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しおりを挟む「おや、メアリー嬢の隣にいるのはアレン王子じゃないですか。」
「へ?」
本当だ。
まるで彼女の恋人の様に寄り添って歩くのはアレンだった。
ああ、どうりで人だかりが出来るわけね。
「あれ、そういえばキーナ様はアレン王子と一緒に登校された事ありましたっけ?」
…ないわよ。
私はジルを睨んで目で答えた。
婚約者とはいえ相手は国の第一王子。
事前の予約がなければ私でも簡単に会うことの出来ない相手。
だから私は礼儀をわきまえ必要以上に近寄らなかった。そしてアレンも必要以上に私に会おうとはしない。でも一緒に登校する事の憧れは少しくらいあったのに…。
アレンは彼女が好きなのかもしれない。
実際、目の前で仲睦まじい2人の姿を見せられると胸が痛い。
「あの2人、ほっといていいんですか?」
ジルは少し心配そうに聞いてきた。
「…行くわよ。」
私は前を見て歩き出した。
私の周りにいた生徒たちもアレンとメアリーが一緒にいる姿に気付きだす。
先程までの羨望の眼差しは消え、今度は好奇の目が向けられる。
どこからか新たなゴシップを見つけた時の楽しそうな会話が聞こえてくる。
「ねぇ、アレン王子はキーナ様の婚約者でしょ?例の特待生と一緒にいるわよ。」
「本当だ。あの2人が一緒にいる所はあまり見ないけど、最近アレン王子はあの子と過ごす事が多いみたいよ。もしかして、アレン王子はあの令嬢に気移りしたのかしら。」
「しっ、やめなさいよー。キーナ様に聞こえたら大変。」
聞こえてるわよっ!!
私は振り返って睨みつけてやりたかったが、そんな行為は王太子妃候補として相応しくない。
何も気付いていないフリをして、その場からさっさと
立ち去った。
その時、アレンがキーナを見つめていた事に気付きもせずに。
学園の入口まで来るとジルにカバンを渡されて「では俺はここで。帰りはいつもの時間に迎えに来ればいいですか?」と聞かれた。
従者は学園の建物までは入れないのだ。
「ええ。よろしくお願いね。」
「では。……。」
いつもはさっさと帰るジルが私をじっと見つめる。
「何よ?」
ジルは耳打ちをする仕草をしたので私も耳を貸す。
「キーナ様、ドンマイっ☆」
「ーっ!!」
こ、こいつっ…!
おちょくりの天才ね。
一瞬、怒鳴りそうな気持ちを抑え込み、「ふふ、ありがとう。家に帰ったらたっぷりお礼させてもらうわ。」と笑えば、ジルは「結構です。ではっ!」と言って逃げる様に帰っていった。
私は心の中でため息をついて教室へ向かうとすると声を掛けられた。
「キーナ、ちょっといいか?」
目の前には先程まで美人令嬢に寄り添っていた私の婚約者。美人令嬢はもう連れていない様だけど…。
「…あら、アレン様。おはようございます。」
「おはよう。少し話がしたい。今日の昼休みに時間を貰えるか?」
あらあら、さっそく婚約破棄の話かしら。
ああ、でも卒業パーティーで宣言するとか言ってたわよね。
まあ、きっと良い話ではないでしょうね。
正直、行きたくない。
でもここは彼の理想の婚約者らしく素直に言う事を聞かないと。
「まあ、嬉しいですわ。もちろん大丈夫ですよ。」
「ああ、悪いな。じゃあ生徒会室で会おう。」
エレメリア学園の生徒会長でもあるアレンは生徒会室も自由に使える。
昨日の出来事を思い出す生徒会室なんて行きたくないけど、尻尾を巻いて逃げるのは嫌。
「ええ、では後ほど。」
私は理想の婚約者スマイルで挨拶をして彼と別れた。
「へ?」
本当だ。
まるで彼女の恋人の様に寄り添って歩くのはアレンだった。
ああ、どうりで人だかりが出来るわけね。
「あれ、そういえばキーナ様はアレン王子と一緒に登校された事ありましたっけ?」
…ないわよ。
私はジルを睨んで目で答えた。
婚約者とはいえ相手は国の第一王子。
事前の予約がなければ私でも簡単に会うことの出来ない相手。
だから私は礼儀をわきまえ必要以上に近寄らなかった。そしてアレンも必要以上に私に会おうとはしない。でも一緒に登校する事の憧れは少しくらいあったのに…。
アレンは彼女が好きなのかもしれない。
実際、目の前で仲睦まじい2人の姿を見せられると胸が痛い。
「あの2人、ほっといていいんですか?」
ジルは少し心配そうに聞いてきた。
「…行くわよ。」
私は前を見て歩き出した。
私の周りにいた生徒たちもアレンとメアリーが一緒にいる姿に気付きだす。
先程までの羨望の眼差しは消え、今度は好奇の目が向けられる。
どこからか新たなゴシップを見つけた時の楽しそうな会話が聞こえてくる。
「ねぇ、アレン王子はキーナ様の婚約者でしょ?例の特待生と一緒にいるわよ。」
「本当だ。あの2人が一緒にいる所はあまり見ないけど、最近アレン王子はあの子と過ごす事が多いみたいよ。もしかして、アレン王子はあの令嬢に気移りしたのかしら。」
「しっ、やめなさいよー。キーナ様に聞こえたら大変。」
聞こえてるわよっ!!
私は振り返って睨みつけてやりたかったが、そんな行為は王太子妃候補として相応しくない。
何も気付いていないフリをして、その場からさっさと
立ち去った。
その時、アレンがキーナを見つめていた事に気付きもせずに。
学園の入口まで来るとジルにカバンを渡されて「では俺はここで。帰りはいつもの時間に迎えに来ればいいですか?」と聞かれた。
従者は学園の建物までは入れないのだ。
「ええ。よろしくお願いね。」
「では。……。」
いつもはさっさと帰るジルが私をじっと見つめる。
「何よ?」
ジルは耳打ちをする仕草をしたので私も耳を貸す。
「キーナ様、ドンマイっ☆」
「ーっ!!」
こ、こいつっ…!
おちょくりの天才ね。
一瞬、怒鳴りそうな気持ちを抑え込み、「ふふ、ありがとう。家に帰ったらたっぷりお礼させてもらうわ。」と笑えば、ジルは「結構です。ではっ!」と言って逃げる様に帰っていった。
私は心の中でため息をついて教室へ向かうとすると声を掛けられた。
「キーナ、ちょっといいか?」
目の前には先程まで美人令嬢に寄り添っていた私の婚約者。美人令嬢はもう連れていない様だけど…。
「…あら、アレン様。おはようございます。」
「おはよう。少し話がしたい。今日の昼休みに時間を貰えるか?」
あらあら、さっそく婚約破棄の話かしら。
ああ、でも卒業パーティーで宣言するとか言ってたわよね。
まあ、きっと良い話ではないでしょうね。
正直、行きたくない。
でもここは彼の理想の婚約者らしく素直に言う事を聞かないと。
「まあ、嬉しいですわ。もちろん大丈夫ですよ。」
「ああ、悪いな。じゃあ生徒会室で会おう。」
エレメリア学園の生徒会長でもあるアレンは生徒会室も自由に使える。
昨日の出来事を思い出す生徒会室なんて行きたくないけど、尻尾を巻いて逃げるのは嫌。
「ええ、では後ほど。」
私は理想の婚約者スマイルで挨拶をして彼と別れた。
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