愛されlordは愛を知らない

サリー

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1,始まり

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 「リンネ様、そろそろ終わらないと晩餐に間に合いませんよ。」
「・・・わかった、もうすぐ。」
「少しですよ?」
そう言って軽くため息をつくのは護衛の1人、ジュンである。私は昔、悪者にさらわれかけた事がある。それ以来常に護衛が1人、必ずついている。基本私は、常に読書をしているのであまり護衛と話さない。1人以外は。
おっと、紹介が遅れた。私の名前はリンネ。漢字では「燐音」と書く。あまり女らしくないとよく言われるが、まあ、どうでもいいし、意味がないわけではないので別にいい。気にするだけ無駄というものだ。
「何やってるんですか、早く行きますよ。」
「あー、はいはい。」
もうそんな時間か。
「遅れたらまた怒られますよ。」
うっ。そ、それはイヤだ。
「あ、ほら着きましたよ。ギリギリ間に合ったようですね。じゃ、俺はこれで。次に代わるんで。」
そう言ってさっさとどこかへ行ってしまった。台風みたいだよ。まったく忙しい人だな。っと、そんなことより早く部屋に入らないと。怒られちゃうからね。時間、作法、何から何まで叩き込まれた。正直、面倒くさいし細かいので嫌になる。だが、それもまたあちらの事情なので仕方がない。
「いただきます。」
晩餐の時、私の護衛はいなくなる。と言っても部屋の外にいるだけなのだが。お父様とお母様の護衛がいるからである。
お父様は国王、お母様は妃。その間に生まれたのが私。王女という微妙な立場にいながら1日の全てを読書と睡眠に費やしている。 さて、食事も終わったので雑談もここら辺にしておこう。
「ごちそうさまでした。」
「燐音。」
席を離れようとしていたところをお父様に呼び止められた。
「はい。」
「お前にカイト王子から手紙が来ているから、お返しを書きなさい。」
「はい。」
「ああ。ちゃんと書くんだぞ。何せ未来の旦那様、国王だからなあ。あっはっはっは!」
高笑いが始まったところで私はお風呂に向かう。扉を開けるとそこには真緒がいた。
「お嬢。今日少し遅かったですね。」
「うん。ちょっとね・・・。」
真緒は私の護衛で、晩餐後から。護衛は順番、交代で私の護衛にあたってくれている。だからいつも扉を開ければ、そこに立っている。真緒とはよく喋る。さっきのジュンは、話しかけてくるので相手になっている。ただ、一番よく喋るのは真緒だけだと思う。あと、何故か真緒は私のことを「お嬢」と呼ぶ。
「行きますよ。お嬢、またお風呂でも本読む気でしょう?」
「う、何で分かった?」
「お嬢のことですから。」
ハハハ、と笑って、お嬢分かりやすいですねえと一言。私も苦笑い。
「俺、お嬢のことなら何でも分かりますよ。」
ふっ、と急に真剣な眼差しでそう言った。え、と思うのと同時に一瞬、ドキリと胸が鳴った気がしたのは気のせいではないだろう。
「はい、じゃあ俺ここで待ってるんで。」
「あ、うん。」
この、謎の感情?を持ったまま、この今日という1日が終わったのだった。
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