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第三章
3-10 密会①
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目を開ける…。
また神様にお小言言われちゃったな…。
でも、いろいろと教えてくれるから、すごく助かっている。
あ、しまった。お礼言うの忘れてた…。次に会ったらお礼言わなくちゃ。
ボーとしながら考える。
あれから2時間となれば、まだ街に戻れる時間だ。
あ、ディートリヒは何してるんだろうか?
と思いながら、少し頭の向きを変えようとするも、ハタと気づく。
頭に感じる感触が嫌に柔らかい…。
これって…。
頭の中が真っ白になった。
「ご主人様、お目覚めになられましたか。」
頭上から声がした。
右側を下に寝ていた身体を仰向けにしてみると、顔の上にディートリヒの顔がある。
あ、これ、膝枕だ…。
もう何十年もしてもらったことがないし、したこともなかったなぁ…。
少し恥ずかしくなったが、照れ隠しするようにもう一度目を閉じる。
「ディートリヒ、ありがとうね。ずっとこうしていたの?」
「いえ、ご主人様が倒された魔物を片付けておりましたので、ずっとこうしていた訳ではありません。」
「そうか…、片付けまでさせちゃったんだね。ありがとね。」
「いえ、戦闘でお役に立てないので、せめてこれくらいは…と思い…。」
「全然、そんな事ないから!」
起き上がろうとするが、ディートリヒに押さえつけられ、そのままの恰好で収まる。
「まだ、ご無理をされてはいけません。」
「ごめん。じゃぁ、もう少しだけこのままでお願いしてもいいかな? ディートリヒ、足痺れない?」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ。私もこのままの方が落ち着きます。」
「うん。で、ディートリヒは大丈夫?痛いところは無い?」
「ほんと、ご主人様はご自分の事はいつも後回しにされるんですね。」
「ははは、性分だからね。」
「私は大丈夫です。ご主人様に治癒魔法をかけていただきましたので、痛みもございません。」
「そうか、良かった。」
それから、魔物のことを聞いた。
この巣には魔石の数から逆算し、全部で64体いたようだ。
内訳は、キング1体、ロード1体、メイジ、アーチャー、ゴブリンで62体。
魔石の大きさからはキングとロードしか判別できなかったようだ。
しかも、すべての魔物が素材をドロップしている…という事はダンジョンから湧き出た魔物という事になる。
なにかアイテムもドロップされたようだが、詳しくは分からないので、キング、ロード以外のドロップ品はギルドに買い取ってもらうことにしようと思うも、不味い事に気づく。
「なぁ、ディートリヒ。」
「なんでしょう。ご主人様。」
「そういえば、自分、ギルドから追い出されたんだよな…。そうなると、買い取りとかもしてもらえないって事か?」
「おそらくは。」
「薬草採取もできなくなる?」
「薬草は採取できますが、冒険者ギルドに卸すことができません。どこか新しい買い取り口を探す必要がありますね。」
「そうか…、ごめんな。そんな事も考えずに緑の集団倒してたよ。」
「ふふふ、ご主人様らしいです。」
・
・
・
「ふー。大分良くなったよ。ディートリヒありがとね。」
「いえ、もう大丈夫なのですか?」
「うん。そろそろ出発して、街に戻って一緒に休もう。」
「はい…。」
俺は、ディートリヒの膝枕を名残惜しむも、おっさんズ理性を前面に出し帰路に就く。
道中、嫌な感覚が遠くに感じるも、こちらに気づいていないので、スルーした。
3時間ほど歩き街に到着。門まで来るとコックスが立っている。
「コックスさん、こんなところでどうしたんですか?」
「あぁ、イッさん…、あんたを待ってたんだよ。
あんたがギルドから出た後、森の方に向かったって門番から聞いたからな。」
「それはすみません。薬草採取に行ってたもので。」
「薬草採取にしては2人とも泥だらけだけど…」
あ、クリーンかけるの忘れてた。
「ははは、森で派手に転んでしまったんですよ。 お恥ずかしい限りです。」
「そうか…、それならいいんだが、あんたも齢だから気を付けなよ。」
「はい、ありがとうございます。十分気を付けます。」
「で、俺がここで待ってた理由って分かるか?」
「いえ、分かりません。」
「そうか…、ちょっと場所を変えて話すことはできるか?」
「それは大丈夫ですが、一度宿屋に戻って綺麗にしてからではダメですか?」
「あぁ、そうだったな。じゃ、2時間後に冒険者ギルドの裏手にある“シュクラット”って店に来てほしい。場所は分かるか?」
「近くに行って誰かに聞きますので大丈夫ですよ。」
「んじゃ、2時間後に。待ってるぜ。」
どんな話があるのか、おそらくはギルドの話だろう…。
まぁ、冒険者証をはく奪されても商業ギルド証があるから、何の問題もないが…。
ディートリヒと自分にクリーンをかけ、琥珀亭に戻る。
少し、部屋で今後の展開についてディートリヒと話をし、マリベルさんに今晩の夕食は不要と伝え“シュクラット”を目指す。
道中、ディートリヒにギルドとの関わり方について意見を聞くも、打開策は見つからなかった。
難なく“シュクラット”を見つけた。
店内で武具を預けつつ、店員にコックスさんに呼ばれている旨を告げると奥の個室に案内された。
「おう、待ってた。」
コックスさんは席を立ち、俺とディートリヒを席まで案内する。
席に案内されるまでの間、この場のメンバーをざっくり鑑定する。
ここに居るのは、Bクラスの“炎戟”メンバーの6名、Cクラス“風の砦”の6名と副ギルド長のクーパーさんだな…。俺たちを入れると総勢15名か…。
全員が椅子に座り俺が座るのを待っている。風の砦のメンバーはいつもの恰好だが、クーパーさんと炎戟のメンバーは身なりの良い服装だ。
俺たちも万一のために服を買っておかなくちゃいかんな…、なんて思いながら席に着く。
「こんな時間に集まってもらって、申し訳ない。」
クーパーさんが話し始める。
「今朝、みなさんに集まってもらったが、ニノマエさんが途中で退席させられたので、今一度確認のためギルドの方針を伝える。
ギルドは、ダンジョンの活性化は一時的なもので収束可能と判断。よって今後の対応については、普段通りとする。
なお、Dランク冒険者のニノマエ ハジメは、ギルド長の命令を無視した事により1か月の資格停止となる。」
はぁ?なんかこれまでの世界のトカゲの尻尾切りと同じような対応だわ。
もしかしてこれだけを言うために、皆集まってもらったのか?
俺はいつの間にか小声で笑っていた。
「イッさん、大丈夫か?」
コックスが心配する。
「えぇ、大丈夫ですよ。まぁ、組織の判断としては妥当かもしれませんね。」
「あんた、そりゃ一体どういう事だい?」
ん?炎戟のメンバーだな。誰だろう?
少し、怪訝な顔をする?
「あ、すまない。申し遅れた。あたいは炎戟のリーダーをしているミレアだ。」
思い出した。確かギルドでお互いを紹介した時、ぶっきらぼうに話をしてた女性だ。
「ミレアさん、すみません。自分は昔に組織などで働いた経験があります。例えば組織の中でリーダーと違う意見があったとします。その意見に耳を傾けるか、潰すかはリーダーの裁量に委ねられます。ミレアさんのパーティーでもこんな経験があると思います。」
「そうだ。いろいろと言い合いながら進めているぞ。」
「それが正解です。リーダーは皆の意見をまとめ、より良い方法を選択しながら活動するものです。
しかし、悪いリーダーは自分の意見に固執し、他からの意見に耳を貸しません。また、そのリーダーの意見に誰も反論しないという雰囲気を作ってしまう場合もあります。簡単に言えば、相手を威圧して屈服させるという事です。でも、リーダー個人の考えだけで突っ走るのが危うい時は、2番手、3番手にいる人が仲介に入り、懐柔策を見つけ組織のメンツを保とうとします。これを体裁を整えると言います。」
「それが何が悪いんだ!」
クーパーさんが食ってかかる。
では、最後通告をしてあげましょうかね。
「体裁を整えること、即ちごまかしです。ごまかしを繰り返せば、それが当たり前となる。
当たり前となれば、何が悪くて何が良いのか判断ができなくなる。
そして、判断ができない組織は信用が落ちます。
信用を失った組織は崩壊します。
崩壊を起こした原因を作った個人は罰せられます。
もっと大きな話に発展すれば、革命となり国が崩壊していきますよ。」
また神様にお小言言われちゃったな…。
でも、いろいろと教えてくれるから、すごく助かっている。
あ、しまった。お礼言うの忘れてた…。次に会ったらお礼言わなくちゃ。
ボーとしながら考える。
あれから2時間となれば、まだ街に戻れる時間だ。
あ、ディートリヒは何してるんだろうか?
と思いながら、少し頭の向きを変えようとするも、ハタと気づく。
頭に感じる感触が嫌に柔らかい…。
これって…。
頭の中が真っ白になった。
「ご主人様、お目覚めになられましたか。」
頭上から声がした。
右側を下に寝ていた身体を仰向けにしてみると、顔の上にディートリヒの顔がある。
あ、これ、膝枕だ…。
もう何十年もしてもらったことがないし、したこともなかったなぁ…。
少し恥ずかしくなったが、照れ隠しするようにもう一度目を閉じる。
「ディートリヒ、ありがとうね。ずっとこうしていたの?」
「いえ、ご主人様が倒された魔物を片付けておりましたので、ずっとこうしていた訳ではありません。」
「そうか…、片付けまでさせちゃったんだね。ありがとね。」
「いえ、戦闘でお役に立てないので、せめてこれくらいは…と思い…。」
「全然、そんな事ないから!」
起き上がろうとするが、ディートリヒに押さえつけられ、そのままの恰好で収まる。
「まだ、ご無理をされてはいけません。」
「ごめん。じゃぁ、もう少しだけこのままでお願いしてもいいかな? ディートリヒ、足痺れない?」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ。私もこのままの方が落ち着きます。」
「うん。で、ディートリヒは大丈夫?痛いところは無い?」
「ほんと、ご主人様はご自分の事はいつも後回しにされるんですね。」
「ははは、性分だからね。」
「私は大丈夫です。ご主人様に治癒魔法をかけていただきましたので、痛みもございません。」
「そうか、良かった。」
それから、魔物のことを聞いた。
この巣には魔石の数から逆算し、全部で64体いたようだ。
内訳は、キング1体、ロード1体、メイジ、アーチャー、ゴブリンで62体。
魔石の大きさからはキングとロードしか判別できなかったようだ。
しかも、すべての魔物が素材をドロップしている…という事はダンジョンから湧き出た魔物という事になる。
なにかアイテムもドロップされたようだが、詳しくは分からないので、キング、ロード以外のドロップ品はギルドに買い取ってもらうことにしようと思うも、不味い事に気づく。
「なぁ、ディートリヒ。」
「なんでしょう。ご主人様。」
「そういえば、自分、ギルドから追い出されたんだよな…。そうなると、買い取りとかもしてもらえないって事か?」
「おそらくは。」
「薬草採取もできなくなる?」
「薬草は採取できますが、冒険者ギルドに卸すことができません。どこか新しい買い取り口を探す必要がありますね。」
「そうか…、ごめんな。そんな事も考えずに緑の集団倒してたよ。」
「ふふふ、ご主人様らしいです。」
・
・
・
「ふー。大分良くなったよ。ディートリヒありがとね。」
「いえ、もう大丈夫なのですか?」
「うん。そろそろ出発して、街に戻って一緒に休もう。」
「はい…。」
俺は、ディートリヒの膝枕を名残惜しむも、おっさんズ理性を前面に出し帰路に就く。
道中、嫌な感覚が遠くに感じるも、こちらに気づいていないので、スルーした。
3時間ほど歩き街に到着。門まで来るとコックスが立っている。
「コックスさん、こんなところでどうしたんですか?」
「あぁ、イッさん…、あんたを待ってたんだよ。
あんたがギルドから出た後、森の方に向かったって門番から聞いたからな。」
「それはすみません。薬草採取に行ってたもので。」
「薬草採取にしては2人とも泥だらけだけど…」
あ、クリーンかけるの忘れてた。
「ははは、森で派手に転んでしまったんですよ。 お恥ずかしい限りです。」
「そうか…、それならいいんだが、あんたも齢だから気を付けなよ。」
「はい、ありがとうございます。十分気を付けます。」
「で、俺がここで待ってた理由って分かるか?」
「いえ、分かりません。」
「そうか…、ちょっと場所を変えて話すことはできるか?」
「それは大丈夫ですが、一度宿屋に戻って綺麗にしてからではダメですか?」
「あぁ、そうだったな。じゃ、2時間後に冒険者ギルドの裏手にある“シュクラット”って店に来てほしい。場所は分かるか?」
「近くに行って誰かに聞きますので大丈夫ですよ。」
「んじゃ、2時間後に。待ってるぜ。」
どんな話があるのか、おそらくはギルドの話だろう…。
まぁ、冒険者証をはく奪されても商業ギルド証があるから、何の問題もないが…。
ディートリヒと自分にクリーンをかけ、琥珀亭に戻る。
少し、部屋で今後の展開についてディートリヒと話をし、マリベルさんに今晩の夕食は不要と伝え“シュクラット”を目指す。
道中、ディートリヒにギルドとの関わり方について意見を聞くも、打開策は見つからなかった。
難なく“シュクラット”を見つけた。
店内で武具を預けつつ、店員にコックスさんに呼ばれている旨を告げると奥の個室に案内された。
「おう、待ってた。」
コックスさんは席を立ち、俺とディートリヒを席まで案内する。
席に案内されるまでの間、この場のメンバーをざっくり鑑定する。
ここに居るのは、Bクラスの“炎戟”メンバーの6名、Cクラス“風の砦”の6名と副ギルド長のクーパーさんだな…。俺たちを入れると総勢15名か…。
全員が椅子に座り俺が座るのを待っている。風の砦のメンバーはいつもの恰好だが、クーパーさんと炎戟のメンバーは身なりの良い服装だ。
俺たちも万一のために服を買っておかなくちゃいかんな…、なんて思いながら席に着く。
「こんな時間に集まってもらって、申し訳ない。」
クーパーさんが話し始める。
「今朝、みなさんに集まってもらったが、ニノマエさんが途中で退席させられたので、今一度確認のためギルドの方針を伝える。
ギルドは、ダンジョンの活性化は一時的なもので収束可能と判断。よって今後の対応については、普段通りとする。
なお、Dランク冒険者のニノマエ ハジメは、ギルド長の命令を無視した事により1か月の資格停止となる。」
はぁ?なんかこれまでの世界のトカゲの尻尾切りと同じような対応だわ。
もしかしてこれだけを言うために、皆集まってもらったのか?
俺はいつの間にか小声で笑っていた。
「イッさん、大丈夫か?」
コックスが心配する。
「えぇ、大丈夫ですよ。まぁ、組織の判断としては妥当かもしれませんね。」
「あんた、そりゃ一体どういう事だい?」
ん?炎戟のメンバーだな。誰だろう?
少し、怪訝な顔をする?
「あ、すまない。申し遅れた。あたいは炎戟のリーダーをしているミレアだ。」
思い出した。確かギルドでお互いを紹介した時、ぶっきらぼうに話をしてた女性だ。
「ミレアさん、すみません。自分は昔に組織などで働いた経験があります。例えば組織の中でリーダーと違う意見があったとします。その意見に耳を傾けるか、潰すかはリーダーの裁量に委ねられます。ミレアさんのパーティーでもこんな経験があると思います。」
「そうだ。いろいろと言い合いながら進めているぞ。」
「それが正解です。リーダーは皆の意見をまとめ、より良い方法を選択しながら活動するものです。
しかし、悪いリーダーは自分の意見に固執し、他からの意見に耳を貸しません。また、そのリーダーの意見に誰も反論しないという雰囲気を作ってしまう場合もあります。簡単に言えば、相手を威圧して屈服させるという事です。でも、リーダー個人の考えだけで突っ走るのが危うい時は、2番手、3番手にいる人が仲介に入り、懐柔策を見つけ組織のメンツを保とうとします。これを体裁を整えると言います。」
「それが何が悪いんだ!」
クーパーさんが食ってかかる。
では、最後通告をしてあげましょうかね。
「体裁を整えること、即ちごまかしです。ごまかしを繰り返せば、それが当たり前となる。
当たり前となれば、何が悪くて何が良いのか判断ができなくなる。
そして、判断ができない組織は信用が落ちます。
信用を失った組織は崩壊します。
崩壊を起こした原因を作った個人は罰せられます。
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