真琴という女

ツヨシ

文字の大きさ
上 下
38 / 43

38

しおりを挟む
俺たちは外に出た。

そして家の横を通って道路に向かおうとしたとき、前をゆくとしやがぴたりとその足を止めた。

そこには窓があり、割れた窓から中の様子がよく見えた。

真琴がいてその先に青白い中年男がいる。

俺たちは真琴を斜め後ろから見るような形になっていた。

としやは動かなかった。

俺もその場から動かなかった。

気付けば青白かった男が、今はその全身が真っ赤に染まっていた。

真琴が言った。

「本性を現したわね、この化け物。それにしても本当にすごいわね、その霊力。元は人並みの力しかなかったはずなのに、五十年以上も一時も休まずに自分の霊力を高め続けて、ここまで強くしたのね。こんなやつがいるなんて、思ってもみなかったわ。その執念だけなら、充分尊敬に値するわね。使い方は完全に間違っているけど」

男が言った。

生きた人間が発することは不可能なほどに、やけに響く声で。

「あの子は私の子供だ。死んでからも私のものなんだ。それなのにあの世に送ってしまうなんて。おまえ、許さないぞ。絶対に許さない」

としやが唾を飲む音が聞こえた。

真琴が言った。

「ふん。許さないと言うなら、いったいどうすると言うのよ」

「殺してやる。おまえなんか殺してやる」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あのバス停を降りたときに

ツヨシ
ホラー
山の中のバス停で、血にまみれた老婆が乗ってきた。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

The Last Night

泉 沙羅
ホラー
モントリオールの夜に生きる孤独な少女と、美しい吸血鬼の物語。 15歳の少女・サマンサは、家庭にも学校にも居場所を持てず、ただひとり孤独を抱えて生きていた。 そんな彼女が出会ったのは、金髪碧眼の美少年・ネル。 彼はどこか時代錯誤な振る舞いをしながらも、サマンサに優しく接し、二人は次第に心を通わせていく。 交換日記を交わしながら、ネルはサマンサの苦しみを知り、サマンサはネルの秘密に気づいていく。 しかし、ネルには決して覆せない宿命があった。 吸血鬼は、恋をすると、その者の血でしか生きられなくなる――。 この恋は、救いか、それとも破滅か。 美しくも切ない、吸血鬼と少女のラブストーリー。 ※以前"Let Me In"として公開した作品を大幅リニューアルしたものです。 ※「吸血鬼は恋をするとその者の血液でしか生きられなくなる」という設定はX(旧Twitter)アカウント、「創作のネタ提供(雑学多め)さん@sousakubott」からお借りしました。 ※AI(chatgpt)アシストあり

逢魔ヶ刻の迷い子3

naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。 夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。 「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」 陽介の何気ないメッセージから始まった異変。 深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして—— 「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。 彼は、次元の違う同じ場所にいる。 現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。 六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。 七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。 恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。 「境界が開かれた時、もう戻れない——。」

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

【完結】人の目嫌い/人嫌い

木月 くろい
ホラー
ひと気の無くなった放課後の学校で、三谷藤若菜(みやふじわかな)は声を掛けられる。若菜は驚いた。自分の名を呼ばれるなど、有り得ないことだったからだ。 ◆2020年4月に小説家になろう様にて玄乃光名義で掲載したホラー短編『Scopophobia』を修正し、続きを書いたものになります。 ◆やや残酷描写があります。 ◆小説家になろう様に同名の作品を同時掲載しています。

怪談実話 その3

紫苑
ホラー
ほんとにあった怖い話…

処理中です...