格安のホテルにて

ツヨシ

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仕事をしながらでも、あの声が今にも聞こえてきそうな気がして、落ち着かなかった。

それほどまでに私の耳に残っていたのだ。

その日は少し残業をして帰ったが、声が聞こえることはなかった。


夜、ベッドの中で再びあの声について思いを巡らせた。

今のところは何もない。

だったな何故先輩は会社に来なくなってしまったのだろうか。

そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠りについた。


目覚ましが鳴る。

私はベッドで上半身を起こした。

そしてベッドからおりようとした時に、聞こえてきた。

「く・る・し・い」

あのホテルで聞いたのと同じ声だ。

そして何かが私の肩と背中に乗ってきた。

感触は人間の女性。

首だけで振り返ったが、何も見ることはできなかった。

重い。とてつもなく重い。

私は上半身を起こした状態で動けなくなってしまった。

するとまた聞こえた。

「く・る・し・い」


       終
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