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第五章

5-5 ダンジョン再び…

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 ディートリヒは夕刻戻って来た。
 俺とナズナは裸のまま寝ている。
この姿を見てヒスを起こすかと思ったが、にっこりと微笑み、

「ようやく、一つになれたのですね。」

と涙を流しながら、服を脱ぎ始めた。
あ、俺体力ない…、と思いながらも、まぁディートリヒの性格だから仕方がないと諦めた。
すると、彼女は俺の左側にくっつき抱きしめてきた。

「カズ様、私とナズナを愛してくださいませ。」

 そう言うと、キスをしてくる。
でも、キスだけしてまた元の位置に戻る。

「ナズナさん、良かったですね。あなたの想いが届いて。」
「はい、ディートリヒ様。私こんなに幸せで良いのでしょうか。」
「もう奴隷ではないのですから、様はやめましょうね。」
「はい、ディートリヒさん。」
「ふふふ。ではこれから二人で一生かけてカズ様を幸せにしていきましょうね。」
「はい。」

 俺、真ん中に居て非常にむず痒いのですが…。

「そうそう、ナズナには話したけど、明日からまたダンジョンに籠るからね。
 目標はバッグ10個分の鉄等の素材です!踏ん張りましょう!」
「はい(はい)。」
「んじゃ、夕ご飯食べに行こうか。」
「あの、お館様、ひとつお願いがあるのですが。」
「何?」
「ダンジョンで食べた“トンカツ”をもう一度食べたいのですが…。」
「あぁ、あれか…、あれを今街の中で出すと大騒ぎになると思うんだが…。」
「そうですね。サンドウィッチだけでも奥方様がたはびっくりされ、この街で売り出しましょうって話になりましたから。」
「え?ディートリヒ、あれってこの世界ではまだ無かったの?」
「はい。あのように手軽に食べることができる食べ物はありませんでした。
 そして、明日商業ギルドを呼び、“サンドウィッチ”を展開していくそうです。」

 あらら…、またやっちゃったな…。
まぁ、どうせこれから誰かが展開していくんだろうと思うので、すべてをユーリ様に任せよう。

「ユーリ様が絡んでいるなら任せればいいか。」
「ふふふ。本当にカズ様はユーリ様と同じようなお考えを持たれているのですね。」
「あの方は俺よりも遥かに上を行く方だよ。」
「そうですか?私はカズ様も相当の商才をお持ちだと思いますが。
あ、それとオーク・キングの王冠ですが、カズ様の仰る通り伯爵様にお渡しするのではなく、ユーリ様にお渡ししましたら、ソースとマヨネーゼ発祥の地と恋人の聖地の整備に使わせていただくと仰っておられました。」
「え?そうなの?てっきり伯爵に渡すと一人で悦に浸るだけだと思ったから、ユーリ様にお渡しし、伯爵様も押さえて欲しかっただけなんだけど。」
「ふふふ。カズ様はやっぱりカズ様ですね。
 愛してます。」

 ディートリヒはキスをして服を着始める。
ナズナも起きて服を着始めた。

「そうそう、ナズナさん。これだけは約束してください。
 朝のカズ様とのキスは私が一番で、夜のおやすみのキスは私が最後で。」

 おい!ディーさん。あんたも何でそんなところにプライド持ってるんだ。

「ディートリヒ、それはお前のプライドじゃないのか。」
「いいえカズ様、これはプライドではなく、ルールですよ。」

 あかん。詭弁だ。
俺は恐る恐るナズナを見る。
ナズナは凄く喜んでいる。

「毎日お館様とキスしても良いのですか。」
「ええ。毎日しましょうね。」
「はい!いっぱいします!」

 そこかよ!
何かおかしいと思うけど、まぁ良いや。彼女たちが自分の気持ちに素直になってくれさえすれば良い。

 夕食を摂り、部屋に戻り寝る。
明日からのダンジョンで、動きやすいようにとナズナにスポーツブラセットのSサイズを渡した。
ナズナはその場で着替え、ぴったりだと言って踊り始めている…。
うん。今度帰ったら下着を買ってこないといけないな…。なんて思いながら、アイテムを整理していると、いつの間にかディートリヒとナズナが俺が渡した下着のカタログを見てキャーキャー言ってる…。
好きなものがあれば〇(マル)をうっておいてね、と言うと、すべてに〇が付いた。
これをどうする気なんだ…、おっさんこれだけ買うのは無理だぞ。

今晩からキングサイズのベッドに右にナズナ、左にディートリヒという川の字で寝ることとなった。
大きい部屋に移った意味はあったのか?と思うが、まぁ仕方がない。
そして寝ることにした…。


 はい。今晩は何もありません。
明日のため『その1』です!一人だけ体力が無くヘロヘロではいけません。

 翌朝、皆で必要なモノを5日分買い足してダンジョンまで歩いて行く。
あ、馬車の事も考えないといけないな…。
齢取ると忘れっぽくなってしまう…。

ディートリヒの身体は大丈夫かと聞けば、俺が渡した生理用品がことのほか素晴らしく快適な状態でダンジョンも行けるとの事。しかし、生理痛もあると思うから無理はしないでと頼むと、ディートリヒは俺を抱きしめ、『カズ様の愛情を感じます』とか言い出す始末。
でもな、ディーさん…、革のアーマードレスの上から抱きしめられると痛いんですよ…。

ナズナの革の冒険者用の上下も可愛い。
今度もっと良いセットを購入してあげようと思う。

 ダンジョン入り口に着き、守衛さんに今回は4,5日籠ることを伝え、ダンジョン内に入った。
11階層からスタートし、サクサクと13階層まで進む。
今回はギルドの依頼も受けていないので、目的だけ達すれば良い。

 そして13階層、前回は800mほど上がったところで採取していたので、それよりも上を目指すこととした。勿論ゴーレムも倒しながら進んでいくと、前回採掘した場所にたどり着く。

「ここって、まだ採れると思う?」
「はい。ダンジョンは再生されます。
なので、当たりがあればその場所を教えないのも冒険者の鉄則ですよ。」

 それじゃ、同じ山肌で分離をし、塊を採取する。
ん?もう一つイメージができた。石と金属を分離したものを異なる金属で集合・結合させることはできないか?と思い、試しに分離した範囲に『集合』をかけてみた。
まぁ結合でもよかったが、この言葉を言うと、ディーさんがなにか勘違いすると思って…。

 うお、山肌に一つのデカい鉄の塊が出てきた。
あまり大きくなるとアイテムボックスに入らないので、小さなサイズで入れ始めた。
 この場所でアイテムバッグ1つ分の2t分採取できた。

 歩きながら、良さげな場所に行く。
俺は同じように魔法をかけ、一気に採取していく。

ふと考える。アイテムボックスに2tのイメージをつけてしまうと、本来の体積分となる重量が採取できないのではないか…。
8個のアイテムボックスで2tなら1.6t。でも、5.4mの立方体で鉄を満タンに入れれば…。
あかん…、計算が追い付かない。123トン??12トン??
あああああーーーー計算機が欲しい…。
ディートリヒ、ナズナ…、誰か計算してくれ…。
俺は文系なんだ。計算は苦手なんだ…。

「お館様、顔が青ざめておりますが大丈夫でしょうか。」

ナズナが心配して声をかけてくれる。

「あぁ、大丈夫だ。計算が苦手でな…。」
「計算とは?」
「俺たちのアイテムバッグだが、5.4mの箱をイメージしているんだが、そこに入れる重量が制限してあって2tしか入らない。」
「そうですね。5.4mの箱ですと157立方メートルです。水だと問題はありませんが、鉄のように重たいものはこの容量でいくと1,236t入ることになり、2tだけでは少々心もとないですね。」
「じゃ、重量の縛りを無くせば入るって事?」
「そうなります。あくまでも想像ですが、その箱の中に入りきれば重量は問題ないという事にすれば行けるのではないでしょうか。」

 なんと!ナズナさん!素晴らしい計算と提案です。
やっぱり助け合って生きていくって素晴らしい!
俺は計算がからっきし苦手だけど、ナズナはそれを暗算で出来るのか…。すごいぞ!ナズナ!

「ナズナ、ありがとう。それじゃ、これから今入れているバッグ以外の重量制限を外す魔法をかけるので、少し休憩にしようか。」
「お館様、それではバッグが余ってしまいます。
 できれば、2つだけ重量制限を解除し、残り7つのバッグを500㎏に抑えることはできませんか。
 そうすれば、そのバッグは巷で販売しているバッグの良化版として売れる可能性があります。」

 あれ?ナズナさんヒトが変わった?
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