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朝。
ベッドの中で目が覚めた俺は、ひとつ伸びをしようと両腕を布団から出そうとした。
が、片方の腕が何かに掴まれている事に気付いた。
空いた方の手で布団をはいでみると、そこには小学校高学年くらいの可愛い女の子が、俺の腕にしがみついて眠っていた。
「…。おい、兄貴。起きて。」
「…う~ん。あ、おはよう、お兄ちゃん。」
「何が『お兄ちゃん』だよ、もう。勝手に人のベッドに潜り込んで…。」
「だって、お兄ちゃん。こういうの好きでしょ?」
「何でもいいから起きてよ、ほら。あーあ、着たまま女の子になるから、パジャマがだぶだぶじゃん!」
俺の名前はアマキユウキ、十四歳。そして、今俺のベッドに潜り込んで眠っていた女の子は、兄のアマキサクラ、十七歳だ。…決して妹ではない。
俺に急かされて、ベッドからもぞもぞと這い出たサクラは、カーテンの引かれた窓に向かい、片方の腕を上に、もう片方を頭の後ろに回して、うーんと言いながら、可愛く伸びをした。だぶだぶのパジャマがずり落ちそうで、はらはらする。
憎たらしい事に、やっぱ可愛いな、妹は。ああ、こんな妹が本当にいたら良かったのにな。
だが、今のサクラは本当の意味での妹ではない。今の姿は兄貴が変身した姿なのだ。サクラには、六歳年下の異性に変身する事ができる謎の能力がある。その能力をつかって、俺をからかっているのだ。
「ユウキをからかってるわけじゃないよ。今日はお兄ちゃんに甘えたい気分なの。」
リビングで、既に食卓に着席している両親の向かいに二人で座り、俺がサクラの愚痴を言ったら、サクラがそんな事を言った。
「だってさ、ユウキはいつも俺に甘えてくるじゃん。ずるいよな、弟だからって。だから、今日はその仕返しだよ。…というわけだから、今日はサクラの事、よろしくね、お兄ちゃん。」
と言いながら、小首を傾げて下からちょっと上目使いで覗き込むようにお願いされた。
可愛いな、くそ。俺はそういうのが好きなわけじゃないが、弱いのだ。
「ところでサクラ、着るものはどうするの?」
と母のアマキイオリがサクラに聞いた。
「サクラの子供の時の服がまだあるよね、お母さん。」
「でも男の子が着る服じゃないの。」
「ああ、それならお姉ちゃんの子供の時の服があるわよ、イオリさん。」
と言ったのは、もう一人の母、アマキカオルだ。
「可愛いと思ってお姉ちゃんに買ってあげたんだけど、一度も着てくれなかったのよね。もったいないと思ってちゃんととっておいてあるのよ。サクラ、あなた着てくれないかしら。」
「いいよ、ママ。楽しみにしてるね。」
ちなみに、うちでは二人の母を、イオリの方を「お母さん」、カオルの方を「ママ」と呼んで区別している。
ちなみに、サクラはお母さんの産んだ子で、俺はママから産まれた。
「なんか、俺をさしおいて勝手に話が進んでるの、酷くない?」
「いいじゃないの、ユウキ。たまにはお兄ちゃんとしてサクラを甘やかしてあげなさいよ。」
「そうよ、それにユウキは可愛い妹が欲しかったんでしょ?」
「そ、そうだけど。」
「じゃ、この話はおしまい。食事にしましょうね。それじゃ、カオルさん、サクラの服を用意してもらえるかしら。」
ベッドの中で目が覚めた俺は、ひとつ伸びをしようと両腕を布団から出そうとした。
が、片方の腕が何かに掴まれている事に気付いた。
空いた方の手で布団をはいでみると、そこには小学校高学年くらいの可愛い女の子が、俺の腕にしがみついて眠っていた。
「…。おい、兄貴。起きて。」
「…う~ん。あ、おはよう、お兄ちゃん。」
「何が『お兄ちゃん』だよ、もう。勝手に人のベッドに潜り込んで…。」
「だって、お兄ちゃん。こういうの好きでしょ?」
「何でもいいから起きてよ、ほら。あーあ、着たまま女の子になるから、パジャマがだぶだぶじゃん!」
俺の名前はアマキユウキ、十四歳。そして、今俺のベッドに潜り込んで眠っていた女の子は、兄のアマキサクラ、十七歳だ。…決して妹ではない。
俺に急かされて、ベッドからもぞもぞと這い出たサクラは、カーテンの引かれた窓に向かい、片方の腕を上に、もう片方を頭の後ろに回して、うーんと言いながら、可愛く伸びをした。だぶだぶのパジャマがずり落ちそうで、はらはらする。
憎たらしい事に、やっぱ可愛いな、妹は。ああ、こんな妹が本当にいたら良かったのにな。
だが、今のサクラは本当の意味での妹ではない。今の姿は兄貴が変身した姿なのだ。サクラには、六歳年下の異性に変身する事ができる謎の能力がある。その能力をつかって、俺をからかっているのだ。
「ユウキをからかってるわけじゃないよ。今日はお兄ちゃんに甘えたい気分なの。」
リビングで、既に食卓に着席している両親の向かいに二人で座り、俺がサクラの愚痴を言ったら、サクラがそんな事を言った。
「だってさ、ユウキはいつも俺に甘えてくるじゃん。ずるいよな、弟だからって。だから、今日はその仕返しだよ。…というわけだから、今日はサクラの事、よろしくね、お兄ちゃん。」
と言いながら、小首を傾げて下からちょっと上目使いで覗き込むようにお願いされた。
可愛いな、くそ。俺はそういうのが好きなわけじゃないが、弱いのだ。
「ところでサクラ、着るものはどうするの?」
と母のアマキイオリがサクラに聞いた。
「サクラの子供の時の服がまだあるよね、お母さん。」
「でも男の子が着る服じゃないの。」
「ああ、それならお姉ちゃんの子供の時の服があるわよ、イオリさん。」
と言ったのは、もう一人の母、アマキカオルだ。
「可愛いと思ってお姉ちゃんに買ってあげたんだけど、一度も着てくれなかったのよね。もったいないと思ってちゃんととっておいてあるのよ。サクラ、あなた着てくれないかしら。」
「いいよ、ママ。楽しみにしてるね。」
ちなみに、うちでは二人の母を、イオリの方を「お母さん」、カオルの方を「ママ」と呼んで区別している。
ちなみに、サクラはお母さんの産んだ子で、俺はママから産まれた。
「なんか、俺をさしおいて勝手に話が進んでるの、酷くない?」
「いいじゃないの、ユウキ。たまにはお兄ちゃんとしてサクラを甘やかしてあげなさいよ。」
「そうよ、それにユウキは可愛い妹が欲しかったんでしょ?」
「そ、そうだけど。」
「じゃ、この話はおしまい。食事にしましょうね。それじゃ、カオルさん、サクラの服を用意してもらえるかしら。」
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