9 / 10
9
しおりを挟む
クレーンで吊り上げた鉄材が滑り落ち、それが夫の頭を直撃してしまったのです。
ほぼ即死だったそうです。
十年ほど前に同様の事故を起こし、死者こそ出なかったものの重傷者が出てしまいました。会社としてはその時以降十分な対策を止むことなく続けてきたはずなのですが、どうやら十年の歳月がそれを風化させてしまったようです。
その結果、とうとう死人を出してしまったのです。
それがこともあろうか私の夫だなんて。
お通夜、葬式と、私はずっとぼうとした状態で過ごしました。
夫が死んだことに対する実感がわかない。
いや、夫が死んだという現実を受け入れることを、無意識のうちに拒否をしていたのでした。
そして二人のために、これから生まれてくるであろう子供たちのために引越しをしたマンションに、一人帰りました。
しばらくはほとんど何もせずに過ごしました。
気力や思考力を奪われたままで。
ところがある日、ふとこのままでは駄目だと思い立ち、とりあえず夫の遺品を整理することを思い立ちました。
夫の服。
夫の腕時計。
スマホ。
本。その他諸々。
その中で夫が使っていた仕事用の鞄が目に入りました。
黒い皮製の鞄。大事なものだから絶対に触るな、と夫がいつも言っていたものです。
ほぼ即死だったそうです。
十年ほど前に同様の事故を起こし、死者こそ出なかったものの重傷者が出てしまいました。会社としてはその時以降十分な対策を止むことなく続けてきたはずなのですが、どうやら十年の歳月がそれを風化させてしまったようです。
その結果、とうとう死人を出してしまったのです。
それがこともあろうか私の夫だなんて。
お通夜、葬式と、私はずっとぼうとした状態で過ごしました。
夫が死んだことに対する実感がわかない。
いや、夫が死んだという現実を受け入れることを、無意識のうちに拒否をしていたのでした。
そして二人のために、これから生まれてくるであろう子供たちのために引越しをしたマンションに、一人帰りました。
しばらくはほとんど何もせずに過ごしました。
気力や思考力を奪われたままで。
ところがある日、ふとこのままでは駄目だと思い立ち、とりあえず夫の遺品を整理することを思い立ちました。
夫の服。
夫の腕時計。
スマホ。
本。その他諸々。
その中で夫が使っていた仕事用の鞄が目に入りました。
黒い皮製の鞄。大事なものだから絶対に触るな、と夫がいつも言っていたものです。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
気配
桜 晴樹
ホラー
それはいつもの日常に突然ともたらされるもの。
誰もいないのに感じる気配。
誰もいないのに、名前を呼ばれ背後に何かがいる。
振り返っても誰もいない。
家の中も何処にもいない。
けれども感じる気配。
それはナニか
俺達の百鬼夜行 堕ちればきっと楽になる
ちみあくた
ホラー
人材不足の昨今、そこそこニーズがある筈の若手SE・葛岡聡は、超ブラックIT企業へ就職したばかりに、連日デスマーチが鳴り響く地獄の日々を送っていた。
その唯一の癒しは、一目惚れした職場の花・江田舞子の存在だが、彼女の目前で上司から酷いパワハラを喰らった瞬間、聡の中で何かが壊れる。
翌朝、悪夢にうなされる聡の眠りをスマホのアラームが覚まし、覗くと「ルール変更のお知らせ」と表示されていた。
変更ルールとは「弱肉強食」。喰われる側が喰う側へ回る、と言うのだが……
遅刻寸前で家を出た聡は、途中、古の妖怪としか思えない怪物が人を襲う姿を目撃する。
会社へ辿り着き、舞子の無事を確認する聡だが、彼はそこで「ルール変更」の真の意味と、彼自身に付きつけられた選択へ直面する事となる。
あなた、社畜、やめますか? それとも、人間、やめますか?
〇エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+でも投稿しております。
藁人間
spell breaker!
ホラー
介護老人保健施設に入居しているわしにとって、レクリエーションの時間は苦痛でしかない。
レクをやりすごしていたとき、新人介護職員である靖川まなみがやってきて、マンツーマンでお話しましょうと持ちかけてきた。
そこでわしはかつての職業を鍵師であったことを明かし、現役のころの数奇なできごとを語る。
そのうち、わしは平衡感覚を失っていくのだった……。
※本作は『小説家になろう』様でも公開しております。
――――ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。
神崎
ホラー
―――――――ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。―――ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。ズリ。――――ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。ザラ。
投稿:カクヨム、アルファポリス、ノベルアップ、なろう
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる