長いトンネル

ツヨシ

文字の大きさ
上 下
5 / 6

しおりを挟む
あのときと違うのは、少し歩いては振り返り、入り口がちゃんとあるかどうかを確認していたことです。

気をつけていないと、何故だか入り口が消えてしまうような気がしたからです。

そしてそれを何回か繰り返しました。

さらに歩いて振り返ると、信じられないことにそこは真っ暗だったのです。

――えっ?

ついさっきまで、明るい入り口がけっこう大きく見えていたのです。

入口からここまで、せいぜい百メートルを超えたぐらいでしょうか。

それなのに入り口が消えてしまっている。

そんなことがあるはずがないのです。

呆然と見ていると、唐突に声がしました。

「やあ」

振り返るとそこにとうやがいました。

行方不明になったときと、全く同じ姿のままで。

「なんで一人で帰っちゃうんだよ。冷たいやつだな。ずっと待っていたんだぜ」

「……」

「さあ、俺と一緒に行こう」

その声を聞いたとき、私はそうだなと思いました。

とうやと一緒に行かなければならないなと思いました。

「うん」

私がそう言ったときです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断崖

ツヨシ
ホラー
断崖に一人の男が現れるという噂を聞いた。

血の少女

ツヨシ
ホラー
学校で、廃病院に幽霊が出るとの噂が聞こえてきた。

間違い電話から

ツヨシ
ホラー
全ては間違い電話からはじまった

暗闇で音がする

ツヨシ
ホラー
灯りの点いていない真っ暗な部屋から毎晩音が聞こえてくる。

本当にあった怖い嘘の噂

ツヨシ
ホラー
ある日転校してきた絶世の美少女。しかし悪い噂が彼女を襲った。

歩きスマホ

宮田歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

禊(みそぎ)

宮田歩
ホラー
車にはねられて自分の葬式を見てしまった、浮遊霊となった私。神社に願掛けに行くが——。

リューズ

宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。

処理中です...