四人目の外野手

ツヨシ

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それはある夏の日のこと。
その日僕は高校野球の地方大会の予選に、選手として参加していた。
そして同点の七回表、うちの学校の攻撃の時だった。
僕はセンターの横に、もう一人の外野手がいるのに気がついた。
――えっ?
四人目の外野手は、見たことのないユニフォームを着ていた。
「あれ、誰?」
「えっ、なに?」
僕はセンターの横に四人目の外野手がいると言ったが、「どこだ」「そんな奴いないぞ」と言う反応だった。
相手校のセンターも、自分のすぐ横にいる選手に無反応だった。
「どうしたんだ」「大丈夫か」「水でも飲め」と口々に言われ、見間違いかとも思ったが、やはりどう見ても四人目の外野手が僕にははっきりと見えた。
――いったいなんなんだ、あいつは。
その時、フルスイングをしたバッターのバットが手を離れ、勢いよくネクストバッターサークルにいたチームメイトの胸を直撃した。
チームメイトは倒れ、胸を押さえて苦しんだ。
試合は一旦止まり、ベンチの全員が駆け寄った。
みんなで声をかけたが、チームメイトは真っ青な顔で苦しむばかり。
監督が連絡し、しばらくすると救急車のサイレンが聞こえた。
そして担架を持った救急隊員がグランドに来て、チームメイトを連れ出した。
「大丈夫か、あいつ」
「やけに苦しがっていたけど」
みんながざわついている中、僕は外野を見た。
そこにはまだ四人目の外野手がいた。
そして間違いなく、にたりと笑ったのだ。

       終
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