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俺の通う大学の近くに閉鎖された病院がある。
とは言っても閉鎖されたのがほんの一ヶ月ほど前で、外から見るとまるでまだ運営しているかのように見え、そこが心霊スポットと言う話は今のところ聞かない。
ところが同級生の武本が「廃病院に行こう」と言い出した。
理由を聞くと「病院だったんだから、幽霊とか出るんじゃないの」と軽く言う。
気乗りはしなかったが、暇だし行くことにした。
行ってみるとやはり新しいが、窓ガラスが一部割れている。
玄関も無用心なことに鍵はかかっていなかった。
中に入ると一階は待合、受付、会計、そして幾つもの診察室。
二人で一通りまわって二階に行った。
二階は入院患者の病室だった。
階段を上がってすぐのところに看護婦の詰め所があった。
入ってみたが、とくにどうということはない。
俺がもう出ようと考えていたら、突然プルルルルと音がした。
見ると壁に掛けられた内線電話の緑のランプが点滅している。
俺は思わず後ずさったが、武本は一瞬の間を置いた後に受話器をとった。
武本は数瞬なにかを聞いていたが、突然受話器を放り投げると勢いよく駆け出した。
俺は慌てて後を追った。
外に出て車に乗り込んだ。俺は車を発進させる前に武本に聞いた。
「どうした? 電話。誰かなんか言ったか」
武本はしばらくの沈黙の後、言った。
「女が……「逃がさないわ」と言ってた」
それを聞いた俺は、車を急発進させた。
武本を送ってアパートに帰ったが、とにかく俺は落ちつかなかった。
武本が聞いた女の声というのが頭から離れない。
直接聞いたわけではないのに。
悶々としていると電話が鳴った。
出ると武本だ。
「どうした」
「……あの女から電話がかかって来た」
……!
そのとき、電話から武本以外の声が聞こえてきた。
それは女の声で「あなたも逃がさないわ」と言った。
終
とは言っても閉鎖されたのがほんの一ヶ月ほど前で、外から見るとまるでまだ運営しているかのように見え、そこが心霊スポットと言う話は今のところ聞かない。
ところが同級生の武本が「廃病院に行こう」と言い出した。
理由を聞くと「病院だったんだから、幽霊とか出るんじゃないの」と軽く言う。
気乗りはしなかったが、暇だし行くことにした。
行ってみるとやはり新しいが、窓ガラスが一部割れている。
玄関も無用心なことに鍵はかかっていなかった。
中に入ると一階は待合、受付、会計、そして幾つもの診察室。
二人で一通りまわって二階に行った。
二階は入院患者の病室だった。
階段を上がってすぐのところに看護婦の詰め所があった。
入ってみたが、とくにどうということはない。
俺がもう出ようと考えていたら、突然プルルルルと音がした。
見ると壁に掛けられた内線電話の緑のランプが点滅している。
俺は思わず後ずさったが、武本は一瞬の間を置いた後に受話器をとった。
武本は数瞬なにかを聞いていたが、突然受話器を放り投げると勢いよく駆け出した。
俺は慌てて後を追った。
外に出て車に乗り込んだ。俺は車を発進させる前に武本に聞いた。
「どうした? 電話。誰かなんか言ったか」
武本はしばらくの沈黙の後、言った。
「女が……「逃がさないわ」と言ってた」
それを聞いた俺は、車を急発進させた。
武本を送ってアパートに帰ったが、とにかく俺は落ちつかなかった。
武本が聞いた女の声というのが頭から離れない。
直接聞いたわけではないのに。
悶々としていると電話が鳴った。
出ると武本だ。
「どうした」
「……あの女から電話がかかって来た」
……!
そのとき、電話から武本以外の声が聞こえてきた。
それは女の声で「あなたも逃がさないわ」と言った。
終
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