34 / 318
第二章
2-15 武器買っとく?
しおりを挟む
ランチを終え、二人とも涙や鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をぬぐって食堂を出た。
食堂のウェイトレスさんは、俺たちを見て、どこぞのカップルがプロポーズしたのか、それとも別れ話をしていた結果がどうなったのか、とても知りたそうだった。
傍から見れば、おっさんがうら若き女性を泣かせている…、おっさんも泣いている…、完全に修羅場に見えるわな。
食堂から少し歩き、「マルゴーの店」という武具屋に到着する。
この街には武具屋も数件あるようだが、先日会ったCランク冒険者である“風の砦”のコックスさんたちが贔屓にしている店に入ることにした。
「すみません。武器と防具を買いたいんだけど…。」
「いらっしゃいませ。どういった武器をお探しですか?」
あ…ヤバい。ディートリヒがどんな得物を得意とするのか何にも聞いていなかいわ…。
「ディートリヒ、どんな得物が使えるの?」
「わたしは、これまで剣をつかっていましゅた。」
お、だいぶ聞き取りやすくなったぞ。
でも、俺、剣なんて日本刀とか、木の剣、銅の剣、鉄の剣、鋼の剣といったレベルしか知らん。
「すまん。剣のことは全く分からないから、ディートリヒが使いやすい剣を選んで。」
俺は、完全に丸投げした…。
彼女は、カウンターの後ろや棚に飾ってあるピカピカの装飾のついた剣などには目もくれず、樽の中にひとからげにして入れてある剣の方に向かう。
「えと…、もう少し良い剣でもいいんだよ。例えば、あの棚に飾ってあるようなものとか…。」
「私がちゅかえる剣ではありましぇん。ほしょみの剣があれば良いのでしゅが。」
「自分…、何も分からないから、気に入ったのがあったら教えてね。」
「はい。」
ディートリヒは、樽の中に入れてある剣をひとつずつ手に持ち、振ってみながら感触を確かめつつ品定めをしている。
少し時間がかかるようなので、店員さんに冷やかし程度に武具について聞くことにした。
すると、目を輝かせ怒涛の如くしゃべり始めた。ヤバい地雷踏んだかも…。
「そもそも武具とは…」
あ、そこからか…、こりゃ長くなりそうだ…。
聞けば、職業別に沢山の武具の種類があるとのこと。
剣士でいえば、王道は剣、槍。剣にも切る、突く・刺す、ぶっ叩くなどの用途によって違う。
片手で持つショートソード、ブロードソード、両手で持つクレイモアやツヴァイヘンダー・・・
ディートリヒといった女性が持つ剣としては、ブロードソードや、レイピア、エペ・・・
まさに昔歴史の授業で、先生が熱く語っていた中世の武器名のオンパレードだ。
さらに、武器には付与がついているものもあるらしい。
重量軽減や特性属性の付与、壊れにくくするものや切れやすくするものまであるが、付与は武器を作る最中が魔石を使用しなければ付与できないらしく、なかなか難しいらしい。
槍やモーニングスター、サーベルやファルシオンといった武器まであるとの事。
うーん。ファンタジーな世界だ。
俺も元世界ではRPGなどのゲームにハマった時期もあった。でも、飽き性だったのか、レベルリングが面倒くさかったのかは思い出せないが、途中でギブアップしてた。
それに、アクションゲームも苦手だった。波〇拳とか、ヨ〇ファイヤーなんて出せた時は「技、出たー!!」と大声で叫んだら、対戦相手に白い目で見られたもんだわ…。
アクション、RPGよりもシミュレーションだ。
遠い目をしながら、過去の思い出に浸る…。当然、店員さんの話なんぞ聞いておらず、思いっきり店員さんに小突かれた。
「ちょっとー、聞いてます?」
「ごめん、ごめん。おっさん、何も分からなくてね。トリップしてたよ。」
「トリップ? はぁ…、まぁいいですけど。 お連れさん、そろそろ決められたようですよ。」
ディートリヒの方を見ると、二つの剣を交互に振っていた。
やはり細身の剣を選んだようだ。
「ディートリヒ、決まった?」
「はい。でも、この2つのどちらが良いのかで悩んでいましゅ。」
彼女の選んだ剣は、やはり細身の剣で、店員が言うには、ひとつは鋼製のブロードソード、もう一つは刃が波々になっている…。蛇矛の剣版か? 店員に聞けば鋼製のフランベルジュだそうだ。
俺はその剣を取ってみる。
ブロードソードはずっしりと重い。フランベルジュの方が気持ち軽く感じる。フランベルジュの方が大きいような、両手剣のようにも見えるが…。
俺は両方の剣を鑑定してみる。
鋼製のブロードソードは、
鉄製のブロードソード:良質 しか頭に浮かんでこない。
一方、鋼製のフランベルジュはというと、
フランベルグ:良質 軽量化 切れ味+1 と見える。
「ディートリヒ? このフランベルグって剣はどうやって使うんだ?」
「え? あ、はい。この剣は突くよりも切ることに重きをおいていると思いましゅ。」
「刃が波型になっているんだな。」
「切り口が、すぐに治らないようにギッタギタにするんでしゅ。」
あの、ディートリッヒさん…。性格変わった?相手をギッタギタだなんて…。
「両手剣として使うって事でいいのかい?」
「いえ。この剣は片手持ちです。よくフランベルジュと混同しゃれるのでしゅが、フランベルジュは両手剣でフランベルグは片手剣です。よく、ご存じでしゅね。」
…いえ、単に鑑定で見ただけです・・・。それに店員さんもフランベルジュって言ってましたよ…。
「切り口はえげつないが、ディートリヒには、このフランベルグの方が良いように思えるけど?」
「はい。では、これでお願いしましゅ。」
ディートリヒの得物が決まった。
食堂のウェイトレスさんは、俺たちを見て、どこぞのカップルがプロポーズしたのか、それとも別れ話をしていた結果がどうなったのか、とても知りたそうだった。
傍から見れば、おっさんがうら若き女性を泣かせている…、おっさんも泣いている…、完全に修羅場に見えるわな。
食堂から少し歩き、「マルゴーの店」という武具屋に到着する。
この街には武具屋も数件あるようだが、先日会ったCランク冒険者である“風の砦”のコックスさんたちが贔屓にしている店に入ることにした。
「すみません。武器と防具を買いたいんだけど…。」
「いらっしゃいませ。どういった武器をお探しですか?」
あ…ヤバい。ディートリヒがどんな得物を得意とするのか何にも聞いていなかいわ…。
「ディートリヒ、どんな得物が使えるの?」
「わたしは、これまで剣をつかっていましゅた。」
お、だいぶ聞き取りやすくなったぞ。
でも、俺、剣なんて日本刀とか、木の剣、銅の剣、鉄の剣、鋼の剣といったレベルしか知らん。
「すまん。剣のことは全く分からないから、ディートリヒが使いやすい剣を選んで。」
俺は、完全に丸投げした…。
彼女は、カウンターの後ろや棚に飾ってあるピカピカの装飾のついた剣などには目もくれず、樽の中にひとからげにして入れてある剣の方に向かう。
「えと…、もう少し良い剣でもいいんだよ。例えば、あの棚に飾ってあるようなものとか…。」
「私がちゅかえる剣ではありましぇん。ほしょみの剣があれば良いのでしゅが。」
「自分…、何も分からないから、気に入ったのがあったら教えてね。」
「はい。」
ディートリヒは、樽の中に入れてある剣をひとつずつ手に持ち、振ってみながら感触を確かめつつ品定めをしている。
少し時間がかかるようなので、店員さんに冷やかし程度に武具について聞くことにした。
すると、目を輝かせ怒涛の如くしゃべり始めた。ヤバい地雷踏んだかも…。
「そもそも武具とは…」
あ、そこからか…、こりゃ長くなりそうだ…。
聞けば、職業別に沢山の武具の種類があるとのこと。
剣士でいえば、王道は剣、槍。剣にも切る、突く・刺す、ぶっ叩くなどの用途によって違う。
片手で持つショートソード、ブロードソード、両手で持つクレイモアやツヴァイヘンダー・・・
ディートリヒといった女性が持つ剣としては、ブロードソードや、レイピア、エペ・・・
まさに昔歴史の授業で、先生が熱く語っていた中世の武器名のオンパレードだ。
さらに、武器には付与がついているものもあるらしい。
重量軽減や特性属性の付与、壊れにくくするものや切れやすくするものまであるが、付与は武器を作る最中が魔石を使用しなければ付与できないらしく、なかなか難しいらしい。
槍やモーニングスター、サーベルやファルシオンといった武器まであるとの事。
うーん。ファンタジーな世界だ。
俺も元世界ではRPGなどのゲームにハマった時期もあった。でも、飽き性だったのか、レベルリングが面倒くさかったのかは思い出せないが、途中でギブアップしてた。
それに、アクションゲームも苦手だった。波〇拳とか、ヨ〇ファイヤーなんて出せた時は「技、出たー!!」と大声で叫んだら、対戦相手に白い目で見られたもんだわ…。
アクション、RPGよりもシミュレーションだ。
遠い目をしながら、過去の思い出に浸る…。当然、店員さんの話なんぞ聞いておらず、思いっきり店員さんに小突かれた。
「ちょっとー、聞いてます?」
「ごめん、ごめん。おっさん、何も分からなくてね。トリップしてたよ。」
「トリップ? はぁ…、まぁいいですけど。 お連れさん、そろそろ決められたようですよ。」
ディートリヒの方を見ると、二つの剣を交互に振っていた。
やはり細身の剣を選んだようだ。
「ディートリヒ、決まった?」
「はい。でも、この2つのどちらが良いのかで悩んでいましゅ。」
彼女の選んだ剣は、やはり細身の剣で、店員が言うには、ひとつは鋼製のブロードソード、もう一つは刃が波々になっている…。蛇矛の剣版か? 店員に聞けば鋼製のフランベルジュだそうだ。
俺はその剣を取ってみる。
ブロードソードはずっしりと重い。フランベルジュの方が気持ち軽く感じる。フランベルジュの方が大きいような、両手剣のようにも見えるが…。
俺は両方の剣を鑑定してみる。
鋼製のブロードソードは、
鉄製のブロードソード:良質 しか頭に浮かんでこない。
一方、鋼製のフランベルジュはというと、
フランベルグ:良質 軽量化 切れ味+1 と見える。
「ディートリヒ? このフランベルグって剣はどうやって使うんだ?」
「え? あ、はい。この剣は突くよりも切ることに重きをおいていると思いましゅ。」
「刃が波型になっているんだな。」
「切り口が、すぐに治らないようにギッタギタにするんでしゅ。」
あの、ディートリッヒさん…。性格変わった?相手をギッタギタだなんて…。
「両手剣として使うって事でいいのかい?」
「いえ。この剣は片手持ちです。よくフランベルジュと混同しゃれるのでしゅが、フランベルジュは両手剣でフランベルグは片手剣です。よく、ご存じでしゅね。」
…いえ、単に鑑定で見ただけです・・・。それに店員さんもフランベルジュって言ってましたよ…。
「切り口はえげつないが、ディートリヒには、このフランベルグの方が良いように思えるけど?」
「はい。では、これでお願いしましゅ。」
ディートリヒの得物が決まった。
0
お気に入りに追加
187
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
チョロイン2人がオイルマッサージ店でNTR快楽堕ちするまで【完結】
白金犬
ファンタジー
幼馴染同士パーティーを組んで冒険者として生計を立てている2人、シルフィとアステリアは王都でのクエストに一区切りをつけたところだった。
故郷の村へ馬車が出るまで王都に滞在する彼女らは、今流行りのオイルマッサージ店の無料チケットを偶然手に入れる。
好奇心旺盛なシルフィは物珍しさから、故郷に恋人が待っているアステリアは彼のためにも綺麗になりたいという乙女心からそのマッサージ店へ向かうことに。
しかしそこで待っていたのは、真面目な冒険者2人を快楽を貪る雌へと変貌させる、甘くてドロドロとした淫猥な施術だった。
シルフィとアステリアは故郷に戻ることも忘れてーー
★登場人物紹介★
・シルフィ
ファイターとして前衛を支える元気っ子。
元気活発で天真爛漫なその性格で相棒のアステリアを引っ張っていく。
特定の相手がいたことはないが、人知れず恋に恋い焦がれている。
・アステリア(アスティ)
ヒーラーとして前衛で戦うシルフィを支える少女。
真面目で誠実。優しい性格で、誰に対しても物腰が柔らかい。
シルフィと他にもう1人いる幼馴染が恋人で、故郷の村で待っている。
・イケメン施術師
大人気オイルマッサージ店の受付兼施術師。
腕の良さとその甘いマスクから女性客のリピート必至である。
アステリアの最初の施術を担当。
・肥満施術師
大人気オイルマッサージ店の知らざれる裏の施術師。
見た目が醜悪で女性には生理的に受け付けられないような容姿のためか表に出てくることはないが、彼の施術を受けたことがある女性客のリピート指名率は90%を超えるという。
シルフィの最初の施術を担当。
・アルバード
シルフィ、アステリアの幼馴染。
アステリアの恋人で、故郷の村で彼女らを待っている。
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる