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第1話 召喚と交換?
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「…、仕方なかろう…。」
大賢者と呼ばれる爺様が溜息まじりに独り言ちする。
何故、俺はここに居るのだろうか…。
いつもの通り、清掃依頼の報告をした冒険者ギルドで、いきなり受付の女性から声をかけられ、ギルド長の部屋へ拉致られた俺は、道すがらギルド長から支離滅裂な説明を受け、そのまま大神殿に連れてこられる羽目になった。
ギルド長の説明を整理すると、
○魔王が誕生し、この国に攻めてくる。
○魔法を倒すことができるのは勇者しかいない。
○勇者は異世界から召喚される。
うん。ここまでは理解できる。
だが、次の言葉がひっかかる。
〇異世界から勇者を召喚するには、向こうに送る人物が必要。
つまり、人身御供としてヒトを差し出せという事のようだが、何故俺が神殿に行かなければならないのか…。
もしかして、俺が人身御供となるのか?
イヤイヤ…、どう見ても俺はテイマーとしての冒険者稼業もそろそろ終わりを告げるおっさんだぞ。
それが勇者の身代わりとして人身御供となるのか?人身御供と言えば、うら若き女性や純粋無垢な子と相場は決まっているはずだが…。
「イサークよ。この国を、この世界を守るために御身を授けてほしい。」
神殿に着き、奥の広間に通された俺が最初に聞いた最初の言葉だった。
広間の中央には何やら変な紋が描かれており、その周囲にフードを被ったヒトが数人いる。多分魔導師だろうな。
その奥に爺さんが一人立ち、俺を見ている。
「現状が理解できないんですが、何故、俺がここに?」
「お主がこの世界を守るために選ばれたのだ。」
「は?
40のおっさんが、勇者を召喚する身代わりの人身御供になり得るんですか?」
「一刻をあらそうのじゃ、仕方なかろう…。」
まぁ、どうせ独り身ですよ。
俺が居なくても誰も悲しまないですよ…。
どうせ、そんな事を考えてギルドも俺を選んだんだろう。
「で、俺にどうせいと?」
「勇者をこちらに召喚する代わりに、お主が向こうに行ってもらう。
つまり、交換条件じゃ。」
へぇ。異世界から勇者を召喚するには、こちらからもヒトを出す、つまりバーターという事か…。
どうせ、万年Cランクの冒険者で、そろそろ引退して隠居生活を送る身。
そんな無害な人物を送ることが最良と判断した訳か…。
向こうの世界がどんな世界なのかは知らないが、まぁ、この世界を守るのが俺一人でできるって事なら、仕方ないか…。
「まぁ、そんな事だとは思っていたが…。仕方ないんだろ。
俺一人の身で、この世界が守られるのであれば冒険者冥利に尽きるってもんだ。」
「すまん。イサークよ。
一刻の猶予も無いので、このまま儀式を執り行っても良いか。」
「って、少しぐらい準備ってものがあるだろ、って、そんな猶予もないのか…。
分かったよ。じゃギルド長、俺が借りてた家の精算と俺の持ち物は売り払ってくれ。
あ、あと老後に貯えておいた金は孤児院に寄付して欲しい。」
「あぁ。分かった。すまない。
だが、魔王が討伐された暁には、イサークも帰還できる可能性があるから、金についてはギルドで預かっておくことにするが…。」
「まぁ、それが何年先になるのか分からんが、任せるよ。
それと、受付のお姉ちゃんには、世話になったと伝えておいてくれ。」
まぁ、遺言ではないが、取り合えずの話は終わった。
「んじゃ、いいぜ。爺さん。いつでもやってくれ。」
そう言うな否や、魔導師らが一斉に呪文を唱え始めた。
俺は紋の中央に立ち、どんな世界に行かせられるのか、老後の資金っていくらぐらいあったんだろうかと考えていた瞬間、周囲が光り、意識が遠くなった。
***
**
*
「で、ここは一体どこなんだ?」
気づくと、胸あたりの高さの石柱が整然と立っている場所だった。
地面はというと、石畳で舗装されていて濡れている。
空は…、青空だ。虹が出ているって事は雨が降った後か…。
ここはダンジョン内なのか、誰も居ない。
ダンジョンであればヤバいことになる。
腰に付けていた短刀をまさぐるが無い…。
「こりゃ、魔物に出会ったら即死だな。
しかし、こんな所に送られるとは…。」
石柱の前には花が置いてある。
香草を燃やしたような匂いがする。
ここは魔物の気配も無いことから、安全なのだろう。
少し整理するため、腰を落ち着ける。
しかし、暑いな…。
なんだ、この蒸し暑さは。汗がしたたり落ちてくる。
汗をぬぐいながら、空を見上げる。
「ちょ、ちょと待て…、ドラゴンがいるのか?」
はるか上空に十字のような形をしたものが見える。
凄い高さで飛んでいるんだろう。銀色のドラゴンだ…。
遅れて、大きな音が聞こえてきた。
「あいつの鳴き声か…。
しかし、デカいな…。古龍に匹敵するくらいの大きさなんだろうな…。」
視界を地上に戻すと、ふと石柱の前にある緑色の入れ物に目を奪われる。
「何だ。これはガラスか?」
手に取ってみると、下はガラスのようで、上部に白っぽいものがくっついている。
白っぽいものを取ると、蓋がある。
状態からネジだと分かり、左右に回すと蓋が開いた。
「飲めるのか?」
少し、唇につけてみると、ヒリヒリする感触がある。
「お、酒か。こりゃありがたい。」
瓶口から酒を飲む、喉元が焼けるような強い酒だ。
「こりゃ強い酒だな。ドワーフ殺しくらいか…。」
しばらく、酒を飲みながら今後の事を考えていると、突然背後から声が聞こえて来た。
「jioajfiueufwecu8ew8woiixrooeix888?」
声が聞こえた方を振り返ると、白い服のようなローブのような服を着て、グレーの四角い布が前についている。妙ちくりんな出で立ちだ。
「ん?何をしゃべってるんだ?」
刹那、頭の中に抑揚のない声が聞こえた。
『言語理解を習得しました。』
は?
言語理解ってなんだ?と思い、頭が真っ白になるが、次々と情報が頭の中に流れてくる。
「こんな暑い中、外におられると熱中症になりますよ。それにお供え物に手を出してはいけませんよ。」
聴覚からの情報に合わせ、視覚からも情報が次々に入って来る。
『佐藤家之墓、鈴木家之墓…、』
なんだ、ここは?
それに、何故、突然こんな事になったんだ…。
頭の中に入って来る情報に追い付かず、ぶっ倒れた…。
***
**
*
「…、あ、目を覚まされましたか。大丈夫ですか?」
「あ…、すまない…。何かよく分からなくて…。」
「そうですか。
では、もう少し安静になさってください。お話しは落ち着いてからの方が良いでしょう。」
「ありがとう。
でも、すこしだけ質問させてほしいんだけど、良いだろうか。」
「えぇ、構いませんよ。」
堅い板の間に寝かせられ、頭に冷たい布が乗せられている。
寝ている横に、スキンヘッドのおっさんが心配そうに見ている。
「ここは一体どこだろう。」
「ええと…、ここは渋山区の城円寺です。」
「渋山区?じょうえんじ?」
「渋山区というのは、西京都の中にある行政区で、その区内に城円寺があるという事です。」
「じょうえんじというのは、ダンジョンなのか?」
「ダンジョンというのは、ファンタジーで言うところのダンジョンですか?」
「いや、良くは分からないが、魔物とかが出るところだが。」
「では、ダンジョンではございませんね。
もしかすると、霊が出ることもあるとは思いますが。
あ、冗談ですよ。
城円寺というのはお寺のことで、お亡くなりになられた方のご遺体やご遺骨を埋葬する墓がある場所で、私どもはその場所を管理しているという事でしょうかね…。」
「ここは墓地であり、そなたはその墓地を管理する神官という事になるのかい。」
「まぁ、神官というよりは僧侶でしょうね。」
「僧侶と神官は違う?」
「それを説明するには長い時間がかかりますね。」
「そうですか…。すまない。」
「いえいえ。では、あなたは何故あの場所におられたのですか?見たところ、外国人のように見えますが、流暢に日本語をしゃべられるということは、日本に住んで長いんでしょうか?」
「日本とは?」
「この国の名前です。」
「そうか…。何故この場所に来たのかは分からない。それにどうやって…。
あぁ、少しずつ思い出してきたよ。
俺は、勇者が召喚されるかわりに、こちらの世界にやってきたイサークだ。」
「へ??勇者?召喚?
そんなファンタジーな事があるんですね。」
「何故かそうなっているという事…。かな…。
召喚は成功したのだろうか…。」
「それは分かりませんが…。
少しお疲れのようですね。イサークさんですか…。もう少しお休みになられた方が良いと思います。」
「ありがとうございます。
では、お言葉に甘えて、休ませてもらいます。」
スキンヘッドのおっさんは部屋を出て行った。
もう少し整理が必要だが、召喚が体力を消耗するらしい…、眠気が襲い、深い眠りに入って行った。
大賢者と呼ばれる爺様が溜息まじりに独り言ちする。
何故、俺はここに居るのだろうか…。
いつもの通り、清掃依頼の報告をした冒険者ギルドで、いきなり受付の女性から声をかけられ、ギルド長の部屋へ拉致られた俺は、道すがらギルド長から支離滅裂な説明を受け、そのまま大神殿に連れてこられる羽目になった。
ギルド長の説明を整理すると、
○魔王が誕生し、この国に攻めてくる。
○魔法を倒すことができるのは勇者しかいない。
○勇者は異世界から召喚される。
うん。ここまでは理解できる。
だが、次の言葉がひっかかる。
〇異世界から勇者を召喚するには、向こうに送る人物が必要。
つまり、人身御供としてヒトを差し出せという事のようだが、何故俺が神殿に行かなければならないのか…。
もしかして、俺が人身御供となるのか?
イヤイヤ…、どう見ても俺はテイマーとしての冒険者稼業もそろそろ終わりを告げるおっさんだぞ。
それが勇者の身代わりとして人身御供となるのか?人身御供と言えば、うら若き女性や純粋無垢な子と相場は決まっているはずだが…。
「イサークよ。この国を、この世界を守るために御身を授けてほしい。」
神殿に着き、奥の広間に通された俺が最初に聞いた最初の言葉だった。
広間の中央には何やら変な紋が描かれており、その周囲にフードを被ったヒトが数人いる。多分魔導師だろうな。
その奥に爺さんが一人立ち、俺を見ている。
「現状が理解できないんですが、何故、俺がここに?」
「お主がこの世界を守るために選ばれたのだ。」
「は?
40のおっさんが、勇者を召喚する身代わりの人身御供になり得るんですか?」
「一刻をあらそうのじゃ、仕方なかろう…。」
まぁ、どうせ独り身ですよ。
俺が居なくても誰も悲しまないですよ…。
どうせ、そんな事を考えてギルドも俺を選んだんだろう。
「で、俺にどうせいと?」
「勇者をこちらに召喚する代わりに、お主が向こうに行ってもらう。
つまり、交換条件じゃ。」
へぇ。異世界から勇者を召喚するには、こちらからもヒトを出す、つまりバーターという事か…。
どうせ、万年Cランクの冒険者で、そろそろ引退して隠居生活を送る身。
そんな無害な人物を送ることが最良と判断した訳か…。
向こうの世界がどんな世界なのかは知らないが、まぁ、この世界を守るのが俺一人でできるって事なら、仕方ないか…。
「まぁ、そんな事だとは思っていたが…。仕方ないんだろ。
俺一人の身で、この世界が守られるのであれば冒険者冥利に尽きるってもんだ。」
「すまん。イサークよ。
一刻の猶予も無いので、このまま儀式を執り行っても良いか。」
「って、少しぐらい準備ってものがあるだろ、って、そんな猶予もないのか…。
分かったよ。じゃギルド長、俺が借りてた家の精算と俺の持ち物は売り払ってくれ。
あ、あと老後に貯えておいた金は孤児院に寄付して欲しい。」
「あぁ。分かった。すまない。
だが、魔王が討伐された暁には、イサークも帰還できる可能性があるから、金についてはギルドで預かっておくことにするが…。」
「まぁ、それが何年先になるのか分からんが、任せるよ。
それと、受付のお姉ちゃんには、世話になったと伝えておいてくれ。」
まぁ、遺言ではないが、取り合えずの話は終わった。
「んじゃ、いいぜ。爺さん。いつでもやってくれ。」
そう言うな否や、魔導師らが一斉に呪文を唱え始めた。
俺は紋の中央に立ち、どんな世界に行かせられるのか、老後の資金っていくらぐらいあったんだろうかと考えていた瞬間、周囲が光り、意識が遠くなった。
***
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「で、ここは一体どこなんだ?」
気づくと、胸あたりの高さの石柱が整然と立っている場所だった。
地面はというと、石畳で舗装されていて濡れている。
空は…、青空だ。虹が出ているって事は雨が降った後か…。
ここはダンジョン内なのか、誰も居ない。
ダンジョンであればヤバいことになる。
腰に付けていた短刀をまさぐるが無い…。
「こりゃ、魔物に出会ったら即死だな。
しかし、こんな所に送られるとは…。」
石柱の前には花が置いてある。
香草を燃やしたような匂いがする。
ここは魔物の気配も無いことから、安全なのだろう。
少し整理するため、腰を落ち着ける。
しかし、暑いな…。
なんだ、この蒸し暑さは。汗がしたたり落ちてくる。
汗をぬぐいながら、空を見上げる。
「ちょ、ちょと待て…、ドラゴンがいるのか?」
はるか上空に十字のような形をしたものが見える。
凄い高さで飛んでいるんだろう。銀色のドラゴンだ…。
遅れて、大きな音が聞こえてきた。
「あいつの鳴き声か…。
しかし、デカいな…。古龍に匹敵するくらいの大きさなんだろうな…。」
視界を地上に戻すと、ふと石柱の前にある緑色の入れ物に目を奪われる。
「何だ。これはガラスか?」
手に取ってみると、下はガラスのようで、上部に白っぽいものがくっついている。
白っぽいものを取ると、蓋がある。
状態からネジだと分かり、左右に回すと蓋が開いた。
「飲めるのか?」
少し、唇につけてみると、ヒリヒリする感触がある。
「お、酒か。こりゃありがたい。」
瓶口から酒を飲む、喉元が焼けるような強い酒だ。
「こりゃ強い酒だな。ドワーフ殺しくらいか…。」
しばらく、酒を飲みながら今後の事を考えていると、突然背後から声が聞こえて来た。
「jioajfiueufwecu8ew8woiixrooeix888?」
声が聞こえた方を振り返ると、白い服のようなローブのような服を着て、グレーの四角い布が前についている。妙ちくりんな出で立ちだ。
「ん?何をしゃべってるんだ?」
刹那、頭の中に抑揚のない声が聞こえた。
『言語理解を習得しました。』
は?
言語理解ってなんだ?と思い、頭が真っ白になるが、次々と情報が頭の中に流れてくる。
「こんな暑い中、外におられると熱中症になりますよ。それにお供え物に手を出してはいけませんよ。」
聴覚からの情報に合わせ、視覚からも情報が次々に入って来る。
『佐藤家之墓、鈴木家之墓…、』
なんだ、ここは?
それに、何故、突然こんな事になったんだ…。
頭の中に入って来る情報に追い付かず、ぶっ倒れた…。
***
**
*
「…、あ、目を覚まされましたか。大丈夫ですか?」
「あ…、すまない…。何かよく分からなくて…。」
「そうですか。
では、もう少し安静になさってください。お話しは落ち着いてからの方が良いでしょう。」
「ありがとう。
でも、すこしだけ質問させてほしいんだけど、良いだろうか。」
「えぇ、構いませんよ。」
堅い板の間に寝かせられ、頭に冷たい布が乗せられている。
寝ている横に、スキンヘッドのおっさんが心配そうに見ている。
「ここは一体どこだろう。」
「ええと…、ここは渋山区の城円寺です。」
「渋山区?じょうえんじ?」
「渋山区というのは、西京都の中にある行政区で、その区内に城円寺があるという事です。」
「じょうえんじというのは、ダンジョンなのか?」
「ダンジョンというのは、ファンタジーで言うところのダンジョンですか?」
「いや、良くは分からないが、魔物とかが出るところだが。」
「では、ダンジョンではございませんね。
もしかすると、霊が出ることもあるとは思いますが。
あ、冗談ですよ。
城円寺というのはお寺のことで、お亡くなりになられた方のご遺体やご遺骨を埋葬する墓がある場所で、私どもはその場所を管理しているという事でしょうかね…。」
「ここは墓地であり、そなたはその墓地を管理する神官という事になるのかい。」
「まぁ、神官というよりは僧侶でしょうね。」
「僧侶と神官は違う?」
「それを説明するには長い時間がかかりますね。」
「そうですか…。すまない。」
「いえいえ。では、あなたは何故あの場所におられたのですか?見たところ、外国人のように見えますが、流暢に日本語をしゃべられるということは、日本に住んで長いんでしょうか?」
「日本とは?」
「この国の名前です。」
「そうか…。何故この場所に来たのかは分からない。それにどうやって…。
あぁ、少しずつ思い出してきたよ。
俺は、勇者が召喚されるかわりに、こちらの世界にやってきたイサークだ。」
「へ??勇者?召喚?
そんなファンタジーな事があるんですね。」
「何故かそうなっているという事…。かな…。
召喚は成功したのだろうか…。」
「それは分かりませんが…。
少しお疲れのようですね。イサークさんですか…。もう少しお休みになられた方が良いと思います。」
「ありがとうございます。
では、お言葉に甘えて、休ませてもらいます。」
スキンヘッドのおっさんは部屋を出て行った。
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