真琴という女

ツヨシ

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「……で、どっちにいるん?」

としやは目を輝かせ、昨日と同じく興奮した状態でしゃべりはじめた。

「ずばり高知県。犬神の大元締めで山岳修行の総本山でもあり、歴史的にも徳の高い霊能者が多いんやな。四国は四県あるのに、四国の山の四割以上が高知県なんやから。香川県なんか、一割にもまるで届かないというのに。なにせ高知は四十七都道府県で最下位の平野率の低さを誇っとる。素晴らしいわ。山の多い日本では、平野率が五割超えとるのは四十七都道府県で十一箇所しかないのに、その十一箇所の中に入っとる香川県とは真逆やな。ほんまうらやましい限りやわ」

としやは統計的なものが得意な上に、山に対して強い興味を持っているようだ。

だから細かい割合的な数字が、いつも以上に会話の中に入ってきている。

それは単純に言って、山が多ければ多いほどいいと思っていることが、俺にも嫌と言うほどわかった。

そういえばとしやは「高知に引っ越したい」とか言っているのを何回か聞いたような気がするし、中学生なのに「高知で死にたいな」とまで言ったことがあった。

オカルトマニアでありながらこれといった霊感もなく、霊能者にあこがれているふしがあるとしやとしては「先祖代々高知の血筋なら、ちょっとは霊能力が生まれながらに備わっていたかもしれない」とか思っているようだ。

それは小学校低学年からの付き合いである俺には、としやが「やま」と言っているひらがなにするとたった二文字の口調だけで、なんとなくそれがわかった。

としやが続けた。

「で、すでにいい霊能者は見つけてる」

「えっ、ほんま」

「昨日必死で探して見つけた、と言いたいところやけど、実は四年前から知っとったわ。おまえとの会話がおもしろかったんで、昨日はわざと言わんかったけど。高知でもトップクラスの霊能者やぞ」

としやはまたプリントアウトした紙をよこした。

それに名前と簡単な略歴が書いてあった。
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