いい買い物

ツヨシ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

しおりを挟む
中古のパソコンを買った。
デスクトップ型で、なかなかにいい買い物をしたと思う。
値段のわりにソフトも充実し、全てが高性能だ。
ところがある日仕事から戻ると、なぜかパソコンが立ち上がっていた。
パソコンとモニターとスピーカーの三つの電源が、全てオンになっていたのだ。
昨日の夜に全て切ったはずだし、今朝も切れていたというのに。
俺の部屋は狭いワンルームだ。
部屋に居ればパソコンは嫌でも目に入る。
――おかしいなあ……。
しかしパソコンがひとりでに立ち上がるわけがない。
切ったつもりになっていたのかもしれない。
俺はそう考えることにした。
しかしそれから数日後に、家に帰るとパソコンがまたひとりでに立ち上がった。
しかもモニター画面いっぱいに、赤い何かが映し出されている。
――手?
いくつもの血のように真っ赤な手形。
俺にはそう見えた。
さすがに気味が悪くなったが、どうすればいいかは思いつかず、結局その日は電源を切っただけだった。

しばらくは何もなかったが、ある日夕食を食べていると、俺の目の前でパソコンが勝手に立ち上がった。
そして前と同じくモニターには幾つもの赤い手形。
だがそれだけではない。
なにかがかすかに聞こえる。
最初はよくわからなかった。
しかし突然音量が大きくなり、それがなにかわかった。
人の声。
それもひどく苦しそうにうめく男の声だった。
――えっ!
俺は思わずパソコンから退いた。
そのままパソコンを見つめていると、玄関のチャイムが鳴った。
俺はパソコンから逃げるように玄関に行き、戸を開けた。
そこには二人の見知らぬ男が立っていた。
男の一人が俺の名前を聞き、そしてなにかを見せた。
警察手帳だった。
どうやら刑事のようだ。
――なに?
わけがわからないまま刑事を見ていると、刑事が言った。
「聞きたいことがあるんですが。あなた最近、隣町のショップで中古のパソコンを買いませんでしたか?」
「ええ、買いましたけど」
「実は一ヶ月ほど前に強盗殺人がありましてね。その強盗が売った被害者のパソコンをあなたが買ったみたいなので、ちょっと見せてもらえませんか」
刑事はそういうと、俺の部屋を覗き込んだ。

       終
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

死者への伝言

ツヨシ
ホラー
道端に、花束と手紙があった。

教師(今日、死)

ワカメガメ
ホラー
中学2年生の時、6月6日にクラスの担任が死んだ。 そしてしばらくして不思議な「ユメ」の体験をした。 その「ユメ」はある工場みたいなところ。そしてクラス全員がそこにいた。その「ユメ」に招待した人物は... 密かに隠れたその恨みが自分に死を植え付けられるなんてこの時は夢にも思わなかった。

怪談実話 その4

紫苑
ホラー
今回は割とほのぼの系の怪談です(笑)

短な恐怖(怖い話 短編集)

邪神 白猫
ホラー
怪談・怖い話・不思議な話のオムニバス。 ゾクッと怖い話から、ちょっぴり切ない話まで。 なかには意味怖的なお話も。 ※完結としますが、追加次第更新中※ YouTubeにて、怪談・怖い話の朗読公開中📕 https://youtube.com/@yuachanRio

結末のない怖い話

雲井咲穂(くもいさほ)
ホラー
実体験や身近な人から聞いたお話を読める怪談にしてまとめています。 短い文章でさらっと読めるものが多いです。 結末がカチっとしていない「なんだったんだろう?」というお話が多めです。

茨城の首切場(くびきりば)

転生新語
ホラー
 へー、ご当地の怪談を取材してるの? なら、この家の近くで、そういう話があったよ。  ファミレスとかの飲食店が、必ず潰れる場所があってね。そこは首切場(くびきりば)があったんだ……  カクヨム、小説家になろうに投稿しています。  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330662331165883  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5202ij/

祓ってはいけない

牧神堂
ホラー
絵美さん(仮名)は小学生の時に母親を亡くしている。 その母の死を起点として起こった一連の忌まわしい出来事。

血だるま教室

川獺右端
ホラー
月寄鏡子は、すこしぼんやりとした女子中学生だ。 家族からは満月の晩に外に出ないように言いつけられている。 彼女の通う祥雲中学には一つの噂があった。 近くの米軍基地で仲間を皆殺しにしたジョンソンという兵士がいて、基地の壁に憎い相手の名前を書くと、彼の怨霊が現れて相手を殺してくれるという都市伝説だ。 鏡子のクラス、二年五組の葉子という少女が自殺した。 その後を追うようにクラスでは人死にが連鎖していく。 自殺で、交通事故で、火災で。 そして日曜日、事件の事を聞くと学校に集められた鏡子とクラスメートは校舎の三階に閉じ込められてしまう。 隣の教室には先生の死体と無数の刃物武器の山があり、黒板には『 35-32=3 3=門』という謎の言葉が書き残されていた。 追い詰められ、極限状態に陥った二年五組のクラスメートたちが武器を持ち、互いに殺し合いを始める。 何の力も持たない月寄鏡子は校舎から出られるのか。 そして事件の真相とは。

処理中です...