107 / 168
第四章 ダンジョンを観光地化させる俺
107、新しい湖を作ろう
しおりを挟む「本当にディーネはメインボスを辞めるだけでいいのか?」
そう聞きかえしたのはいいけど、もしそれ以上の答えが返って来たら困ると気がついたのは、ディーネが口を開いた後だった。
「無論、辞めるという事はマスターと一緒に暮らすという事であるぞ?」
「……俺と、一緒に暮らす!?」
それはつまり、レッドと同じくフリーになってここに住み着くという事だよな……。
「レッドがよくて妾はダメだとは言わせぬぞ?」
「いや、ダメじゃないけど……」
困った俺は救いを求めてマリーにコソッと話しかけていた。
「マリー、ディーネを近くに置いても大丈夫だと思うか?」
「うーむ、レッドと違い此奴は気性が荒いからのぅ……じゃがワシとしては出来れば願いを叶えてやって欲しいのじゃ」
ディーネを温かい目で見ているマリーの姿に、これは断れないなと思った俺は覚悟を決める事にした。
「マスター、マリーと何を話しておる!? もし、ダメだと言われたら妾はここで大暴れしてもよいのであるぞ?」
「わかった、わかったから! 今後一緒に暮らしてもいいから、もうここで暴れないでくれ!!」
「ほ、本当であろうな?」
「ああ、嘘じゃない」
その言葉にディーネはすぐに殺気を消すと、嬉しそうにはしゃぎ始めたのだ。
「嬉しい、嬉しいのであるぞ! これでマスターとずっと一緒であるな!」
今にも踊り出しそうなディーネの姿に、マリーが微笑ましそうに言った。
「うむ、これならもう結界を解いても大丈夫じゃろう」
「まあ、確かにそうだな……」
そう思って俺は何も考えずに結界を解いた。
その瞬間、ディーネの姿が目の前に現れたのだ。
「うおっ!?」
「マスターが結界を解く時を待っておったぞ!!」
そう言いながら俺に抱きついたディーネの不敵な笑みに、もしかしてこのまま絞め殺される?
そう思った俺は目をつぶっていた。
しかしディーネはそれ以上は何もせず、小声で俺に言ったのだ。
「ふふ、こんなにも人間に興味を持ったのは初めてであるな……」
「……え?」
「やっぱり妾はマスターが大好きであるぞ!」
そう言ってギューっと抱きついたディーネは、俺を絞め殺す事はしなかった。
寧ろ力加減に気をつけてくれてるディーネに、俺は驚いて目を開いたのだ。
「えっと、これはどうしたら……?」
「マスター、とりあえずそのままディーネを確保しておくのじゃぞ!」
「バンさん、頑張って下さい!」
助けを求めて二人を見たはずなのに、何故か応援されてしまった。
そう言われても俺もどうしたらいいのかわからないんだけどな……。
それに本当ならすぐにでもメインボスについて考えた方がいいのだけど、この状況だしそれは後回しにしよう。
とりあえず今は時間がないから、ディーネの住む場所をどうするかを決めるしかない。
「それじゃあ、今からディーネの住む所を決める事にしようか?」
「妾の住む場所……マスターと同じところではダメだというのか?」
「いや、流石にディーネは水の中にいないといつか干からびるだろ?」
「そうであるのだが……」
近場の水場は温泉か細い川しかないし、宿屋の水場に住まわれても困る。
何処か良さそうな場所に誘導できないだろうか……?
「一応聞くけど、ディーネは何処がいいとかあるのか?」
「うーむ、それなら先程までいたそこの温泉は居心地がよかったゆえに、そこでもいいのであるぞ?」
「な、なんだと! 俺様の寝床は絶対に譲らないぞ!」
ディーネの言葉にすぐ反論したのは、勿論レッドだった。
しかしディーネはそんなレッドを鼻で笑ったのだ。
「ふん、たかが赤竜ごときが妾の邪魔をするというのであるか?」
「お前だって水がなければ雑魚だって、俺様は知ってるんだぞ!」
「おいおい、二人とも頼むから落ち着いてくれ!」
「「だって、マスター!」」
二人が同時に喋ってくるせいで話が聞き取れないけど、とにかくレッドが滅茶苦茶嫌がってるからディーネを温泉に住まわせるのは無しだ。
というか俺には、ディーネが大人しくしてくれるような場所が全く思いつかなかった。
俺はため息をつきながら、ポツリと呟いた。
「はぁ……それならいっその事、向かいに小さい湖でも作くろうかな……」
「……湖を作る? マスター、それじゃ!!」
「え……俺、なんか呟いてたか?」
「今、小さい湖でも作ろうかなと言っておったのじゃが、覚えておらんようじゃな?」
どうやら無意識で、現実逃避のような事を口走っていたようだ。
「いや、流石に湖を作るのはダメだろ?」
「そうかのぅ、ワシはいいと思うのじゃぞ? じゃからディーネ用に新しい湖を作ってあげるといいのじゃ」
「だけど流石にこれ以上地形を変えたら怒られたりしないか?」
「それなら多分大丈夫じゃ。昔いたマスターは毎日のように、地形を変える奴じゃったからな」
懐かしそうに遠くを眺めるマリーは、きっと昔の地形を思い出しているかもしれない。
確かに初期マップは少しきになるけど、毎日地形を変えるのはどうなんだ……?
「うーん、それなら湖を作っても良さそうだな」
「私も作って欲しいです。温泉宿の横に湖ってまるで夏の避暑地みたいですから!」
「成る程、セシノの言う通りそう考えると湖もアリだな」
「ですよね、それにせっかくですから湖の周りにフラワーアートつくるのはどうですか?」
「おお、それなら湖も凄く華やぐな!」
「それとここはディーネさんの住処になるので、フラワーアートもお魚さん中心で可愛くする事にしましょう」
そんなわけで観光地計画の話は一気に決まった。
後はディーネの気持ち次第だ。
そう思って俺は、話が理解できずにキョトンとしているディーネに、どうしたいか尋ねていた。
「俺たちは宿のすぐ横にディーネ用の湖を作る事にしたんだけど、ディーネはそこが寝床になるのは嫌か?」
「……妾の為に、湖を?」
「ああ、そうだよ。元いた場所よりはだいぶ小さいし、人が観光にくるからうるさいかもしれない。それでもディーネが人を襲わずに我慢できるなら、俺の側にいくらいようが文句は言わないからさ」
「……それなら、妾はそこが良い。なによりマスターが妾の為に作ってくれるというのであれば、これより嬉しい事はないのであるぞ!」
ディーネは凄く嬉しそうに笑顔でそう言った。
「それじゃあ、ディーネの許可も得た事だし、明るくなる前に皆で突貫工事だ!」
「「「おー!!」」」
そんな訳で俺はダンジョンリフォームを使って、湖エリアよりは小さい湖をワンタッチで作り出していた。
こういう所は、材料さえあればとても簡単にできるから本当にありがたい。
「後はディーネの寝床だけど、どんなのが良い?」
「寝床は別に寝られればいいのであるが、それだけでは物足りぬ」
「えっと、ディーネ?」
「妾はマスターとずっと一緒にいたいのである。それゆえ、妾は決めたのである!」
「え、何を……?」
「マリーに出来て、妾に出来ぬわけがないのであるぞ!」
「って、眩しい!」
突然ディーネが光出し俺は目を瞑った。
そしてその光が徐々に収まったと思い目を開くと、ディーネには何故か足があった。
「あ、足が生えた!? いや、魚の尻尾が無くなったと言うべきか……?」
「この姿ならずっとマスターと一緒にいる事が出来るゆえに、妾が一番役に立つ存在だと証明する為に働くのであるぞ!」
「ええ!?」
まさかディーネは無理矢理地上で生きるつもりか!?
それに何で足が、とか色んな事に驚いた俺は何も言えず口をパクパクさせてしまったのだ。
0
お気に入りに追加
639
あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~
日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ―
異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。
強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。
ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる!
―作品について―
完結しました。
全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

【完結】憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと
Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】
山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。
好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。
やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。
転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。
そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。
更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。
これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。
もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。
──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。
いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。
理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。
あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか?
----------
覗いて下さり、ありがとうございます!
10時19時投稿、全話予約投稿済みです。
5話くらいから話が動き出します?
✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

目覚めれば異世界!ところ変われば!
秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。
ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま!
目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。
公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。
命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。
身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる