格安のホテルにて

ツヨシ

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「みんなも薄々気がついているかもしれないが、高坂君は会社を退職することになった」

それだけだった。

辞める理由やその他の説明はなかった。

というよりも、上司自身がよくわかっていないような口ぶりだった。

となると、会社に来なくなった前日に「あのホテルには気をつけろ」と言われた私がその理由を一番知っているかもしれない。

やめた理由があのホテルにあったとしたらだが。

いや、たとえそうであっても、いったいホテルで何があったのか、何に気をつけなければならないのかは、まるでわからないのだが。


そして数日が過ぎた頃、私の出張が決まった。

宿泊先はもちろんあのホテルである。

気はのらないが、出張の際のホテルは会社が決めている。

それで長年やってきたのだ。

私一人で反対してもどうにもならない。

だいいち理由を聞かれたら大いに困ることになる。

辞めた先輩が「あのホテルに気をつけろ」言ったから、といった理由が間違っても通るわけもない。

私は仕方なくあのホテルに泊まった。

ニ泊したが、結果としては何もなかった。

安いホテルだけあって建物もかなり古く、部屋も狭くてサービスもお世辞にも良いとは言えなかったが、変わったこととか特別なことは何も起こらなかった。

正直不安でしかたがなかったが、とりあえずはほっとした。


しかし一週間過ぎたとき、急に同じ会社への出張が決まった。

どうやら納品した新製品に問題が生じたようだ。
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