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第二章

2-16 防具もいっとく?

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「それじゃ、今度は防具だな。」
「はい。」
 
 防具についても軽装か重装くらいの知識しか持っていない…。
それに、俺、トレンチコード羽織ってるだけの装備。
俺としては、命を守るものだから良いものを、と思うのだが、棚にずらっと並んでいる防具を見ると、何が良いものなのかがさっぱり分からない。そりゃ、金ぴかに光ったり、如何にも鎧です!というものは一見良さそうには見える。しかし、ガチャガチャと音を立てながら一緒に移動している姿を思い浮かべると、なんだ五月蠅そう…。

「自分の活動範囲は森での薬草採取がメインで、魔物や魔獣はそうそう出てこないよ。」
「そうでしゅか。では、比較的動きやしゅいものを見てみましゅ。」

 ディートリヒと店員さんとが何やら会話する。すると、店員さんは店の奥から一式の茶色い防具を持ってきた。

「彼女が言う防具の中で動きやすさを重視したものはこれでしょうかね。」

 見ると、革の鎧で胸や肩などの部分に金属板が何枚も貼ってある。

「軽量という点とスケイルメイルの良さを採り入れたものです。」

 手に取って見ると、
  革のアーマードレス:良質 自動調整 防御+1 耐熱・耐寒 と見える。
 
「動きやすいんなら問題ないか。ディートリヒ、これで良いかね?」
「はい。ご主人しゃま。一度着用したいのですが、よろしいでしょうか。」
「そうだね。店員さん、試着させてもらって良い?」

 そうお願いし、店員さんはディートリヒを試着室に連れていく。

 しばらくして、革のアーマードレスを着たディートリヒが戻ってくる。

「どうでしょうか。」

「お、おう…、すごく良いと思うよ。」

 どう見てもドレスだ…。それも革の…。どことなく格好良くて、どことなく可憐で美しい。
見惚れてしまったよ。こんな防具はこれまでの世界でもあったのか? それとも創作されたもの?。

あ、RPGゲームでこんなコスチュームがあったような…。確かいろんな素材をモンスターから剥ぎ取って防具とかを作るゲームだったような…。
この世界は神様が作ったって言っていたが、もしかすると神様はこれまでの世界でゲーマーやってたとか?

 いろんな思いが交錯し、無言となった俺を見て、ディートリヒが困惑する。

「あの…、やはり似合ってましぇんでしょうか…。」
「いや、似合う似合わないと言えば、すごく似合ってるし、綺麗だ。」

 あ、いかん。本音が出てしまった…。セクハラって言われないよな…。

「ご主人しゃま、そんな綺麗だなんて…。」

ありゃ、ディートリヒさん、そんなに顔を赤らめないでください…。

「それよりも、その防具は動きやすいの?」
「はい。軽くてとても動きやしゅいでしゅ。ただ、この革はワイバーンの革が使われているようでしゅので、値段が…。」

 お、ファンタジー世界で言う結構強い奴だ。さぞやお高いんでしょうね。
だんだん、不安になってきたよ…。お金足りるかな?

「す、素晴らしいものが取り揃えられてるんですね。さすが“風の砦”さんの行きつけの店だ。」
「え、“風の砦”さんを知っているんですか?」

 ん?食いつきが良いけど、何かあるのか?と思い、少し探りを入れてみる。

「えぇ、この間コックスさんと一緒に食事をして、その時に『もし、武器や防具が入用になれば、マルゴーさんの店に行けば良い。』って言ってたので、お邪魔させてもらった訳で。」
「ええ、コックスさんはこの店をよく利用してくれていたんです。でも、最近、皆さんお強くなられたので、うちの武器や防具じゃ、物足りないんじゃないかって…。」
「ん?物足りないって、何で?」
「あの人たちって、Cランクで、もう少しでBランクに上がるくらい実力のあるパーティーなんです。Bランクになればミスリルとかアダマンタイトとかで作った武器や鎧を着て活動されるんじゃないかって…。」

 ん?何か違うような…。
確かにファンタジー世界で言うミスリルとかアダマン何とかというものは希少な鉱物で、この世界でも高額なものなのかな。それを素材にした武具は堅くて強いってのは理解できるが、いろいろ戦闘スタイルってあるんじゃないのか?それに、キラキラしている武具が強いって訳じゃないよな。
と思いながら、この店に入ってきた時、キラキラした武具を見て、強そうだ…と思っていた自分に言いたい!あんたは無知だったんだと。

「確かに希少なものは高価なのは分かるが、付与とかついていれば買うんじゃないのか?」
「付与が付いた武具なんて、高価すぎて家では扱えませんよ。」
「え?だって、事実、このフランベルグは付与ついてますよね?」
「え??? 付与??? そんな高価なもの、うちの父ちゃんが作れる訳ないじゃないですか!」

 なんか逆切れされて怒られた。

 もしかして、ここの親父は鍛冶師?
その鍛冶師が付与をつけることはできないと言ってるだけ?
それとも、鑑定スキルが無いから、付与がないものだと思って売っていた?

「差し出がましいことだが、あなたのお父様とお話しさせていただくことはできますか?」
「え、うちのお父ちゃんと? え? え? 今日会ったばかりの人なのに『娘さんを僕にください』って言ってくれるんですか?」
「いえ…。そんな事は一切思っていません…。」

 なんか、くねくねしているぞ…。とても残念な娘さんだ…。

「お父様がイヤなら、親父さんで良い。とにかく、親父さんとお話しがしたいんです。」
「まぁ、呼んでくるだけは呼んできますよ。で、結婚の挨拶ではないんですか?」
「くどいです。 こんなおっさん相手にしないで、もっと良い人を探してください。」
「はぁ・・・。分かりましたよ。呼んでこればいいんでしょ。呼んでこれば。」

 残念な娘さんは、奥に入っていった。



 程なくして、毛むくじゃらのおっさんが奥から出てきた。

「なんじゃ、お前か?うちの娘を娶りたいって言ってるのは?」

 おい、残念娘! お前、奥に行ってからも、まだそんな事言ってたのか!!

「いえ、残念ながら違います。」
「なんじゃ、そうか。」
「そうです。」
「そうです、って事は娶るって事か?」

あぁぁ…、この親にしてこの子有りだわ…。

「娶りません!だいたい、自分のようなおっさんを相手にする人なんている訳がないですよ。」
「いえ。しょんなことはありましぇん。ご主人しゃまは素晴らしい人でしゅ。」

おいおい。ディートリヒさん…、あなたも今日出会ったばかりの人の一人ですよ…。
あなたまで残念組に入ってきてはいけません…。
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