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番外編:小さな魔王様の小さな日常
小さな魔王様の小さな疑問
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「のう、アーネスト。」
「はい、陛下。」
魔王ミルスが、それに付き従う二人の側近とともに城内の広い廊下を移動している時、ふと疑問を感じた魔王は、側近の一人、ケンタウロスのアーネストに質問を投げ掛けた。
「余がこうして廊下を歩いている時、すれ違う者共がみな床に跪くのは、なにゆえじゃろうか。」
そう言っている最中にも、両手に荷物を抱えて廊下の先から歩いてきた一人の魔人が魔王の姿を捉えると、すぐさま廊下の脇に寄って跪いた。魔王はすれ違いざまにその者の労を小声で軽く労った。魔王は話を続けた。
「ほらの、あれでは仕事にも支障があるのではないか。」
「それはその、つまり、陛下に最大限の敬意を表しているのですよ。」
「ふむ、なるほどの。」
魔王は一応納得してみせ、アーネストは少しほっとした表情を見せた。しかし、魔王の追求は終わらなかった。
「じゃが、王国を訪問した時の入城パレードでは、沿道に居った者共は誰も跪いておらなんだぞ。」
「さ、左様でございましたかな…」
「そうじゃよ。」
「それはまた、王国の民というものは、礼儀がなっておりませぬな、ははは」
「待て、アーネスト、あの折は王国民に混じり、魔人も多くおったではないか。」
「え…」
アーネストの心中に冷や汗が流れた。
「余の姿を見て頭を垂れておったのを良く覚えておるぞ。」
「い、いやさすが、我らが魔族の民。遠き地にて暮らせど、礼儀を弁えてございますなあ。」
「ねえ、アーネスト、さっきからなんか言葉遣いが変だよ?」
「ケイトは少し黙っていてください。」
もう一人の側近、魔人のケイトがアーネストをからかった。
「じゃがなアーネスト、あの折に跪いたものは一人とておらなんだよ。」
と、魔王は話を続けた。
「どうじゃ、余に敬意を示すだけであれば、何もわざわざ跪かずとも、辞儀なり会釈なりで充分であろう。」
「それは、そうなのですが…その…」
「なんじゃ、何か言いづらそうじゃな。」
「小さいからだね!」
魔王の問いかけにアーネストが言い淀んでいると、ケイトが元気よく割り込んだ。
「小さいとな。ケイト、何が小さいのじゃ。」
「魔王様が小さいからだね!」
「…話が見えんのじゃが。」
「陛下、それはですね…」
アーネストが割って入った。
「陛下もご存じの通り、魔人は一般に大柄なものですが、生憎、陛下は成人前のミリシア殿にご降臨なされました。」
「いかにも。」
「その影響で陛下のお体の成長は著しく遅れております。」
「う、うむ、そうじゃな。確かに、母上も父上も、余より背が高いしの。」
「ですので、民は、お辞儀をしても会釈をしても、陛下を上から見下ろす事になってしまうのでございます。」
「…つまり、余の背の低さに民は合わせておると、余が民を見上げずに済むように。」
「左様でございます。」
「そういうことだね!」
「なんと、余の背の低さが原因とな…」
真実を知ってしまった魔王は、一瞬口ごもった。
「い、いや待てアーネスト、では何ゆえ、王国のパレードでは誰も跪かなかったのじゃ。」
「陛下はあの折、王城までどのように向かわれたか、覚えておいでですか?」
魔王は少し考えてから答えた。
「ふむ、確か余はバイコーンに騎乗しておったな。…な、なるほど!」
と言って、魔王は手を打った。
「ならば、城内でバイコーンに乗れば良いではないか。さすれば万事解決」
「それはおやめ下さい!」「それはよそうよ!」
「はい、陛下。」
魔王ミルスが、それに付き従う二人の側近とともに城内の広い廊下を移動している時、ふと疑問を感じた魔王は、側近の一人、ケンタウロスのアーネストに質問を投げ掛けた。
「余がこうして廊下を歩いている時、すれ違う者共がみな床に跪くのは、なにゆえじゃろうか。」
そう言っている最中にも、両手に荷物を抱えて廊下の先から歩いてきた一人の魔人が魔王の姿を捉えると、すぐさま廊下の脇に寄って跪いた。魔王はすれ違いざまにその者の労を小声で軽く労った。魔王は話を続けた。
「ほらの、あれでは仕事にも支障があるのではないか。」
「それはその、つまり、陛下に最大限の敬意を表しているのですよ。」
「ふむ、なるほどの。」
魔王は一応納得してみせ、アーネストは少しほっとした表情を見せた。しかし、魔王の追求は終わらなかった。
「じゃが、王国を訪問した時の入城パレードでは、沿道に居った者共は誰も跪いておらなんだぞ。」
「さ、左様でございましたかな…」
「そうじゃよ。」
「それはまた、王国の民というものは、礼儀がなっておりませぬな、ははは」
「待て、アーネスト、あの折は王国民に混じり、魔人も多くおったではないか。」
「え…」
アーネストの心中に冷や汗が流れた。
「余の姿を見て頭を垂れておったのを良く覚えておるぞ。」
「い、いやさすが、我らが魔族の民。遠き地にて暮らせど、礼儀を弁えてございますなあ。」
「ねえ、アーネスト、さっきからなんか言葉遣いが変だよ?」
「ケイトは少し黙っていてください。」
もう一人の側近、魔人のケイトがアーネストをからかった。
「じゃがなアーネスト、あの折に跪いたものは一人とておらなんだよ。」
と、魔王は話を続けた。
「どうじゃ、余に敬意を示すだけであれば、何もわざわざ跪かずとも、辞儀なり会釈なりで充分であろう。」
「それは、そうなのですが…その…」
「なんじゃ、何か言いづらそうじゃな。」
「小さいからだね!」
魔王の問いかけにアーネストが言い淀んでいると、ケイトが元気よく割り込んだ。
「小さいとな。ケイト、何が小さいのじゃ。」
「魔王様が小さいからだね!」
「…話が見えんのじゃが。」
「陛下、それはですね…」
アーネストが割って入った。
「陛下もご存じの通り、魔人は一般に大柄なものですが、生憎、陛下は成人前のミリシア殿にご降臨なされました。」
「いかにも。」
「その影響で陛下のお体の成長は著しく遅れております。」
「う、うむ、そうじゃな。確かに、母上も父上も、余より背が高いしの。」
「ですので、民は、お辞儀をしても会釈をしても、陛下を上から見下ろす事になってしまうのでございます。」
「…つまり、余の背の低さに民は合わせておると、余が民を見上げずに済むように。」
「左様でございます。」
「そういうことだね!」
「なんと、余の背の低さが原因とな…」
真実を知ってしまった魔王は、一瞬口ごもった。
「い、いや待てアーネスト、では何ゆえ、王国のパレードでは誰も跪かなかったのじゃ。」
「陛下はあの折、王城までどのように向かわれたか、覚えておいでですか?」
魔王は少し考えてから答えた。
「ふむ、確か余はバイコーンに騎乗しておったな。…な、なるほど!」
と言って、魔王は手を打った。
「ならば、城内でバイコーンに乗れば良いではないか。さすれば万事解決」
「それはおやめ下さい!」「それはよそうよ!」
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