【R18】ユーテリアにさいわいを！

ゲーム：前日譚

１６：ロドス

「ディックがいなくなって、お前達二人だけにしておくのは心許ない。カーラ、この際、俺たち三人で暮らさないか。」

　やっぱり、そういう話か。

「わかったわ、ロドス。私たち一緒に暮らしましょう。」

　カーラは相変わらず棒読みだな。どうしちゃったの？

　それと、一緒に暮らすだけで、結婚はしないのか。

「ユーテリア、お前もそれでいいよな。」

「そうよ、ユッティ、三人で一緒に暮らしましょうね。」

　有無を言わさない感じで同意を求めてきたな。

　ゲームではここで断ったり逃げたりする選択肢もあるが、監禁されたり、魔物や野党に襲われたりするので、ここでは穏便に、

「…うん、仕方ないね。いいよ。」

　と、同意しておいた。


　何故か、カーラと結婚せずにロドスが一緒に暮らす事になった一方で、日々急激にお腹が大きくなったカーラは、あっという間もなく臨月を迎え、赤ん坊を一人出産した。

　なんとその子は魔物の子チェンジリングだった。

　うーん、何となく読めて来たぞ。

　その子も、何を食ってるのか、あれよあれよと大きくなり、数ヶ月後には私の身長を超えていた。ちなみに、カーラがその子のために作った食事をこっそり味見したら、かつて初めてカーラに食わされた飯と同じ味がした…。よくあんな不味いもの食えるな…つか、どうやったらあんな味になるのか、想像したくない…。

　私よりあとから生まれた義兄の誕生である。ゲームではロドス…継父の連れ子だったはずだ。一体何が起こっているのだろうか。

　しかし、それはすぐに解明された。ある時、私が、暇つぶしに継父の髪の毛を一本引っこ抜いて擬陰まらもどきにセットした時だ。本来なら、ロドスの男性器が再現されるはずなのに、実際には何も起きなかったのだ…。

　擬陰は、生き物の性器を忠実に再現する魔道具である。もし、セットされたものが、例えば魔物の体組織だったなら、その魔物の性器が再現されるはずである…性器があれば。
　もし生き物の体組織をセットしても何も起きない場合、その生き物には性器がないと言える。

　だが、ロドスのフルヌードも、ロドスとカーラが交わるところも度々見ている私からすれば、ロドスに性器がないはずはなかった。

　なら、可能性はただ一つ。ロドスは模倣獣ミミックだ。


　ミミックは、他の生き物の外見と記憶を模倣する魔物だ。

　性別も特別な生殖器もなく、生き物の魔力を餌にして体の一部を分離して繁殖する。体の内部は模倣しないため、例えば解剖しても、中は粘土のように均質で、臓器などは一切ない。食べ物も、体内に入ったらそのまま直接消化される。呼吸の真似事はするし言葉も話すが、肺がないので、本当に呼吸しているわけではない。

　そして、カーラのように、生き物の雌がミミックと交わり、ミミックの体の一部が雌の胎内に入ると、母胎となっている生き物の行動や記憶が操作され、以前のカーラのように記憶が曖昧になってミミックに精神を支配されてしまうのである。淫獣ほどメジャーではないが、危険な魔物である。


　ロドスがいつミミックと入れ替わったのかは定かではない。ひょっとすると、ずっと前からかもしれないし、わりと最近かもしれない。

　ただはっきりしている事は、今や私たちは、ゲームと同じく、継父、継母、義兄、私、という四人家族になったという事だ。

　この四人が揃えば、前日譚で最初に遭遇する鬼畜な儀式が待っているのだ…。