犬獣人転生(仮)

kuro-yo

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(みゃ)

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「本当ですってば。心拍も脳波も止まっていたんですっ!」

「そんな事、あるわけないだろう!いいかげんな事を言ってごまかすな!」

 私が廊下を歩いていると、白衣を着た鼠獣人の研究者と、背広に身を包んだ猿獣人の上役が言い争っているのが聞こえて来た。興味をひかれた私は、二人の側へ近づいていった。

「君たち、何かあったのかね。」

「きょ、局長さん…」「…局長。」

 鼠獣人は恐縮して一歩退がった。猿獣人は得意満面で背筋を伸ばして襟を正して私を見た。

「局長、今、彼と先だって行方不明になったライカ号の話をしていたところです。」

「何か気になる事でもあるのかね?」

「彼が言うには、」

 と猿獣人は鼠獣人をきっと睨み付け、言葉を続けた。

「ライカ号との通信が途切れる寸前、ライカ飛行士は生きていたと主張するのです。」

「ライカ号にトラブルが発生し、ライカ飛行士の心停止を確認した、と私は報告を受けているが。」

 私は、話の先を続けようとする猿獣人を遮り、鼠獣人の方を見やり、どういう事か説明するよう促した。

「ライカ号の飛行中、ライカ飛行士の心拍・脳波・呼吸の状態は、地上から常時モニターし、記録していました。ライカー号との通信が途切れる前、ライカー飛行士にはそれまで全く異常がなかったのに、まるで発作でも起こったかのように、呼吸も心拍も乱れ始め、最後は脳波も含め、全て無反応となりました。もちろん、ライカー飛行士にそのような既往症はありませんでした。」

「うむ、私もそう聞いている。」

「それが、あらためて記録を詳細に見直したところ、ライカー号の通信が遮断される数秒前に、脳波も心拍も復活してる事を示すデータが見つかったんです!」

「ふむ…」

 それが事実なら、確かに不思議な事だ。

 私が少し考え込むと、猿獣人が話を続けた。

「局長。もし彼が言うようにライカー飛行士が生きていたのなら、ライカー飛行士が死亡したとするデータの方が誤報なのでしょう。」

「そんな筈はありません。何度も計算しなおしましたが、記録されたデータに不審な点はありません!間違いなくライカー飛行士は、一度は死亡していたんです!」

 鼠獣人が割って入った。それに猿獣人は鼠獣人を睨み付けて言った。

「ならばライカー飛行士が生きているはずもないじゃないか!それとも、貴様は死人が生き返ったとでも言うのか!」

「落ち着き給え、君たち。」

「は、はい…失礼いたしました」「…お見苦しいところをお見せし申し訳ありません。」

「この件は一旦、私が預かろう。再調査の必要があれば、追って沙汰をする。」

 と二人に言い渡し、それから鼠獣人を見て言った。

「君は、この件で必要となるデータをまとめておいてくれ給え。」

「はい、局長さん。」

 そして私は鼠獣人が足早に研究室に戻って行くのを眺めつつ、その場を後にした。

「ふん、狼獣人め…」

 廊下の角をまがる瞬間、そんな呟き声が聞こえた気がした。

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