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第四章 ダンジョンを観光地化させる俺
98、余裕な二人
しおりを挟む一生懸命身振り手振りした結果、セシノたちに何とか伝わったようだ。
その事にホッとした俺は、そのままセシノたちの動向を見守る事にした。
もし幹部らしき人物を見つけた場合、セシノたちに任せるのは危険だと思ったからだ。
「そう思っていたはずなのに、なんでだ……」
ほんの一瞬目を離した隙に、俺は3人を見失っていた。
移動したという事は多分怪しい人物を見つけて追いかけたんだと思う。
この周辺には俺の結界が張ってある為、セシノ達は結界の境界にいる筈だ。そう思った俺は人集りが出来てる場所を探す。
「三人とも割と小さいからな……って、あれは?」
そこに見えたのは、俺に向けて大きく手を振るセシノ達の姿だった。
すぐ見つかったのは良いけど、あんなにも激しく手を振っているということは、近くに怪しい奴がいるんだよな……。
そう思いながら周りを見回すと、そこにはお面を被ったいかにも怪しい二人組がいたのだ。
「……あれか?」
確かにそいつらはセシノ達から近い所にいた。
なによりミラが顔に手を当ててお面お面と主張してきているので、その2人組が幹部なのだろう。
そこから俺の行動は早かった。小結界で二人の動きを止めると、すぐに俺のもとまで連れて来たのだ。
しかし俺の前に着いたその二人は、何故か俺を無視したまま口喧嘩を続けていた。
「私、貴方と組まされた時点で嫌な予感がしていたのよね……。きっとこんな屈辱的な目に会うのも、貴方が疫病神なのが原因だと思わないかしら?」
「君さー、僕の事嫌いだからって何でもかんでも僕のせいにしすぎじゃないかなー?」
「だって本当の事よね。ギルドでお面を被るなんてアホな行動をしたのは誰なのかしら?」
「ぐっ……それは、急いでて……」
男の言葉はそこで途切れ、言い争いはようやく終わったようだった。
しかし女は次のターゲットに俺を選んだのか、捕まってるのに何故か上から目線で話かけてきたのだ。
「ちょっと、そこの貴方。すぐに私を解放してくれないかしら?」
「え? 何で捕まえたのにすぐ解放しないといけないんだよ」
「だって貴方もお面を着けているのだから、私たちの仲間なのでしょう? それなのに何故私にこんな事をしているのか教えてくれるかしら」
「何故って、俺はお面派じゃない。それにお前らを捕らえてるのは、俺の結界なんだけど?」
その発言に、突然男の方が何かを納得して叫びだしたのだ。
「あー、そうか! この結界にバンデットという名前……何で僕はすぐに気がつかなかったんだろう」
「……は?」
いやまて、俺はまだ名を名乗ってないぞ?
それなのに、どうしてコイツは名前を知ってるんだ。
「もしかして、俺の事知ってるのか?」
「いや~、それはどうでしょう?」
その声は、確かにどこかで聞いた事がある気がする。
……まさかこの男、本当に俺の知り合いなのか?
そう思って上から下までじっくり見たのに、つけているお面のせいで俺には全くわからない。
もういっそお面を外してやるか……?
そう思ってると、お面の女が俺より早く疑問をぶつけていた。
「言い方が回りくどいのよ。私にもわかるように言ってくれないかしら?」
「もちろん、ここから無事に帰れたときには説明するって。でもその前に、貴方が俺たちを捕まえた理由を聞いてもいいですよね?」
「そんなの、お前らがお面派の幹部だと思ったからだよ」
「幹部? まさか、そんなわけないですよー」
「いや、その反応は絶対に幹部だろ!? だから言わせてもらうけどな、こんな争いは今すぐ終わらせろよ」
「そう言われましても……それは俺たちではどうにもできませんよ?」
堂々と言い切るその姿に、俺はイラついていた。
何でこの二人は捕まって動けないままなのにこんなにも余裕なんだよ?
「お前ら……自分たちの状況をわかってるんだよな?」
「もちろんわかっていますよ。ですが僕たちは例え拷問されたとしても何も話しませんからー」
そう言われて困ったのは俺の方だった。
正直な話、俺は口が堅い奴らから情報を引き出すのは得意じゃない。
こういう奴らって、痛めつけたたところで絶対に話してくれないからな……。
「わかった。お前らがこの争いを止めないなら俺にも考えがある。今からお前らの素顔をこの町中に晒して、これが争いの首謀者だとばら撒いてやるからな」
「うーん、確かにそれは嫌ですね。ですがそれだと意味ないですよ? だって人の顔は簡単に変える事が出来るんですから、知らなかったのですかー?」
「は? そんな事、簡単にできるわけ……」
「残念だけどソイツの言ってる事は本当よ? 私のような魔法使いがいれば顔を変える事なんて簡単なの。だからあなたの言葉は私たちにとっては脅しでも何でもないのよね」
やはり俺には、コイツらを言葉で脅す事は無理そうだ。それなら後は痛めつけて脅す方法しかない。
そう決意した瞬間、後ろの扉が勢いよく開いた。
そして3人が一目散に俺のもとへ駆け寄って来たのだ。
「バン! 大丈夫か!?」
「え、サバン……!?」
その後ろにはイアさん、そしてシガンの姿も見えた。
特にシガンなんて凄く駆け回ったのか、息を切らして今にも倒れそうだった。
「まさかイアさんまで、ここに来てくれるとは思いませんでしたよ」
「実はシガンの話を聞いて、ギルド内で3人のお面派を捕まえたのですわ。ですが彼らは少し事情に詳しいだけで幹部ではありませんでしたの。それなら後はセシノさん達を補助してそうな貴方が捕まえているかもしれないと、そう思って急いで確認しに来たのですわ」
「流石イアさん……確かに俺が捕まえたこいつらは間違いなく幹部です」
俺は小結界に捕らわれている二人を指差す。
「あー、これは困った事になってきた。凄くまずい人たちが来てしまったよー」
「ちっ、お面の奴一人ならどうにか出来そうだったのに……」
もしかしてこの二人、俺なら簡単にあしらえると思っていたのか……?
「貴方、だいぶ下に見られてますわね」
「イアさん、それは言わないでくださいよ!」
「まあ、それはコイツだし仕方がない。それにここからは俺に任せておけ、これでも脅すのは得意だからな。だがその前に、俺のスキルでアイツらの素顔でも拝むとにするか!」
そのサバンの発言に、何故か男の方が凄く動揺し始めたのだ。
「あー、まずい。これはまずいなー」
「もう、横で一々鬱陶しい男ね……どうせバレるのだからもう少し堂々としてくれないかしら?」
男はさっきまで顔がバレても困らないと言ってたのに、今はこの焦りよう……やはりさっきのは口から出まかせだったのか?
それとも、サバンにはバレたくない理由があるとか……?
そう考えてる間に準備は終わったのか、サバンが二人に向けて叫んでいた。
「その素顔、見せてもらう!」
しかし、その瞬間に何処から現れたのかフードを深く被った男がサバンの邪魔をしたのだ。
「ストーーップ! 残念だけど、それをさせるわけにはいかないよ!!」
その男は俺たちをすり抜けるとありえない速度で二人を抱え、気がついたときには柵の上に立っていた。
「「「なっ!?」」」
それはどうみても魔法を使わずに人間がだせる速度ではなくて、誰もがその事に驚いたのだ。
だけど今の俺には、それよりも衝撃的な事がおきていた。
「う、嘘だろ……?」
その男は俺の小結界をいとも簡単に破壊し、お面派の二人を抱えていたのだ。
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