ニノマエという奴は味方になれば強いが、敵になれば怖い存在だ。必ずこの地で留まるよう画策せよ。サボーの事に興味を持っているようであれば出方を探れ、その出方によって対応を協議すべし。』
とでも言われたんじゃないですか?だからいろいろと画策された、と。」

 皆キョトンとしている。
裏を読み過ぎたか?と思いユーリ様を見ると、完全に目がキラキラしている。
ん。なんだ?

「ニノマエ様、おみそれいたしました。
すべてニノマエ様のおっしゃるとおりです。
 メリアドール様からの依頼です。何故お判りになられたのですか。」
「勘です。」
「ご謙遜を。では、メリアドール様からの書簡をお渡しいたします。
 それと、あなた。
よろしいですか。これから先、ニノマエ様に他の貴族から何かしらの接触や嫌がらせなどがありましたら、全力で阻止してください。それ無くしてこのブレイトン伯爵領の繁栄は望めませんよ。
 これはメリアドール様のご意向であります。」
「ひゃ、ひゃい!」

 あ、伯爵さん、完全にガクブルしている…。
そんなにもメリアドールさんって怖いんだ…。
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