格安のホテルにて

ツヨシ

文字の大きさ
上 下
3 / 5

しおりを挟む
当然宿泊するのはあの古びたホテルと言うことになる。

少し気がかりはあったが、前回二日間泊まって何もなかったので、強い警戒心は私の中にはなかった。

現場で製品の不備を調べて改善策を見つけるだけなので、当初の予定では一泊だけの出張だった。

ところが問題点はほどなくして見つかったのだが、それを修正する手立てがすぐにはわからなかった。

わが社の製品は大型機械の一部なので、それだけ持ち帰っても不備の細かいところはわからない。

実際に機械に取り付けた状態で稼動させた上で見極める必要がある。

――一泊ですむのだろうか?

そう考えながらもう暗くなりつつある空を見ながら私はホテルに向かった。

泊まったが、前回と同じく何事もなかった。

次の日、まる一日かけてある程度は把握したが、ちゃんとした改善方法は見つからなかった。

私はもう一泊した。

食事をすませ風呂に入り、ビールを一杯飲んだ後に、私はベッドに入った。眠りつくまではすぐだった。


ふと目覚めた。

ベッドわきのスタンドをつけて時計を見ると、午前三時だった。

――どうしたんだろう?

不思議だった。

私は一度眠りにつくと、目覚ましが鳴るよりも前に起きるということが、皆無と言っていいからだ。

それなのにはっきりと目を覚ました。

とりあえずもう一度目を閉じて眠りにつこうとしたときに、聞こえてきた。

「く・る・し・い」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れた顔

ツヨシ
ホラー
画廊で買った不気味な絵はいわくつきだった。

黒い影

ツヨシ
ホラー
事故現場で黒い影を見た。

あのバス停を降りたときに

ツヨシ
ホラー
山の中のバス停で、血にまみれた老婆が乗ってきた。

虚無を見つめる眼

ツヨシ
ホラー
駐車場に異様な男がいた

△〇の一部

ツヨシ
ホラー
△〇の一部が部屋にあった。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

糠味噌の唄

猫枕
ホラー
昭和60年の春、小6の町子は学校が終わって帰宅した。 家には誰もいない。 お腹を空かせた町子は台所を漁るが、おやつも何もない。 あるのは余った冷やご飯だけ。 ぬか漬けでもオカズに食べようかと流し台の下から糠床の入った壺をヨイコラショと取り出して。 かき回すと妙な物体が手に当たる。 引っ張り出すとそれは人間の手首から先だった。

処理中です...