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第二章
2-8 奴隷は買いませんよ②
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一般的に奴隷と呼ばれる者は、大別して2種類あるそうだ。
先ずは犯罪を犯したことで奴隷になった者を犯罪奴隷。次に、例えば店や家が倒産、破産したり、毎年の税が払えなかった時、対価を支払う代償として奴隷に落ちた者を借金奴隷と言ったり、冒険者と一緒にダンジョンなどに入り戦闘を行う者を戦闘奴隷…、あとは貴族などの夜伽や褥を務める者、労働する者など総称して一般奴隷と言っているようだ。
また、一般奴隷は購入した際の金額と同等もしくは同額を支払われたとみなされた場合、奴隷から解放される。
簡単に言えば、金貨1枚で所有した奴隷は、労働などの対価により所有者に金貨1枚の所得を与えることができれば解放される事となる。
奴隷は所有者を死傷させる事はご法度で、それ以外の業務は、双方の合意の上で契約される事、契約を結ぶ際、奴隷に紋様を刻むこと(紋様の位置は所有者が決める)、必要最低限の生活を送らせることなどの義務があるようだ。(この話はトーレスから聞いていたので再確認できた。)
「カルムさん、詳細に教えてくださってありがとうございました。」
俺はお礼を言う。
「いえいえ、構いませんよ。どうせなら、当店が所有している奴隷を見ていきませんか?」
「カルムさんも忙しいと思うので、今日はこれで失礼させていただきます。それに奴隷を買うかも決めていないので…。」
俺は独り言ちするも、見るだけはタダですからと、カルムさんは俺の背中を押しながら、奥の部屋へと移動した。
そこにはソファが1セットがあり、その反対側には床に対し30㎝くらい高くなったステージのような台がある。
「この台に奴隷を並んでもらい品定めをしていただきます。主に奴隷の健康状態などを直接見て会話をし、購入するかを検討されております。実際にニノマエ様は戦闘に重きを置いた奴隷という事でしたので、差し出がましいとは思いましたが、当方で選別してみました。」
さも俺が購入することを前提に話を進めていく。
ゼッタイカワナイゾ…オカネナイ。
そう自分に言い聞かせステージというか、お立ち台を見る。
「先ずは男の戦闘奴隷です。」
上半身裸で腰布だけを付けたマッチョな奴隷5人が舞台袖から登場し整列する。
もう確定です。僕にはそんな趣味はありません…。
ここで踊りだすなら、フル・モンティか…。と元世界で観たことのある映画を思い出すも、これから長い期間、男と一緒に暮らしていくむさ苦しさと自分もおっさんであるとの認識から、男性はご遠慮申し上げた。
次に女性5人がお立ち台に整列する。
あ、今度は上半身裸ではないのね・・・と一人残念がる。
彼女たちの中には獣人も混じっているようで、丈の短いぶかぶかのタンクトップのようなものを、下は提灯ブルマのような、かぼちゃパンツ?を着用している。
こんな格好をさせることはセクハラではないのか?と尋ねると、「セクハラ?なにかのお腹が気になるんですか?」と言われた。
確かに俺はおっさんだよ。腹もぶよぶよだよ…。と自爆する。
それに、皆さん俺が憧れるシックスパッドですよ…。素晴らしいですよ…、でも顔が怖いんです…。泣けてきました。
「私には、到底無理です…。」
と、土下座でもしたくなるような気分で声を絞り出す。
「ははは。最初に購入される方は、必ずそんな感じになりますね。それに、ニノマエ様は正直だ。あからさまに男性ではいかん!というオーラを発せられておられましたぞ。」
カルムさん…笑っている。
確かに俺はおっさんではある。が、女性は大好きだぞ。50過ぎても女性が好き!って大きな声で言いたいが、そんな事したら捕まるよな…。元世界では女性との接点なんか皆無であり、キャバクラなんてのも付き合い以外で行ったことがない。そもそも酒が飲めないんだから、キャバクラに行って酒飲んで…という衝動にも駆られないが。それでも、何度も言うぞ。女性は大好きだ!
なんだか、完全なる自己否定を宣告され、敗北感を漂わせながら立ち去ろうと思ったが、ふと気になったことがあり、カルムさんに尋ねる。
「そういえば、普通の奴隷とかもいるんですよね?」
「はい。おりますよ。ご覧になられますか?」
「お立ち台に立ってもらうのは目のやり場に困るので勘弁してもらいたいです。それよりも、彼女たちが生活しているところを見せてもらうことは可能ですか?」
少し怪訝そうな顔をしながら、カルムは答える。
「ニノマエ様たってのお願いであれば、むげに断ることもできませんね。どうぞ、こちらへ。」
何やら少し笑ったような顔で俺の前を歩いていく。
あら?これって、“手の内を見せてあげるから、こちらの要求を飲んでもらうぞ”なんてアドバンテージを与えちゃったか?と思いながら、カルムさんに先導され、廊下を歩いていくと別棟に案内された。
「この棟で、奴隷が生活しております。奴隷には朝夜の2回食事を与えていますが、ニノマエ様が想像するような豪勢な食事を与えている訳ではありません。先ほども申したとおり、これらは当社の商品です。あくまでも生きていくために必要なものだけを与えた上で商品として扱っております。」
確かにその通りだ。ここに商品となる奴隷が何人居るかは知らないが、彼らをすべて食わせていくだけの必要経費が必要だ。食事だってそうだ。一日一人銅貨5枚かかれば50人いれば250枚、一日2万5千円もかかる。そりゃ、必要経費は抑えるに越したことはない。
「カルムさんのおっしゃる意味は良く分かりますよ。生き物を扱う場合は、それだけ経費がかさみますからね。」
「おぉ!ニノマエ様は商才がおありになりますな。そうなんですよ。凡人は売ったお金がすべて利益になると考えるのですが、それは間違いなのです。
商品にはそれを維持していた経費や、交渉や当社で働いている職員へ支払う給金を差し引いた金額が売上になる訳です。勿論、代金にはそれなりの経費を含めてはおりますが、それだけではやってはいけません。まあ。ざっくり言えばそんな感じですが。ふふふ、そうですか…。流石、ニノマエ様。。。トーレスが目を付けるだけの方ですな。」
何やらぶつぶつと独り言ちし、カルム・ワールドに入ってく。
先ずは犯罪を犯したことで奴隷になった者を犯罪奴隷。次に、例えば店や家が倒産、破産したり、毎年の税が払えなかった時、対価を支払う代償として奴隷に落ちた者を借金奴隷と言ったり、冒険者と一緒にダンジョンなどに入り戦闘を行う者を戦闘奴隷…、あとは貴族などの夜伽や褥を務める者、労働する者など総称して一般奴隷と言っているようだ。
また、一般奴隷は購入した際の金額と同等もしくは同額を支払われたとみなされた場合、奴隷から解放される。
簡単に言えば、金貨1枚で所有した奴隷は、労働などの対価により所有者に金貨1枚の所得を与えることができれば解放される事となる。
奴隷は所有者を死傷させる事はご法度で、それ以外の業務は、双方の合意の上で契約される事、契約を結ぶ際、奴隷に紋様を刻むこと(紋様の位置は所有者が決める)、必要最低限の生活を送らせることなどの義務があるようだ。(この話はトーレスから聞いていたので再確認できた。)
「カルムさん、詳細に教えてくださってありがとうございました。」
俺はお礼を言う。
「いえいえ、構いませんよ。どうせなら、当店が所有している奴隷を見ていきませんか?」
「カルムさんも忙しいと思うので、今日はこれで失礼させていただきます。それに奴隷を買うかも決めていないので…。」
俺は独り言ちするも、見るだけはタダですからと、カルムさんは俺の背中を押しながら、奥の部屋へと移動した。
そこにはソファが1セットがあり、その反対側には床に対し30㎝くらい高くなったステージのような台がある。
「この台に奴隷を並んでもらい品定めをしていただきます。主に奴隷の健康状態などを直接見て会話をし、購入するかを検討されております。実際にニノマエ様は戦闘に重きを置いた奴隷という事でしたので、差し出がましいとは思いましたが、当方で選別してみました。」
さも俺が購入することを前提に話を進めていく。
ゼッタイカワナイゾ…オカネナイ。
そう自分に言い聞かせステージというか、お立ち台を見る。
「先ずは男の戦闘奴隷です。」
上半身裸で腰布だけを付けたマッチョな奴隷5人が舞台袖から登場し整列する。
もう確定です。僕にはそんな趣味はありません…。
ここで踊りだすなら、フル・モンティか…。と元世界で観たことのある映画を思い出すも、これから長い期間、男と一緒に暮らしていくむさ苦しさと自分もおっさんであるとの認識から、男性はご遠慮申し上げた。
次に女性5人がお立ち台に整列する。
あ、今度は上半身裸ではないのね・・・と一人残念がる。
彼女たちの中には獣人も混じっているようで、丈の短いぶかぶかのタンクトップのようなものを、下は提灯ブルマのような、かぼちゃパンツ?を着用している。
こんな格好をさせることはセクハラではないのか?と尋ねると、「セクハラ?なにかのお腹が気になるんですか?」と言われた。
確かに俺はおっさんだよ。腹もぶよぶよだよ…。と自爆する。
それに、皆さん俺が憧れるシックスパッドですよ…。素晴らしいですよ…、でも顔が怖いんです…。泣けてきました。
「私には、到底無理です…。」
と、土下座でもしたくなるような気分で声を絞り出す。
「ははは。最初に購入される方は、必ずそんな感じになりますね。それに、ニノマエ様は正直だ。あからさまに男性ではいかん!というオーラを発せられておられましたぞ。」
カルムさん…笑っている。
確かに俺はおっさんではある。が、女性は大好きだぞ。50過ぎても女性が好き!って大きな声で言いたいが、そんな事したら捕まるよな…。元世界では女性との接点なんか皆無であり、キャバクラなんてのも付き合い以外で行ったことがない。そもそも酒が飲めないんだから、キャバクラに行って酒飲んで…という衝動にも駆られないが。それでも、何度も言うぞ。女性は大好きだ!
なんだか、完全なる自己否定を宣告され、敗北感を漂わせながら立ち去ろうと思ったが、ふと気になったことがあり、カルムさんに尋ねる。
「そういえば、普通の奴隷とかもいるんですよね?」
「はい。おりますよ。ご覧になられますか?」
「お立ち台に立ってもらうのは目のやり場に困るので勘弁してもらいたいです。それよりも、彼女たちが生活しているところを見せてもらうことは可能ですか?」
少し怪訝そうな顔をしながら、カルムは答える。
「ニノマエ様たってのお願いであれば、むげに断ることもできませんね。どうぞ、こちらへ。」
何やら少し笑ったような顔で俺の前を歩いていく。
あら?これって、“手の内を見せてあげるから、こちらの要求を飲んでもらうぞ”なんてアドバンテージを与えちゃったか?と思いながら、カルムさんに先導され、廊下を歩いていくと別棟に案内された。
「この棟で、奴隷が生活しております。奴隷には朝夜の2回食事を与えていますが、ニノマエ様が想像するような豪勢な食事を与えている訳ではありません。先ほども申したとおり、これらは当社の商品です。あくまでも生きていくために必要なものだけを与えた上で商品として扱っております。」
確かにその通りだ。ここに商品となる奴隷が何人居るかは知らないが、彼らをすべて食わせていくだけの必要経費が必要だ。食事だってそうだ。一日一人銅貨5枚かかれば50人いれば250枚、一日2万5千円もかかる。そりゃ、必要経費は抑えるに越したことはない。
「カルムさんのおっしゃる意味は良く分かりますよ。生き物を扱う場合は、それだけ経費がかさみますからね。」
「おぉ!ニノマエ様は商才がおありになりますな。そうなんですよ。凡人は売ったお金がすべて利益になると考えるのですが、それは間違いなのです。
商品にはそれを維持していた経費や、交渉や当社で働いている職員へ支払う給金を差し引いた金額が売上になる訳です。勿論、代金にはそれなりの経費を含めてはおりますが、それだけではやってはいけません。まあ。ざっくり言えばそんな感じですが。ふふふ、そうですか…。流石、ニノマエ様。。。トーレスが目を付けるだけの方ですな。」
何やらぶつぶつと独り言ちし、カルム・ワールドに入ってく。
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