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第四章 ダンジョンを観光地化させる俺
107、新しい湖を作ろう
しおりを挟む「本当にディーネはメインボスを辞めるだけでいいのか?」
そう聞きかえしたのはいいけど、もしそれ以上の答えが返って来たら困ると気がついたのは、ディーネが口を開いた後だった。
「無論、辞めるという事はマスターと一緒に暮らすという事であるぞ?」
「……俺と、一緒に暮らす!?」
それはつまり、レッドと同じくフリーになってここに住み着くという事だよな……。
「レッドがよくて妾はダメだとは言わせぬぞ?」
「いや、ダメじゃないけど……」
困った俺は救いを求めてマリーにコソッと話しかけていた。
「マリー、ディーネを近くに置いても大丈夫だと思うか?」
「うーむ、レッドと違い此奴は気性が荒いからのぅ……じゃがワシとしては出来れば願いを叶えてやって欲しいのじゃ」
ディーネを温かい目で見ているマリーの姿に、これは断れないなと思った俺は覚悟を決める事にした。
「マスター、マリーと何を話しておる!? もし、ダメだと言われたら妾はここで大暴れしてもよいのであるぞ?」
「わかった、わかったから! 今後一緒に暮らしてもいいから、もうここで暴れないでくれ!!」
「ほ、本当であろうな?」
「ああ、嘘じゃない」
その言葉にディーネはすぐに殺気を消すと、嬉しそうにはしゃぎ始めたのだ。
「嬉しい、嬉しいのであるぞ! これでマスターとずっと一緒であるな!」
今にも踊り出しそうなディーネの姿に、マリーが微笑ましそうに言った。
「うむ、これならもう結界を解いても大丈夫じゃろう」
「まあ、確かにそうだな……」
そう思って俺は何も考えずに結界を解いた。
その瞬間、ディーネの姿が目の前に現れたのだ。
「うおっ!?」
「マスターが結界を解く時を待っておったぞ!!」
そう言いながら俺に抱きついたディーネの不敵な笑みに、もしかしてこのまま絞め殺される?
そう思った俺は目をつぶっていた。
しかしディーネはそれ以上は何もせず、小声で俺に言ったのだ。
「ふふ、こんなにも人間に興味を持ったのは初めてであるな……」
「……え?」
「やっぱり妾はマスターが大好きであるぞ!」
そう言ってギューっと抱きついたディーネは、俺を絞め殺す事はしなかった。
寧ろ力加減に気をつけてくれてるディーネに、俺は驚いて目を開いたのだ。
「えっと、これはどうしたら……?」
「マスター、とりあえずそのままディーネを確保しておくのじゃぞ!」
「バンさん、頑張って下さい!」
助けを求めて二人を見たはずなのに、何故か応援されてしまった。
そう言われても俺もどうしたらいいのかわからないんだけどな……。
それに本当ならすぐにでもメインボスについて考えた方がいいのだけど、この状況だしそれは後回しにしよう。
とりあえず今は時間がないから、ディーネの住む場所をどうするかを決めるしかない。
「それじゃあ、今からディーネの住む所を決める事にしようか?」
「妾の住む場所……マスターと同じところではダメだというのか?」
「いや、流石にディーネは水の中にいないといつか干からびるだろ?」
「そうであるのだが……」
近場の水場は温泉か細い川しかないし、宿屋の水場に住まわれても困る。
何処か良さそうな場所に誘導できないだろうか……?
「一応聞くけど、ディーネは何処がいいとかあるのか?」
「うーむ、それなら先程までいたそこの温泉は居心地がよかったゆえに、そこでもいいのであるぞ?」
「な、なんだと! 俺様の寝床は絶対に譲らないぞ!」
ディーネの言葉にすぐ反論したのは、勿論レッドだった。
しかしディーネはそんなレッドを鼻で笑ったのだ。
「ふん、たかが赤竜ごときが妾の邪魔をするというのであるか?」
「お前だって水がなければ雑魚だって、俺様は知ってるんだぞ!」
「おいおい、二人とも頼むから落ち着いてくれ!」
「「だって、マスター!」」
二人が同時に喋ってくるせいで話が聞き取れないけど、とにかくレッドが滅茶苦茶嫌がってるからディーネを温泉に住まわせるのは無しだ。
というか俺には、ディーネが大人しくしてくれるような場所が全く思いつかなかった。
俺はため息をつきながら、ポツリと呟いた。
「はぁ……それならいっその事、向かいに小さい湖でも作くろうかな……」
「……湖を作る? マスター、それじゃ!!」
「え……俺、なんか呟いてたか?」
「今、小さい湖でも作ろうかなと言っておったのじゃが、覚えておらんようじゃな?」
どうやら無意識で、現実逃避のような事を口走っていたようだ。
「いや、流石に湖を作るのはダメだろ?」
「そうかのぅ、ワシはいいと思うのじゃぞ? じゃからディーネ用に新しい湖を作ってあげるといいのじゃ」
「だけど流石にこれ以上地形を変えたら怒られたりしないか?」
「それなら多分大丈夫じゃ。昔いたマスターは毎日のように、地形を変える奴じゃったからな」
懐かしそうに遠くを眺めるマリーは、きっと昔の地形を思い出しているかもしれない。
確かに初期マップは少しきになるけど、毎日地形を変えるのはどうなんだ……?
「うーん、それなら湖を作っても良さそうだな」
「私も作って欲しいです。温泉宿の横に湖ってまるで夏の避暑地みたいですから!」
「成る程、セシノの言う通りそう考えると湖もアリだな」
「ですよね、それにせっかくですから湖の周りにフラワーアートつくるのはどうですか?」
「おお、それなら湖も凄く華やぐな!」
「それとここはディーネさんの住処になるので、フラワーアートもお魚さん中心で可愛くする事にしましょう」
そんなわけで観光地計画の話は一気に決まった。
後はディーネの気持ち次第だ。
そう思って俺は、話が理解できずにキョトンとしているディーネに、どうしたいか尋ねていた。
「俺たちは宿のすぐ横にディーネ用の湖を作る事にしたんだけど、ディーネはそこが寝床になるのは嫌か?」
「……妾の為に、湖を?」
「ああ、そうだよ。元いた場所よりはだいぶ小さいし、人が観光にくるからうるさいかもしれない。それでもディーネが人を襲わずに我慢できるなら、俺の側にいくらいようが文句は言わないからさ」
「……それなら、妾はそこが良い。なによりマスターが妾の為に作ってくれるというのであれば、これより嬉しい事はないのであるぞ!」
ディーネは凄く嬉しそうに笑顔でそう言った。
「それじゃあ、ディーネの許可も得た事だし、明るくなる前に皆で突貫工事だ!」
「「「おー!!」」」
そんな訳で俺はダンジョンリフォームを使って、湖エリアよりは小さい湖をワンタッチで作り出していた。
こういう所は、材料さえあればとても簡単にできるから本当にありがたい。
「後はディーネの寝床だけど、どんなのが良い?」
「寝床は別に寝られればいいのであるが、それだけでは物足りぬ」
「えっと、ディーネ?」
「妾はマスターとずっと一緒にいたいのである。それゆえ、妾は決めたのである!」
「え、何を……?」
「マリーに出来て、妾に出来ぬわけがないのであるぞ!」
「って、眩しい!」
突然ディーネが光出し俺は目を瞑った。
そしてその光が徐々に収まったと思い目を開くと、ディーネには何故か足があった。
「あ、足が生えた!? いや、魚の尻尾が無くなったと言うべきか……?」
「この姿ならずっとマスターと一緒にいる事が出来るゆえに、妾が一番役に立つ存在だと証明する為に働くのであるぞ!」
「ええ!?」
まさかディーネは無理矢理地上で生きるつもりか!?
それに何で足が、とか色んな事に驚いた俺は何も言えず口をパクパクさせてしまったのだ。
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