ダンジョンで温泉宿とモフモフライフをはじめましょう!〜置き去りにされて8年後、復讐心で観光地計画が止まらない〜

猪鹿蝶

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第四章 ダンジョンを観光地化させる俺

80、混乱の中

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 俺は今、爆発の原因を調べる為に何故かお面派に紛れて行動している。
 いや、本当なんで? って言いたいのは俺の方なのだけど、これはイアさんに頼まれた事なので断れるわけがなかったのだ。

 そんな俺は先程までイアさんの買い物に付き合って、ヒィヒィいいながら荷物持ちをしていた筈だった。
 しかし突然おきた爆発に驚いた俺とは違い、すぐに連鎖の気配を感じ取ったイアさんの指示で、俺は近くにある時限式魔法陣を俺のプロテクト・ゾーンで囲い無効化させ、事前に爆発を防ぐ事に成功したのまではよかった。
 その後すぐに情報収集をはじめたイアさんは、これが派閥争いだと知るや否や、お面を被ってる俺にお面派に紛れ込んで何が起きてるか調べてきてくれと、無茶振りをしてきたのだ。

 そんな訳で現在の俺は、ちょっと頭悪い奴を装ってお面派の奴らから、情報収集している真っ最中だった。

「あ、お前なんつった?」
「いえ、すみません! こんな事今更聞くのって変なのはわかってるんですけど、今日って何をしたらよかったんですっけ?」
「おいおい、お前はこの間の集会でリーダーが何を話していたのか全く理解出来てなかったのか?」
「いやー、そのぉ。すみません、俺って頭悪くて……」

 俺が話しかけた五人の男たちはお面を被ってるため顔は見えないが、俺の質問に怒ってるというよりは呆れているだけに見えた。
 きっとこの人たちはそんなに悪い人ではないのかもしれない。そして一番ガタイのいい男がこの中ではトップなのか、俺に言ったのだ。

「とりあえず、今は急いで勇者派のとこに行かねぇといけないから走りながら話すぞ」
「すみません、ありがとうございます!」

 どうやらお面派は、本当にお面さえ被っていればこんな怪しい俺でも仲間だと認識されるようだ。
 でもそれって組織としてどうなのかと正直疑問である。
 こうして俺は男たちの走る速度になんとかついていきながら話を聞き始めた。

「簡潔に話すと、今日は勇者派の集会がある。だからそれを強襲するのが俺たちの目的だったんだ。まあ、強襲といっても奴らを蹴散らす程度の話だったんだけどな」
「成る程~。あれ、でもさっきの爆発は……?」
「多分あれは作戦開始の合図だと思うんだが……あんな火力があるなんて聞いてねぇし、あれに巻き込まれた仲間もいたらしいからな。上の奴らの話だと俺たちの計画が勇者派にバレてて、魔法陣に細工をされたんじゃねぇかって話だ!」

 じゃあ、あの爆発は勇者派の仕掛けたものなのか……?
 少しひっかかる所はあったけど、俺はそのまま話を聞く事にする。

「そのせいでリーダーは凄く怒っちまってよ、すぐに勇者派へ宣戦布告したらしい。だからこの町は今からかなり荒れるぜ?」
「……いや、まさかそこまで大事になっていたなんて知りませんでしたよ」
「最後の話はついさっき回って来たばかりだから、お前が知らなくても仕方がねぇよ。それに俺たちが勇者派に向かうのは変わらねぇから急いで行くぞ、と言いたいところなんだが……お前、さっきから走るの滅茶苦茶遅くなってねぇか?」
「す、すみません……!」

 謝る俺はだいぶヘトヘトになっていた為、先程から男たちの速度に全然着いていけてなかった。
 でもこれは仕方がない事かもしれない。最近ダンジョン内で俺は何かあるとすぐフォグに乗ってしまい、あまり走る事もなく俺は体力が落ちてしまった。
 そのせいで、何も考えずにこの人たちの速度に合わせて走っていたら、すぐに息があがってしまったのだ。

「あ、あの……俺の事はいいんで先に行ってください!」
「おいおい、そん体力で戦えるのかよ?」
「それは、大丈夫だと思います……」
「なら、仕方がねぇ。途中で勇者派に襲われねぇように気をつけな」

 そう言いうと男たちは走るペースをあげて、すぐに見えなくなってしまう。その姿を見送った俺は走るのをやめて、来た道を戻り始めた。
 どうせ元々、すぐにお面派から離れようとは思っていたのだ。今回はお面派から早く離脱出来たのだから、体力不足だった事はショックだけど忘れよう。
 それに大体の話はわかったから、今は早くイアさんのもとに戻った方がいいだろう。
 そんな訳で急いでイアさんのところに戻った俺は、この場所で待っていると言った筈のイアさんがいない事に驚いていた。

「い、イアさん……一体何処に?」

 もしかしてお面派に襲われた……?
 いやいや、でもイアさんぐらい強かったらそんな事にはならない筈だ。
 そんな事を考えていたら上から声がした。

「私はここに居ますわよ?」
「え!? イアさん、なんで上から? それに一体何処に行ってたんですか……って、どうしてセシノを抱えてるんですか!?」

 突然上から降って来たイアさんに驚きつつ、何故かセシノを抱えていた事に更に驚いてしまう。
 セシノは移動方法がアクロバットで怖かったのか、少し涙目になっていた。それもだいぶ混乱している為、どうやら俺が目の前にいる事にも気がついていないようだ。

「先程まで勇者派を探りに行っていたのですが、その道中ウロウロしていたので捕まえておきましたわ」
「え、イアさんは勇者派にいたんですか……?」
「もちろんですわ、それに情報収集は基本中の基本だと、何度も教えましたわよね?」
「は、はい。そうですね……」

 それは俺がファミリーにいた頃、よく言われていた事だ。だからなのか当時イアさんから何度も説教をくらっていた事を思い出して、俺は苦い顔をしてしまう。
 イアさんはそんな俺の態度を、どこか懐かしむようにクスリと笑っていた。そして腕を動かそうとして、全く動かないセシノを抱えたままだった事を思い出したようだった。

「あらいけませんわね、降ろすのを忘れていましたわ。少し怖い思いをさせてしまったかもしれませんわね……」

 ようやく降ろしてもらえたセシノは地面に足がついた事でハッとすると、俺が目の前にいる事にようやく気がついた。
 そして慌てて俺に駆け寄って来ると声を荒げて言ったのだ。

「だ、ダンさん! よかった、やっと会えました……って言ってる場合じゃないです。ダンさんお願いします! お姉さんを、どうかお姉さんを助けて下さい!!」

 必死に服を掴みながら何度も助けてと言ってくるセシノに驚いた俺は、一体何があったのか理解できないままガクガクと体を揺さぶられていたのだった。
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