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しおりを挟む暗い中で短い時間に俺が見たものは、つばの広い先が折れ曲がった円錐型の黒い帽子をかぶり、ゴシック調のこれまた黒い服を着て、なにか棒状のものにまたがって低空飛行をしていた、女だった。
暗い上につばの広い帽子のせいで顔はよく見えなかったのだが、印象としては女だ。
――魔女?
そうそれは、魔女としか言いようのない存在だったのだ。
振り返り、魔女らしき女が去った方を見ていると、後方から声が聞こえてきた。
見ればそれは、各々手に棍棒や鉈のようなものを持った十人ほどの男たちだった。
その団体がこっちに向かって走ってくるのだ。
――うわっ!
俺は家の壁にへばりついた。
男たちは口々になにかをわめきながら、俺の方にちらりと視線を移しつつも、止まることなく俺の前を通り過ぎて行った。
どう考えても、あの魔女を追いかけているとしか思えなかった。
男たちがなにを言っているのかはわからなかったが、俺にはなんとなくフランス語を話しているように思えた。
そして男たちの服装は、とても現代人のものとは思えなかった。
ついさっきまで気心の知れた友人と楽しく飲んでいたというのに、気が付けば中世ヨーロッパにいて、おまけに魔女とそれを追いかける団体にでくわしてしまっている。
いったいなにがどうなっているのかまるでわからない。
――どうしよう……。
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