長いトンネル

ツヨシ

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あのときと違うのは、少し歩いては振り返り、入り口がちゃんとあるかどうかを確認していたことです。

気をつけていないと、何故だか入り口が消えてしまうような気がしたからです。

そしてそれを何回か繰り返しました。

さらに歩いて振り返ると、信じられないことにそこは真っ暗だったのです。

――えっ?

ついさっきまで、明るい入り口がけっこう大きく見えていたのです。

入口からここまで、せいぜい百メートルを超えたぐらいでしょうか。

それなのに入り口が消えてしまっている。

そんなことがあるはずがないのです。

呆然と見ていると、唐突に声がしました。

「やあ」

振り返るとそこにとうやがいました。

行方不明になったときと、全く同じ姿のままで。

「なんで一人で帰っちゃうんだよ。冷たいやつだな。ずっと待っていたんだぜ」

「……」

「さあ、俺と一緒に行こう」

その声を聞いたとき、私はそうだなと思いました。

とうやと一緒に行かなければならないなと思いました。

「うん」

私がそう言ったときです。
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