あのバス停を降りたときに

ツヨシ

文字の大きさ
上 下
7 / 20

7

しおりを挟む
ほどなくしてバスは山を下り、平坦ではあるものの、舗装のされていない細い道を進み始めました。

その先のバス停で、三人の乗客は三人とも申し合わせたかのように、無言でバスを降りてゆきました。

そこは一応平地ではあるものの、家とかいった建造物はおろか、田畑といった人の手が加えられているものも一切見当たらない、月明かりがなければ真っ暗なところでした。

バスはしばらくすると走り出し、小さな集落にたどり着きました。

どうやらここが終点のようです。

私は接客業に向いているとはとても思えない、痩せて目つき顔つきがやけに鋭い運転手に尋ねました。

「上りのバスはありますか?」

運転手は私をぎろりと見ると、ただでさえ近寄りがたい顔つきを更に険しくし、聞き取れないほどの小さな声で何かぶつぶつと呟くと、時刻表を面倒くさそうに指差しました。

私は時刻表を見ました。

どうやら今から二十分後に上りのバスが出発するようです。

しかし周りを見渡しても、バスは私が乗ってきたこの一台しかありません。

――このバスで行くのかしら?

そうでした。

バスは時刻通りに走り出しました。


気付けば降りるべきバス停が迫っていました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不思議で歪な怖い話

kazukazu04
ホラー
短編ホラーの世界にようこそ。

白いワンピースのお姉さん

Saki
ホラー
白いワンピースのお姉さん、その存在は主人公に何をもたらす?

朧《おぼろ》怪談【恐怖体験見聞録】

その子四十路
ホラー
しょっちゅう死にかけているせいか、作者はときどき、奇妙な体験をする。 幽霊・妖怪・オカルト・ヒトコワ・不思議な話…… 日常に潜む、胸をざわめかせる怪異── 作者の実体験と、体験者から取材した実話をもとに執筆した怪談短編集。

怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo
ホラー
【★◆毎朝6時30分更新◆★】この世には、知ってはいけない話がある。  怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——  どれもがただの作り話かもしれない。  だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。  本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。  最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/3/14:『かげぼうし』の章を追加。2025/3/21の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/13:『かゆみ』の章を追加。2025/3/20の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/12:『あくむをみるへや』の章を追加。2025/3/19の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/11:『まぐかっぷ』の章を追加。2025/3/18の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/10:『ころがるゆび』の章を追加。2025/3/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/9:『かおのなるき』の章を追加。2025/3/16の朝8時頃より公開開始予定。 2025/3/8:『いま』の章を追加。2025/3/15の朝8時頃より公開開始予定。

逢魔ヶ刻の迷い子3

naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。 夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。 「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」 陽介の何気ないメッセージから始まった異変。 深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして—— 「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。 彼は、次元の違う同じ場所にいる。 現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。 六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。 七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。 恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。 「境界が開かれた時、もう戻れない——。」

十三怪談

しんいち
ホラー
自分が収集した実際にあった話になります。同時に執筆している「幽子さんの謎解きレポート」の元ネタになっている話もあります。もしよろしければこちらの方もよろしくお願いいたします。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...