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第五章
5-24 テイマー誕生
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まず、治療に対する対価だ。
おそらくこれをしないと、レルネさんが折れない。
「では、先ず治療の対価として、レルネさん、昨日討伐したデカいサーペントの解体を村あげてお願いしたい。そして、そのリストを作ってほしい。」
「分かった。」
「解体した後の素材については、コカトリスが終わったら話し合うという事でどうかな。」
「うむ。」
「では、次にコカトリスだが、2つ方法がある。」
俺は、先ほどディートリヒとナズナに話した内容を伝えた。
「前者であれば、今までとは何も変わらず、静かに暮らしていく事となる。
しかし、後者であればそれは180度違う展開となる。さっきのデカいサーペントの素材もそうだが、この郷のヒトは手先が器用だとレルネさんから聞いた。
であれば、素材を受け入れ、それを加工し販売することはできると思う。
まぁ、モノは見ていないので何とも言えないが、おそらくそんじょそこらの小間物屋や土産屋よりももっと高価な気品あふれるものができるんじゃないか。」
「うむ。できると思うぞ。」
「ではレルネさん、この素材を使って、俺たちが帰ってくるまでの期間で、どれくらいの髪留めができるのか見せてほしい。」
「分かった。で、コカトリスはどうする?」
「それを今から説明するよ。それにはベルタさんの力が必要だ。
それと狩人を、そうだな…5名は欲しい。」
「それらを連れてコカトリスの巣に行くわけか。」
「あぁ。コカトリスをテイムしようと思う。
しかしテイムの魔法はこの郷の者は使えない。だから、ディートリヒとナズナにやってもらう。それでもダメなら俺も使う。
この魔法は一種の奴隷契約みたいなものだが、テイムした者が認めた者であれば危害は加えられない。それに、お互いがメリットが無いと判断された時点でおしまいだ。
だから、この郷の者にも重々説明し理解してもらえないと動けない。
つまり、この郷はコカトリスに守られている。コカトリスもこの郷に守られているという認識をお互いに持つ。お互いが協力すればコカトリス以下の魔獣なら問題なく行けるだろう。そして、コカトリスも縄張りを持つのであれば淘汰しなくてはいけない。頭数を増やせば自滅することは本能として知っているはず。なので、コカトリスが承諾した場合は卵をもらう事ができる。勿論、抜けた羽などの素材を回収できる。
コカトリスも自分たちの巣が汚くなることを嫌うはずだ。
抜けた羽や育たない卵、餌となった魔獣の骨などを掃除してくれると衛生的にも良く、ひなが育つことが分かるはずだ。ひなは親からそのルールを伝達される。郷の者は子に伝達していく。
そんな感じで共存はできないか?」
「ニノマエ殿よ。そんな事すれば、自然の摂理に反するのではないか?」
「じゃぁ聞くが、自然の摂理とは何だ?
そんなものヒトやエルフが自分たちを中心に考えた“どうでもいい理論”であり、ご都合主義なだけだ。もっと先に進むんだよ。魔獣が敵ではなく、みんなこの地で生きている。そんな気持ちがあれば、協力はできるはずだ。
もうお互いにビクビクしながら生きるのではなく、腹割ってぶち当たることができればいいんじゃないか。ま、できなければ討伐だけど、きっとうまくいくはずだ。」
レルネさんがあきれた顔をしている。
「イチよ。主は前の“渡り人”よりも、何といったかの…、そうそう“マロン”があるの。」
「マロン? あ、それ“ロマン”だ。」
「そう、それじゃ。そんな事が出来れば、この郷も収入や食べ物が増えるのかの?」
「そこ心配してたのか。
あぁ、増えるな。先ず卵が取れることでタンパク質が摂取できる。タンパク質は体力増強や肌にも良い。この郷のヒトが美男美人になるって事だ。
それと、巣の掃除によって、魔獣の骨が手に入る。上手くいけばレア素材も簡単に手に入る。
それを持ち帰り、工芸品として売る。
そう言えば、俺の家ももうすぐ完成するから、そこで売っても良い。
その売った金で必要な物資を買い、郷へ供給する。そうすると郷の生活も俄然上がるという寸法だ。」
例えば、という事で、俺がこれまでの世界から持ってきた砂糖、塩、胡椒を時間がある時に3人でせっせと詰めた瓶詰を渡す。
「これは砂糖か…、こっちは塩…、これは、胡椒か?」
「あぁ、こういったものと交換できれば村も豊かになるとは思わないか?」
「しかし、これらは希少で高いと聞いているが。」
「じゃぁ、郷の工芸品は希少で高くはないのか?」
はい、論破しました。
よくあるんだよ。“作り上手の売り下手”って。
自分たちが作ったものの価値が分からず、下手に出てしまう事って…。
まぁ、俺も人の事は言えないけど…。
「んじゃ、これで決まりでいいか?」
「ニノマエ殿、よろしく頼む。」
「じゃ、すぐに行くぞ。」
俺たちが奥の部屋からようやく顔を出したことをヤハネのメンバーは喜んだが、その後驚愕な事を俺から言われて、口をあんぐり開けている。
シーラさんに至っては、そんな事できれば史実にもない事だから報告書にまとめたいとしていたが、これも郷の禁忌として動くことだから黙ってもらうことにした。勿論髪留めを餌にした。
集会所のような場所に郷の者全員が集められ、俺が郷を救った者であること、これから解体作業を行うこと、そして、コカトリスをテイムしに行く事を告げると、コカトリスについては何か言いたそうだったが、ベルタさんとレルネさんの睨みをきかせた説明に誰も文句は言わなかった。
そして、最終兵器として、ベルタさんが今後の郷の展開について説明し、砂糖、塩、胡椒を皆に見せると皆は目を輝かし、全員一致で協力することとなった。
ただ、エンペラー・サーペントのぶつ切りを集会所の3分の2にぶちまけた時は、さすがに皆引いていたが…。
それから2時間後には、既にコカトリスのテリトリーに入っていた。
サクサク行くときは順調だし、成功するんだよな…。と思いながらも、索敵をかけながら巣を目指す。
「お館様、あちらの山に集団でいますね。」
「そうだな。んじゃ始めるか?ディートリヒ、ナズナ。テイムのタイミングは分かるか?」
「はい。相手が敵と認識する直前。目と目があったときですね。」
「そうだ。イメージは?」
「お互いが仲良くすれば、巣が綺麗になることやこの辺りも草刈りや虫掃除もできますと。」
「まぁ、そんなもんだね。さてと、先ずは周囲の親鳥を頼む。
多分、群れのボスがいると思うから、それは俺が担当しよう。
ベルタさんは俺についてきてくれ。後はこの場で待機。テイムが成功すれば合図するから、俺たちのところまで来てほしい。
それじゃ、行きますか!」
バフをかけて、巣に突っ込んだ。
さすがナズナだ。既に隠密を入れながらコカトリスの前に行き「テイム」と唱えている。
コカトリスはきょとんとしているが、攻撃はしてこない。お、成功だ。
次はディートリヒ。左側にいる親鳥に近づき「テイム」と唱えるが、相手が目を見ていない。
目と目が合わないとテイムはできないぞ。
次に魔法を発動した時は目と目が合いテイムを発動している。
俺の中の創造魔法がヒトに伝えられることに驚きを覚えた。
これなら2人にいろんな事を教えてあげることができる。
さて、俺も行きますか。
巣が集まっている中央には、おそらくこの群れのボスがいるはずだ。
他のコカトリスに目もくれず、そこめがけて走っていく。
もう少し…、
居た!デカい!5mくらいあるだろうか…。
こんな奴に攻撃されたら、ヒトなんて一撃だな…と思いながらもベルタさんと走った。
キャオー!
ボスが一声上げ警戒する。
すると周りのコカトリスが一斉に顔を上げ警戒をする。
俺とボスが目を合わせる。
これからヒナがかえり、ヒナが一斉に餌を欲しがる…、その世話で忙しくはなるが、毎日餌を捕ってくるのが楽しみになる。巣に散乱した骨もなく、虫も湧かない。ヒナにとってこれほど住みやすい楽園はない。スクスクと育ってほしい…。そう思いながら叫ぶ。
「テイム!」
ボスは目をきょとんとさせた。
俺が望む意識がボスに入っていくと、警戒していた姿を解き一声鳴いた。
キュー――
周りに居たコカトリスからの警戒が解かれた。
おそらくこれをしないと、レルネさんが折れない。
「では、先ず治療の対価として、レルネさん、昨日討伐したデカいサーペントの解体を村あげてお願いしたい。そして、そのリストを作ってほしい。」
「分かった。」
「解体した後の素材については、コカトリスが終わったら話し合うという事でどうかな。」
「うむ。」
「では、次にコカトリスだが、2つ方法がある。」
俺は、先ほどディートリヒとナズナに話した内容を伝えた。
「前者であれば、今までとは何も変わらず、静かに暮らしていく事となる。
しかし、後者であればそれは180度違う展開となる。さっきのデカいサーペントの素材もそうだが、この郷のヒトは手先が器用だとレルネさんから聞いた。
であれば、素材を受け入れ、それを加工し販売することはできると思う。
まぁ、モノは見ていないので何とも言えないが、おそらくそんじょそこらの小間物屋や土産屋よりももっと高価な気品あふれるものができるんじゃないか。」
「うむ。できると思うぞ。」
「ではレルネさん、この素材を使って、俺たちが帰ってくるまでの期間で、どれくらいの髪留めができるのか見せてほしい。」
「分かった。で、コカトリスはどうする?」
「それを今から説明するよ。それにはベルタさんの力が必要だ。
それと狩人を、そうだな…5名は欲しい。」
「それらを連れてコカトリスの巣に行くわけか。」
「あぁ。コカトリスをテイムしようと思う。
しかしテイムの魔法はこの郷の者は使えない。だから、ディートリヒとナズナにやってもらう。それでもダメなら俺も使う。
この魔法は一種の奴隷契約みたいなものだが、テイムした者が認めた者であれば危害は加えられない。それに、お互いがメリットが無いと判断された時点でおしまいだ。
だから、この郷の者にも重々説明し理解してもらえないと動けない。
つまり、この郷はコカトリスに守られている。コカトリスもこの郷に守られているという認識をお互いに持つ。お互いが協力すればコカトリス以下の魔獣なら問題なく行けるだろう。そして、コカトリスも縄張りを持つのであれば淘汰しなくてはいけない。頭数を増やせば自滅することは本能として知っているはず。なので、コカトリスが承諾した場合は卵をもらう事ができる。勿論、抜けた羽などの素材を回収できる。
コカトリスも自分たちの巣が汚くなることを嫌うはずだ。
抜けた羽や育たない卵、餌となった魔獣の骨などを掃除してくれると衛生的にも良く、ひなが育つことが分かるはずだ。ひなは親からそのルールを伝達される。郷の者は子に伝達していく。
そんな感じで共存はできないか?」
「ニノマエ殿よ。そんな事すれば、自然の摂理に反するのではないか?」
「じゃぁ聞くが、自然の摂理とは何だ?
そんなものヒトやエルフが自分たちを中心に考えた“どうでもいい理論”であり、ご都合主義なだけだ。もっと先に進むんだよ。魔獣が敵ではなく、みんなこの地で生きている。そんな気持ちがあれば、協力はできるはずだ。
もうお互いにビクビクしながら生きるのではなく、腹割ってぶち当たることができればいいんじゃないか。ま、できなければ討伐だけど、きっとうまくいくはずだ。」
レルネさんがあきれた顔をしている。
「イチよ。主は前の“渡り人”よりも、何といったかの…、そうそう“マロン”があるの。」
「マロン? あ、それ“ロマン”だ。」
「そう、それじゃ。そんな事が出来れば、この郷も収入や食べ物が増えるのかの?」
「そこ心配してたのか。
あぁ、増えるな。先ず卵が取れることでタンパク質が摂取できる。タンパク質は体力増強や肌にも良い。この郷のヒトが美男美人になるって事だ。
それと、巣の掃除によって、魔獣の骨が手に入る。上手くいけばレア素材も簡単に手に入る。
それを持ち帰り、工芸品として売る。
そう言えば、俺の家ももうすぐ完成するから、そこで売っても良い。
その売った金で必要な物資を買い、郷へ供給する。そうすると郷の生活も俄然上がるという寸法だ。」
例えば、という事で、俺がこれまでの世界から持ってきた砂糖、塩、胡椒を時間がある時に3人でせっせと詰めた瓶詰を渡す。
「これは砂糖か…、こっちは塩…、これは、胡椒か?」
「あぁ、こういったものと交換できれば村も豊かになるとは思わないか?」
「しかし、これらは希少で高いと聞いているが。」
「じゃぁ、郷の工芸品は希少で高くはないのか?」
はい、論破しました。
よくあるんだよ。“作り上手の売り下手”って。
自分たちが作ったものの価値が分からず、下手に出てしまう事って…。
まぁ、俺も人の事は言えないけど…。
「んじゃ、これで決まりでいいか?」
「ニノマエ殿、よろしく頼む。」
「じゃ、すぐに行くぞ。」
俺たちが奥の部屋からようやく顔を出したことをヤハネのメンバーは喜んだが、その後驚愕な事を俺から言われて、口をあんぐり開けている。
シーラさんに至っては、そんな事できれば史実にもない事だから報告書にまとめたいとしていたが、これも郷の禁忌として動くことだから黙ってもらうことにした。勿論髪留めを餌にした。
集会所のような場所に郷の者全員が集められ、俺が郷を救った者であること、これから解体作業を行うこと、そして、コカトリスをテイムしに行く事を告げると、コカトリスについては何か言いたそうだったが、ベルタさんとレルネさんの睨みをきかせた説明に誰も文句は言わなかった。
そして、最終兵器として、ベルタさんが今後の郷の展開について説明し、砂糖、塩、胡椒を皆に見せると皆は目を輝かし、全員一致で協力することとなった。
ただ、エンペラー・サーペントのぶつ切りを集会所の3分の2にぶちまけた時は、さすがに皆引いていたが…。
それから2時間後には、既にコカトリスのテリトリーに入っていた。
サクサク行くときは順調だし、成功するんだよな…。と思いながらも、索敵をかけながら巣を目指す。
「お館様、あちらの山に集団でいますね。」
「そうだな。んじゃ始めるか?ディートリヒ、ナズナ。テイムのタイミングは分かるか?」
「はい。相手が敵と認識する直前。目と目があったときですね。」
「そうだ。イメージは?」
「お互いが仲良くすれば、巣が綺麗になることやこの辺りも草刈りや虫掃除もできますと。」
「まぁ、そんなもんだね。さてと、先ずは周囲の親鳥を頼む。
多分、群れのボスがいると思うから、それは俺が担当しよう。
ベルタさんは俺についてきてくれ。後はこの場で待機。テイムが成功すれば合図するから、俺たちのところまで来てほしい。
それじゃ、行きますか!」
バフをかけて、巣に突っ込んだ。
さすがナズナだ。既に隠密を入れながらコカトリスの前に行き「テイム」と唱えている。
コカトリスはきょとんとしているが、攻撃はしてこない。お、成功だ。
次はディートリヒ。左側にいる親鳥に近づき「テイム」と唱えるが、相手が目を見ていない。
目と目が合わないとテイムはできないぞ。
次に魔法を発動した時は目と目が合いテイムを発動している。
俺の中の創造魔法がヒトに伝えられることに驚きを覚えた。
これなら2人にいろんな事を教えてあげることができる。
さて、俺も行きますか。
巣が集まっている中央には、おそらくこの群れのボスがいるはずだ。
他のコカトリスに目もくれず、そこめがけて走っていく。
もう少し…、
居た!デカい!5mくらいあるだろうか…。
こんな奴に攻撃されたら、ヒトなんて一撃だな…と思いながらもベルタさんと走った。
キャオー!
ボスが一声上げ警戒する。
すると周りのコカトリスが一斉に顔を上げ警戒をする。
俺とボスが目を合わせる。
これからヒナがかえり、ヒナが一斉に餌を欲しがる…、その世話で忙しくはなるが、毎日餌を捕ってくるのが楽しみになる。巣に散乱した骨もなく、虫も湧かない。ヒナにとってこれほど住みやすい楽園はない。スクスクと育ってほしい…。そう思いながら叫ぶ。
「テイム!」
ボスは目をきょとんとさせた。
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