ダンジョンで温泉宿とモフモフライフをはじめましょう!〜置き去りにされて8年後、復讐心で観光地計画が止まらない〜

猪鹿蝶

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第四章 ダンジョンを観光地化させる俺

90、結界を縮めて

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 少しづつ縮んでいく結界の中で、顔を下に向けて体育座りをしていた男の体はついに収まらなくなったのか、体がミシミシいいだしていた。
 そして男はその痛みに耐えきれなくなり、声をあげ初めたのだ。

「いでででっ、やめろこれ以上縮めるな……流石にこれ以上は無理っ、いっでぇ!」

 俺は痛がっている今なら情報をこぼすかもしれないと、縮めるのを一旦止めてやる。

「そろそろお面派の事を教えてくれても良いんじゃないのか?」
「そ、それは……言いたくない……」

 何故そこまで頑なに言わないのか全くわからないが、俺はこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。
 だから仕方がなく、男の結界を更にゆっくりと縮めていく。

「いぎぃででっ! おい、更に縮んでんぞ!! もうムリ、ムリだから止めろ死ぬって!」
「大丈夫大丈夫。さっきも言ったけど、殺しはしないから。だけどこのまま教えてもらえないと、お前の体はそのままぐちゃぐちゃになるかもしれないけどな~」
「や、やめろっ! いっ、助けてくれ!!」
「もしグチャっとなっても安心してくれ、ここにはどんな怪我でもすぐに治してくれる最強のヒーラーがいるから、骨が折れても大丈夫!」

 笑顔で言う俺の後ろには、本当に凄腕のヒーラーであるイアさんがいるのだ。
 だからもし話すのが不可能な状態になったとしても、安心して治してもらえるわけだ。

「ひぃ、いぎぃ!! わかった、言うから。言うから!!」
「え、何だって? 聞こえなかったからもう一度聞こうかな」
「わかったから、何でも言うから! 俺がお面派で知ってること全部言うから!!」
「ふーん、それならこの後お面派は何をするつもりなのか、教えてくれるよな?」
「お面派は、この後大規模な魔法を使うんだ!!」

 その叫び声とともに俺は結界を縮めるのをやめた。
 そしてイアさんと顔を見合わせ首を傾げた俺は、男からその話を詳しく聞いてみる事にした。

「あのさ、そんな大規模な魔法とか言われても流石に曖昧過ぎるんだけど……。どんな魔法なのか知らないのか?」
「……俺は、幹部じゃないから魔法の種類までは知らないぜ。それにその話を知った経緯だって、リーダーの弱みでも調べようかとコッソリ着いてった場所で、たまたまお面派以外のやつと話してるのを聞いただけだからな……」
「は? 何の為にリーダーの弱みを?」
「何故と言われでも……そもそも俺たちがお面派にいるのは行き場がないからだぜ。そんな俺たちがリーダーの弱みに付け込んで、ここを乗っ取ってトップになりたいと思うのは当然の事だろ? それにしても今回はようやく弱みを手に入れたと思ったのに……お前らのせいで計画が全て台無しだぜ」

 もしかしてコイツはお面派のトップになりたくて、俺に話をするのを渋っていただけなのか……?
 その理由に呆れてしまった俺は、とりあえず話を戻す事にした。

「今その話はどうでもいい。お前は他に大規模魔法について、仕掛ける場所とかは聞いてないのか?」
「場所? そんなもん、この町全体に決まってるだろ……」
「は、この町全体だって!? どうして町中に魔法を使う必要があるんだ?」
「そんなの最初の時限式魔法陣と同じで、その攻撃を勇者派の責任にするのが目的に決まってるだろ。それも今回の方が、多分ド派手だと思うぜ?」

 あの爆発より酷いのがこの町全体を襲う可能性があるってことか……?
 しかも町全体ということは、敵も味方も全て巻き込むつもりなのかよ。

「まさかお前らのリーダーは、仲間も犠牲にするのかよ?」
「そうだろうな……リーダーはもとから俺たちの事なんて、沢山いる捨て駒としか思ってないはずだ」
「それなら、なんでお前はその事を知ってたのに他の仲間に伝えなかったんだ!? もし伝えていれば、お面派全員でリーダーを先に抑える事が出来たかもしれないし、そうすればこんな争いは起きなかったかもしれないんだぞ!!」

 つい怒鳴ってしまった俺をチラリと見て、男は乾いた笑いをしたのだ。

「くくくっ……お前はおかしな事をいうんだな。お面派は全員仲良しなわけじゃないし、団結してるわけでもない。色んな奴らが勝手に集まってできた集団を、リーダーがまとめてるだけだ。それにさっきも言ったよな、俺たちはここのトップを狙っていたと……だから他の奴らがどうなろうと、本当にどうでもいいんだぜ」
「どうでもいいだって……?」

 その発言に俺は怒りのあまり結界を縮めそうになってしまい、すぐに思い止まる。
 危ない危ない、いっぺんにグシャっとするところだった。
 それなのに潰すのをなんとか堪えた俺に向けて、男は更に頭のおかしい事を言いだしたのだ。
 
「ああ、そうだ。俺は自分が巻き込まれさえしなければ、基本的にリーダーの狂っているところは嫌いじゃないんだぜ」
「頼むからお前まで意味わからないこと言わないでくれるか? ただでさえ俺にはそのリーダーの狙いが全くわからないのにさ~」
「くくっ……それなら、もうヤケクソな俺がコッソリ聞いた話を教えてやるよ。リーダーの狙いは、全ての責任を勇者派に押しつけて勝つ事。そして勇者派をこの町から追い出し町を占拠する事なんだとよ」
「は? 町の占拠!?」

 突然大きくなったスケールに俺はつい声をあげてしまったのだった。
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