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――どうしよう……。
私の身は極限まで固まり、小指の一本すら動かせませんでした。
ふと気付いた時には、バスはすでに走り出していました。
見れば老婆はそのまま席に座っています。
ご丁寧にほぼ白髪の後頭部までも赤に染めて。
私は再び考えました。
考えて考えて更に考えを巡らせましたが、頭がまるでついてきてくれません。
そうこうしているうちに、表示板に〈次、停まります〉と不自然なほどにあざやかな文字が浮かび上がり、「次、停まります」と機械的な女性のアナウンスが流れて、バスが停まりました。
そこには何もない山の中に、またバス停がまるで陳腐な冗談であるかのように存在していました。
私は心の底から願いました。
どうかあの老婆がここで降りてくれますように、と。
すると老婆が席を立ち、バス代を払う素振りなど見せないままに、山道にぽつんとあるバス停に降りてゆきました。
「ふうっ」
自分でも驚くほどの大きなため息が口から漏れました。
運転手も三人の乗客にもそれは聞こえているはずなのですが、全くなんの反応もありません。
私は席に座ったまま、ぐったりとへたりこんでいました。
私の身は極限まで固まり、小指の一本すら動かせませんでした。
ふと気付いた時には、バスはすでに走り出していました。
見れば老婆はそのまま席に座っています。
ご丁寧にほぼ白髪の後頭部までも赤に染めて。
私は再び考えました。
考えて考えて更に考えを巡らせましたが、頭がまるでついてきてくれません。
そうこうしているうちに、表示板に〈次、停まります〉と不自然なほどにあざやかな文字が浮かび上がり、「次、停まります」と機械的な女性のアナウンスが流れて、バスが停まりました。
そこには何もない山の中に、またバス停がまるで陳腐な冗談であるかのように存在していました。
私は心の底から願いました。
どうかあの老婆がここで降りてくれますように、と。
すると老婆が席を立ち、バス代を払う素振りなど見せないままに、山道にぽつんとあるバス停に降りてゆきました。
「ふうっ」
自分でも驚くほどの大きなため息が口から漏れました。
運転手も三人の乗客にもそれは聞こえているはずなのですが、全くなんの反応もありません。
私は席に座ったまま、ぐったりとへたりこんでいました。
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