真琴という女

ツヨシ

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二人ともこのあたりでは珍しく一人住まいなので、何かあったときのためにと、うちの家に顔を出すのがいつもの習慣となっていた。

そんなことを考えていると、ますます確信がわいてきた。

今なら行けるぞ、と。

俺は自転車を道から見えないところに隠すと、真っ直ぐあの家に向かった。

子供のころは見ただけで距離を感じていたものだが、中学生の足ではすぐに着いた。

玄関に回るとドアは壊れていて、半開きになっている。

でも身体が入れるほどのすき間ではないのでドアを引いてみたが、錆び付いているのかすんなりとは開かない。

そこを力任せに引いたところ、変な金属音を響かせながらドアが開いた。

俺は中に入った。

外は夕方でおまけに大雨なので、普段の夕方よりは暗いが真っ暗ではなかった。

しかし家の中に入ると真っ暗だった。

俺は懐中電灯を手にして、未知なる世界の探索を始めた。

それほど広い家ではない。

このあたりの一般住宅よりは小さめだ。

前に誰かから聞いたことがあるが、以前は一家族四人が住んでいたらしいのだが、叔父さんが一人で住んでいる家のほうが大きいだろう。

見渡して思ったことは、家具やその他のものがそのまま手付かずで残っているという印象を受けた。

どれも見事にほこりまみれとなり、それなりに朽ちてはいるが、それをのぞけば今現在も一家四人が住んでいても不思議ではない状況なのだ。
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