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番外編:小さな魔王様の小さな日常
小さな魔王様の小さな拘り
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「時に魔王様。」
「なんじゃ、ケイト。」
執務室での仕事に一段落し、部屋の中央の応接用の長椅子に腰掛け、クッキーとお茶で休憩している魔王ミルスに、自分の分のカップと茶菓子を載せたお盆を持ってきたケイトが、問いかけた。
「魔王様のその言葉遣いだけど。」
「余の言葉遣いがどうかしたかの。」
魔王は紅茶を一口すすった。
「どうしてそんな年寄りみたい話し方なの?」
「けほけほ」
魔王はむせた。
「魔王様は見た目はまだ十代前半の子供でしょ。別に、そんな言葉遣いしなくてもいいよね。」
「…その、魔王としての威厳というかじゃの、そういうアレじゃ。」
「でも、王国でケイトと出会った時は、普通の女の子の喋り方だったよ?」
「…う、うむ、そうじゃったかの。…そ、それに、そう、あの時は、お忍びであったからの、それでじゃろ。」
「ふーん…。」
ケイトは紅茶を一口すすった。
「ねえ、三千年前の人ってみんなそういう喋り方だったの?」
「ごふっ」
魔王は再びむせた。
「魔王様も、三千年前はそういう喋り方してたの?」
「…い、いや、三千年前は普通の喋り方じゃった…」
「じゃぁなんでその喋り方に拘ってるの、魔王様?」
「うむぅ…」
「ミ・リ・シ・ア・ちゃん?」
「え、えぇー…」
魔王はミリシアモード(?)に移行した。
「…ケイトに秘密にされるのは、ちょぉーっとさぁみしぃなぁー。」
「…ちょ、勘弁してよ、ケイト」
ここで執務室の扉がノックされた。
これ幸いに魔王はミルスモード(?)に戻った。
「なんじゃ。」
「ただいま、聖国から、法王猊下とマリア姫が」
と、扉を開けて入って来た執事が言った時、扉が勢いよく開けられ、一人の少女が駆け込んで来た。
「ミルスー、いつまでも来ぬから、妾の方から遊びに来てやったのじゃー!」
「おお、マリアではないか、久しいの。」
「何をとぼけておるのじゃー!どうせ妾との約束を忘れておったのじゃろー!」
「忘れてはおらぬ、忘れてはおらぬぞ、姫。」
まだ十歳にも届かない可愛い少女が、部屋に駆け込んでくるなり、魔王に抱きついた。戸口には、執事の隣に申し訳なさそうな顔で聖国の法王が立ち尽くしている。
あまりの急展開に、ケイトは唖然とした。
「魔王様、この子だれ?」
「妾の名は、マリアじゃー!妾の父上は聖国の法王なのじゃー!」
少女が答えた。
「え、『妾』?『なのじゃ』?」
「ケイトよ、そこは深く追求してくれるな。」
少女の髪を優しく撫でながら、魔王様は答えた。
「ミルスー!ちゃんと妾の言いつけを守っておるじゃろうなー!」
「余と姫の約束ゆえな、ちゃんと守っておるぞよ。」
「ミルスは偉いのじゃー!」
「そうかの、余は偉いかの。」
「…ねぇ、つまりどういう事?」
混乱したケイトの疑問に答えたのは、法王だった。
「それはですね、姫と魔王様の二人は、威厳ある話し方と言いますか、そういう言葉遣いを普段からするという遊び…約束をしているのです。」
「そういう事なのじゃー!」「そういう事じゃ、ケイト。」
「…。はい???」
「なんじゃ、ケイト。」
執務室での仕事に一段落し、部屋の中央の応接用の長椅子に腰掛け、クッキーとお茶で休憩している魔王ミルスに、自分の分のカップと茶菓子を載せたお盆を持ってきたケイトが、問いかけた。
「魔王様のその言葉遣いだけど。」
「余の言葉遣いがどうかしたかの。」
魔王は紅茶を一口すすった。
「どうしてそんな年寄りみたい話し方なの?」
「けほけほ」
魔王はむせた。
「魔王様は見た目はまだ十代前半の子供でしょ。別に、そんな言葉遣いしなくてもいいよね。」
「…その、魔王としての威厳というかじゃの、そういうアレじゃ。」
「でも、王国でケイトと出会った時は、普通の女の子の喋り方だったよ?」
「…う、うむ、そうじゃったかの。…そ、それに、そう、あの時は、お忍びであったからの、それでじゃろ。」
「ふーん…。」
ケイトは紅茶を一口すすった。
「ねえ、三千年前の人ってみんなそういう喋り方だったの?」
「ごふっ」
魔王は再びむせた。
「魔王様も、三千年前はそういう喋り方してたの?」
「…い、いや、三千年前は普通の喋り方じゃった…」
「じゃぁなんでその喋り方に拘ってるの、魔王様?」
「うむぅ…」
「ミ・リ・シ・ア・ちゃん?」
「え、えぇー…」
魔王はミリシアモード(?)に移行した。
「…ケイトに秘密にされるのは、ちょぉーっとさぁみしぃなぁー。」
「…ちょ、勘弁してよ、ケイト」
ここで執務室の扉がノックされた。
これ幸いに魔王はミルスモード(?)に戻った。
「なんじゃ。」
「ただいま、聖国から、法王猊下とマリア姫が」
と、扉を開けて入って来た執事が言った時、扉が勢いよく開けられ、一人の少女が駆け込んで来た。
「ミルスー、いつまでも来ぬから、妾の方から遊びに来てやったのじゃー!」
「おお、マリアではないか、久しいの。」
「何をとぼけておるのじゃー!どうせ妾との約束を忘れておったのじゃろー!」
「忘れてはおらぬ、忘れてはおらぬぞ、姫。」
まだ十歳にも届かない可愛い少女が、部屋に駆け込んでくるなり、魔王に抱きついた。戸口には、執事の隣に申し訳なさそうな顔で聖国の法王が立ち尽くしている。
あまりの急展開に、ケイトは唖然とした。
「魔王様、この子だれ?」
「妾の名は、マリアじゃー!妾の父上は聖国の法王なのじゃー!」
少女が答えた。
「え、『妾』?『なのじゃ』?」
「ケイトよ、そこは深く追求してくれるな。」
少女の髪を優しく撫でながら、魔王様は答えた。
「ミルスー!ちゃんと妾の言いつけを守っておるじゃろうなー!」
「余と姫の約束ゆえな、ちゃんと守っておるぞよ。」
「ミルスは偉いのじゃー!」
「そうかの、余は偉いかの。」
「…ねぇ、つまりどういう事?」
混乱したケイトの疑問に答えたのは、法王だった。
「それはですね、姫と魔王様の二人は、威厳ある話し方と言いますか、そういう言葉遣いを普段からするという遊び…約束をしているのです。」
「そういう事なのじゃー!」「そういう事じゃ、ケイト。」
「…。はい???」
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