地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

文字の大きさ
上 下
42 / 318
第三章

3-2 ディートリヒ無双①

しおりを挟む
 ご主人様と呼ばれると何だかむず痒くなるので、できればほかの名前で呼んでほしいと懇願するも、ディートリヒは「ご主人様は、ご主人様なので。」と頑なにほかの名前で呼ばない。
なら、ディートリヒの事を「ディーちゃん」て呼ぶよ。って言ったら、赤面してモジモジし始める…。
あかん…、残念娘になりかけてる…。

「よし、この辺りで薬草を採取するから、ディートリヒは周囲に気を付けてね。」
「はい。分かりました。ご主人様。」

そんなこんながあって、俺は薬草採取に精を出す。
集中して採取できるから、薬草やいろんな種類のハーブが採れる。

1時間くらいだろうか、大方この周辺の薬草を間引くことができた。
すべてを採取してしまうと、ここでは採れなくなってしまうので、あくまでも間引くだけです。

「ディートリヒ、居る?」
「はい。ここに。」

 ディートリヒは姿を現す。

 ディートリヒさんや…、何故魔獣の血で染まっているんでしょうか?
片手に剣を持ち、返り血を浴びて薄ら笑う姿を見ると、おっさん怖くなってしまうんですが…。

「ディートリヒさん…、返り血ですごいことになってますが…。」
「はい。この辺りに居た魔物を一掃しておりました。勿論、素材もはぎ取っています。」

おう!流石にすごいです。
それじゃ、残骸を焼却しましょうか。

「それじゃ、残骸を燃やそうか。」
「はい。」

 俺たちは、比較的拓けた場所で窪地を見つけた。

「じゃぁ、ここで燃やすから残骸出してね。」
「分かりました。」





 すみません…。俺が間違ってました。
こんな小さな窪地じゃ入りません。

「ディートリヒさん…、何体倒されたんですかね?」
「えぇと、ゴブリン20体とオーク8体までは数えていましたが、後は数えていません。」

 キリっと回答されましたよ。

 数えると、緑の奴が28体、白い奴が12体、なんだかよく分からない狼みたいな奴が4体の計44体。
この数をたかが30㎝くらい窪んでいるところで燃やせるかいっ!!

 俺は創造魔法を試すことにする。
この窪んだ地をもっと掘り下げ、1mくらいの穴を掘るイメージだ。

「ディグ!」

そう掛け声をかけ念じると、おぉ!土が掘れたよ。

「ご、ご主人様、しゅごいでしゅ。」

 ディートリヒさん、思い切り噛んでますよ。

「んじゃ、ここにさっきの44体を入れて焼却しよう。」
「分かりました。」

 って、おーい!ディートリヒさん…、全部入れちゃったら、真ん中は生焼けになっちゃいますって。

「ディーさんや…」
「え、は、はい!な、何でしょうか。ご主人様」
「残骸を焼却するときは、全部を入れずに火が満遍なく回るように数体ずつ入れてね。」
「わ、分かりました。」

 ディートリヒさん、真っ赤です。ふふ、今度から注意するときはディーさんって呼んでやろう。

 数体ずつ残骸を入れながら、俺は火炎放射とターボジェットを繰り返し焼却していく。
まぁ、タンパク質が燃える匂いだから、食欲をそそるような匂いにはなるのだが、実物を知っているため食欲はそそられない。

 すべての残骸を焼却した後、穴を埋め戻すイメージで魔法をかける。

「バックフィル」

 埋まったよ…。
 別に英語で掛け声を出さなくても良かったんだが…。
何となくだよ、何となく…。

 とりあえず一連の作業を終え、ディートリヒと昼食をとる。
二人は横たわった朽木に腰かけ、フォカッチャのようなパニーノのようなものを頬張る。
イヴァンさんの手作りお弁当だ。

 ところで…、
何故こちらのパンはふっくらしていないのか。
ピザ生地に少し厚みを加えたものを食べている感じである。
粉に問題があるのか、それともこね方なのか、はたまたイースト菌が無いのか…。
 まぁ、今度ゆっくりと考えてみよう。
ラノベでもパン作りのレシピを公開してひと財産当てたとか、王様に献上したって話もあるくらいだから、何か方法があるんだろう。
まぁ、酵母が作れれば、いけるかな。

 は!いかんいかん。トリップしていた。
横を見ると、ディートリヒさんが寂しそうな目で俺を見ている。
ごめんな。

「さて、午後からの採取だけど、山の麓まで行って採取します。」
「はい。」

 お、ディートリヒさん、眼が輝いているよ。
 あ、その前に試してみたかった魔法を思い出した。
確か、クリーンとか言う魔法だ。
汚れを取ってくれる魔法だったよな。
そうすると、朝宿屋の部屋を出る時の服や身体のイメージか。

「ちょっと待ってね。『クリーン』」

 俺は即興で、ディートリヒに魔法をかけた。
結果、成功です。

「ちょ、ご主人様、いきなり魔法だなんて。」
「うん。返り血で汚かったでしょ。ごはん前にしてあげられなくてごめん。」

 そうだよ。小川で手は洗っているものの、薬草は綺麗に落ちないんだよ。それにハーブも採っているから、手が臭い…。そんな中でも飯が食えるようになるってのは、環境に順応してきたって事かも。
 なんて思いながら、二人で山の麓まで歩いていく。

 すると、イヤな感覚が襲ってくる。
あ、これは白い奴だな。

「ディートリヒ、白い奴が近くにいる。」
「え、白い奴? あぁ、オークですね。分かりました。」
「右斜め前方50mといったところか。数は5体。いけるか?」
「2体ならいけます。」
「んじゃ、俺が3体いくよ。」
「え、ご主人様は弱いんじゃなかったんですか?」
「はい。弱いですよ。でも、白い奴なら前に倒したことあるから。」

 弱いのに倒したことがあるって詭弁だわ。おそらくディートリヒは、俺が戦闘力皆無だと思っていたらしい。
俺は魔銃にマナを装填し、八つ〇き光輪を3つ出して準備する、その姿を見てディートリヒさん口を開けたまま突っ立っている。

「どうした? そろそろ相手に気づかれるよ。先手を取った方が有利だよ。」
「え、は、はい。」
 
 彼女も抜刀し準備する。

 俺は、少しの間トリップしてしまう。
 もしかして、この世界でパーティーを組めば経験値?そんな概念があるのかは知らないが、経験を共有できるかもしれない。そうすると、お互いメリットがあるな…。

 俺は、お互いが連携して動き、白い奴を倒すと経験が共有され、熟練度が増すこと、そして、連携により攻撃すれば攻撃する武器が強くなり、防具も堅くなるイメージを持ちながら念じる。

「んじゃ、行こうか!」

 一瞬、俺とディートリヒの身体に光が集まり、すぐに消えた。
成功か失敗かは、白い奴が教えてくれるだろう。

「先ずは自分が遠距離で攻撃するから、傷ついた白い奴の止めは任せた。」

さぁ、行ってみようか!
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

テイマー職のおっさんが目指す現代ライフ!

白眉
ファンタジー
異世界召喚には代償が必要。 ある時は召喚術を使った者、人柱となる者…。 とある世界の召喚は、代償にその世界の者と異世界の者を交換(トレード)する方法であった。 万年低ランクのテイマー、イサークは勇者と交換条件に異世界に行く事となった。 召喚された先でイサークが見たモノとは…。 (カクヨム様にて先行配信中)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ラスボス姫に転生したけど、ドS兄貴はシスコン設定になっていたようです

ぷりりん
ファンタジー
転生ラスボス姫がドS兄貴の溺愛に大困惑する、ラブコメファンタジー

筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果

kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。 自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。 魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...