あれ

ツヨシ

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父が弟に眼で合図をし、二人が再び両側から俺をかかえた。

そして階段下に連れて行かれた。

そこにあるやけに分厚い扉を開けると、そこには下に下る階段があった。

――普通の家に見えたのに、なんでこんなものがあるんだ?

以前の俺なら知っていただろうが、今の俺にはわからない。

俺は押されるようにして階段を下りた。

俺を下ろすと父と弟は階段を上って行った。

見上げると老人の男が顔を出して言った。

「そこには生活に必要な最低限のものはある。食べ物は運んでやるから、あれのありかを言う気になったらいつでもそう言え」

そういうと俺の衣類を上から投げ入れて、扉を閉めた。

真っ暗になり、そして鍵がかかる音がした。

真っ暗だが、俺は扉が閉まる前に階段横にスイッチがあるのを確認していた。

点けるとけっして明るいとはいえないが、周りの様子はわかる。

トイレ、シャワー、ベッド。

たしかに最低限の生活はできそうだ。

俺は考えた。

とにかく俺は、俺の身体とあれと呼ばれるものを落としたがために、ここに閉じ込められたのだ。

それにしてもこの場所はなんなんだ。

あれとはいったいどんなものだ。

そして一番大事なことだが、俺はいつまでここにいればいいのだ。


       終
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