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第二章

2-15 武器買っとく?

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 ランチを終え、二人とも涙や鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をぬぐって食堂を出た。

 食堂のウェイトレスさんは、俺たちを見て、どこぞのカップルがプロポーズしたのか、それとも別れ話をしていた結果がどうなったのか、とても知りたそうだった。
傍から見れば、おっさんがうら若き女性を泣かせている…、おっさんも泣いている…、完全に修羅場に見えるわな。

 食堂から少し歩き、「マルゴーの店」という武具屋に到着する。
この街には武具屋も数件あるようだが、先日会ったCランク冒険者である“風の砦”のコックスさんたちが贔屓にしている店に入ることにした。

「すみません。武器と防具を買いたいんだけど…。」
「いらっしゃいませ。どういった武器をお探しですか?」

 あ…ヤバい。ディートリヒがどんな得物を得意とするのか何にも聞いていなかいわ…。

「ディートリヒ、どんな得物が使えるの?」
「わたしは、これまで剣をつかっていましゅた。」

お、だいぶ聞き取りやすくなったぞ。
でも、俺、剣なんて日本刀とか、木の剣、銅の剣、鉄の剣、鋼の剣といったレベルしか知らん。

「すまん。剣のことは全く分からないから、ディートリヒが使いやすい剣を選んで。」

 俺は、完全に丸投げした…。

 彼女は、カウンターの後ろや棚に飾ってあるピカピカの装飾のついた剣などには目もくれず、樽の中にひとからげにして入れてある剣の方に向かう。

「えと…、もう少し良い剣でもいいんだよ。例えば、あの棚に飾ってあるようなものとか…。」
「私がちゅかえる剣ではありましぇん。ほしょみの剣があれば良いのでしゅが。」
「自分…、何も分からないから、気に入ったのがあったら教えてね。」
「はい。」

 ディートリヒは、樽の中に入れてある剣をひとつずつ手に持ち、振ってみながら感触を確かめつつ品定めをしている。
 少し時間がかかるようなので、店員さんに冷やかし程度に武具について聞くことにした。
 すると、目を輝かせ怒涛の如くしゃべり始めた。ヤバい地雷踏んだかも…。

「そもそも武具とは…」

あ、そこからか…、こりゃ長くなりそうだ…。
聞けば、職業別に沢山の武具の種類があるとのこと。
剣士でいえば、王道は剣、槍。剣にも切る、突く・刺す、ぶっ叩くなどの用途によって違う。
片手で持つショートソード、ブロードソード、両手で持つクレイモアやツヴァイヘンダー・・・
ディートリヒといった女性が持つ剣としては、ブロードソードや、レイピア、エペ・・・
まさに昔歴史の授業で、先生が熱く語っていた中世の武器名のオンパレードだ。
さらに、武器には付与がついているものもあるらしい。
重量軽減や特性属性の付与、壊れにくくするものや切れやすくするものまであるが、付与は武器を作る最中が魔石を使用しなければ付与できないらしく、なかなか難しいらしい。

槍やモーニングスター、サーベルやファルシオンといった武器まであるとの事。
うーん。ファンタジーな世界だ。

俺も元世界ではRPGなどのゲームにハマった時期もあった。でも、飽き性だったのか、レベルリングが面倒くさかったのかは思い出せないが、途中でギブアップしてた。

それに、アクションゲームも苦手だった。波〇拳とか、ヨ〇ファイヤーなんて出せた時は「技、出たー!!」と大声で叫んだら、対戦相手に白い目で見られたもんだわ…。
 アクション、RPGよりもシミュレーションだ。

 遠い目をしながら、過去の思い出に浸る…。当然、店員さんの話なんぞ聞いておらず、思いっきり店員さんに小突かれた。

「ちょっとー、聞いてます?」
「ごめん、ごめん。おっさん、何も分からなくてね。トリップしてたよ。」
「トリップ? はぁ…、まぁいいですけど。 お連れさん、そろそろ決められたようですよ。」

 ディートリヒの方を見ると、二つの剣を交互に振っていた。
やはり細身の剣を選んだようだ。

「ディートリヒ、決まった?」
「はい。でも、この2つのどちらが良いのかで悩んでいましゅ。」

 彼女の選んだ剣は、やはり細身の剣で、店員が言うには、ひとつは鋼製のブロードソード、もう一つは刃が波々になっている…。蛇矛の剣版か? 店員に聞けば鋼製のフランベルジュだそうだ。

 俺はその剣を取ってみる。
ブロードソードはずっしりと重い。フランベルジュの方が気持ち軽く感じる。フランベルジュの方が大きいような、両手剣のようにも見えるが…。

 俺は両方の剣を鑑定してみる。
鋼製のブロードソードは、
 鉄製のブロードソード:良質 しか頭に浮かんでこない。
一方、鋼製のフランベルジュはというと、
 フランベルグ:良質 軽量化 切れ味+1 と見える。

「ディートリヒ? このフランベルグって剣はどうやって使うんだ?」
「え? あ、はい。この剣は突くよりも切ることに重きをおいていると思いましゅ。」
「刃が波型になっているんだな。」
「切り口が、すぐに治らないようにギッタギタにするんでしゅ。」

 あの、ディートリッヒさん…。性格変わった?相手をギッタギタだなんて…。

「両手剣として使うって事でいいのかい?」
「いえ。この剣は片手持ちです。よくフランベルジュと混同しゃれるのでしゅが、フランベルジュは両手剣でフランベルグは片手剣です。よく、ご存じでしゅね。」

 …いえ、単に鑑定で見ただけです・・・。それに店員さんもフランベルジュって言ってましたよ…。

「切り口はえげつないが、ディートリヒには、このフランベルグの方が良いように思えるけど?」
「はい。では、これでお願いしましゅ。」

 ディートリヒの得物が決まった。
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