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中古のパソコンを買った。
デスクトップ型で、なかなかにいい買い物をしたと思う。
値段のわりにソフトも充実し、全てが高性能だ。
ところがある日仕事から戻ると、なぜかパソコンが立ち上がっていた。
パソコンとモニターとスピーカーの三つの電源が、全てオンになっていたのだ。
昨日の夜に全て切ったはずだし、今朝も切れていたというのに。
俺の部屋は狭いワンルームだ。
部屋に居ればパソコンは嫌でも目に入る。
――おかしいなあ……。
しかしパソコンがひとりでに立ち上がるわけがない。
切ったつもりになっていたのかもしれない。
俺はそう考えることにした。
しかしそれから数日後に、家に帰るとパソコンがまたひとりでに立ち上がった。
しかもモニター画面いっぱいに、赤い何かが映し出されている。
――手?
いくつもの血のように真っ赤な手形。
俺にはそう見えた。
さすがに気味が悪くなったが、どうすればいいかは思いつかず、結局その日は電源を切っただけだった。
しばらくは何もなかったが、ある日夕食を食べていると、俺の目の前でパソコンが勝手に立ち上がった。
そして前と同じくモニターには幾つもの赤い手形。
だがそれだけではない。
なにかがかすかに聞こえる。
最初はよくわからなかった。
しかし突然音量が大きくなり、それがなにかわかった。
人の声。
それもひどく苦しそうにうめく男の声だった。
――えっ!
俺は思わずパソコンから退いた。
そのままパソコンを見つめていると、玄関のチャイムが鳴った。
俺はパソコンから逃げるように玄関に行き、戸を開けた。
そこには二人の見知らぬ男が立っていた。
男の一人が俺の名前を聞き、そしてなにかを見せた。
警察手帳だった。
どうやら刑事のようだ。
――なに?
わけがわからないまま刑事を見ていると、刑事が言った。
「聞きたいことがあるんですが。あなた最近、隣町のショップで中古のパソコンを買いませんでしたか?」
「ええ、買いましたけど」
「実は一ヶ月ほど前に強盗殺人がありましてね。その強盗が売った被害者のパソコンをあなたが買ったみたいなので、ちょっと見せてもらえませんか」
刑事はそういうと、俺の部屋を覗き込んだ。
終
デスクトップ型で、なかなかにいい買い物をしたと思う。
値段のわりにソフトも充実し、全てが高性能だ。
ところがある日仕事から戻ると、なぜかパソコンが立ち上がっていた。
パソコンとモニターとスピーカーの三つの電源が、全てオンになっていたのだ。
昨日の夜に全て切ったはずだし、今朝も切れていたというのに。
俺の部屋は狭いワンルームだ。
部屋に居ればパソコンは嫌でも目に入る。
――おかしいなあ……。
しかしパソコンがひとりでに立ち上がるわけがない。
切ったつもりになっていたのかもしれない。
俺はそう考えることにした。
しかしそれから数日後に、家に帰るとパソコンがまたひとりでに立ち上がった。
しかもモニター画面いっぱいに、赤い何かが映し出されている。
――手?
いくつもの血のように真っ赤な手形。
俺にはそう見えた。
さすがに気味が悪くなったが、どうすればいいかは思いつかず、結局その日は電源を切っただけだった。
しばらくは何もなかったが、ある日夕食を食べていると、俺の目の前でパソコンが勝手に立ち上がった。
そして前と同じくモニターには幾つもの赤い手形。
だがそれだけではない。
なにかがかすかに聞こえる。
最初はよくわからなかった。
しかし突然音量が大きくなり、それがなにかわかった。
人の声。
それもひどく苦しそうにうめく男の声だった。
――えっ!
俺は思わずパソコンから退いた。
そのままパソコンを見つめていると、玄関のチャイムが鳴った。
俺はパソコンから逃げるように玄関に行き、戸を開けた。
そこには二人の見知らぬ男が立っていた。
男の一人が俺の名前を聞き、そしてなにかを見せた。
警察手帳だった。
どうやら刑事のようだ。
――なに?
わけがわからないまま刑事を見ていると、刑事が言った。
「聞きたいことがあるんですが。あなた最近、隣町のショップで中古のパソコンを買いませんでしたか?」
「ええ、買いましたけど」
「実は一ヶ月ほど前に強盗殺人がありましてね。その強盗が売った被害者のパソコンをあなたが買ったみたいなので、ちょっと見せてもらえませんか」
刑事はそういうと、俺の部屋を覗き込んだ。
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