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第三章 温泉を作る俺
69、温泉宿をはじめます
しおりを挟むようやくタイトル回収の温泉宿になりました。
何故か予定の3倍ぐらい遅くなりました事、大変詫び申し上げます。ここからは駆け足気味で参りますのでよろしくお願いします。
ー ▽ ー ▽ ー ▽ ー
今日から改めて、温泉宿へとリニューアルオープンするのだけど、俺は今宿屋の方にはいなかった。
何故なら、冒険者ファミリー『暁の宴』のメンバー、俺の過去を知る冒険者が来る可能性が高かったからだ。
それに俺は温泉の方が気になっていて、最終調整をしに庭園温泉の方へと来ていた。
そして今の俺はレッドのいる神殿でザバザバと、お湯に浸かりながら作業をしているところだ。
「レッド、どうだこの派手な装飾は?」
「すっごく最高だぞ!! ありがとなマスター!」
この間マリーに貰った装飾を取り付けるのに結構時間がかかってしまい、開業ギリギリになってしまった。
その装飾は神殿から四方に紐が伸びており、端をそれぞれ木に巻きつけておいた。
そして紐には赤く光るマジックアイテムが等間隔に並べられている。その光はたまに明滅するらしいけど、今は明るいためよくわからない。
だけど夜になればそれはとても綺麗に光り輝くに違いない。これもきっと、マリーが夜でもこの庭園温泉を楽しめるようにと考えて使ってくれたものなのだろう。
「俺様、夜が来るのが楽しみだぞ!」
「俺も楽しみだから、また夜になったら見に来るよ」
「なあなあマスター、この光るマジックアイテムはこの温泉とやらの中にも置けないのか?」
「確かに上からも、下からも光が出てたらそれは綺麗だよな! よし、後でマリーに確認しておくよ」
「よろしく頼むんだぞ!」
「ああ、わかった」
そう頷いたのと同時に、宿の方からザワザワと人の声が聞こえてきた。
どうやら本当に、ミラたちは今日お客さんを連れてきてくれたようだ。
「思ったより早いな。レッド、早ければすぐにお客さんがこっちにも来るから、神殿でゴロゴロしてていいぞ。それから念のため神殿は侵入禁止になっているけど、もしそれを守れない奴がいたり何か困った事があったらすぐ俺に言えよ?」
「俺様なら大体の事は大丈夫だぞ。ダラダラするための準備に抜かりはないからな!」
それは胸を張って言う事ではないだろうが、レッドの場合は安心して任せられる気がする。
「それじゃあ、俺は少しだけ宿屋の方見てくる。後でまた見にくるからな」
「おう、マスターは温泉宿とやらを頑張れー!」
そう応援されて俺は庭園温泉を後にした。
そして宿屋に戻る途中から、あまりにも騒めきが大きくてもしかして結構な人数来ているのではないかと、俺は心配になってきたのだ。
『暁の宴』は今や大規模ギルドだと聞くし、部屋数は足りるといいのだけど……。
そう思って裏口からコッソリ入った俺は、扉を開けてすぐに綿毛のような柔らかい物にぶつかってしまう。
「うべっ!」
「マスター、僕伝言頼まれて待ってた!」
「ふ、フラフ……って、伝言?」
どうやら俺がぶつかったのはフラフだったようだ。
なんでも他のメンバーは全員忙しく、店に出られないフラフが伝言役としてここに残っていたようだった。
「セシノ、客室足りない困ってる!」
「やっぱりか……何部屋必要かわかるか?」
「二人の部屋が二、一人の部屋が四。部屋なくて大変!」
「確かにそれは大変だ……!」
俺は急いで今使っていない三階まで駆け上がると、ダンジョンリフォームを展開した。
マヨがいないから、シンプルな部屋しか作れない。
でも今はとりあえず形だけでも作っておかないと……。
そう思って俺は念のために、三階を全て客室へと変更したのだった。
「フラフ、三階の準備が出来たってセシノに伝えに言ってくれ」
そう言いながら俺はフラフを撫でる。
モフモフは最高だと、疲れも吹き飛んだ俺はフラフと別れて、次に露天風呂へと来ていた。
そこではすでに露天風呂へと入ってるお客さんがいた。その中にミラを見つけてしまい、本当に速攻で入りに来たのだと少し笑ってしまいそうになる。
露天風呂に入ってるミラは幸せそうで、これを作ったのは正解だったなと思っていたら、ミラたちの話し声が聞こえてきた。
「今日一番でここに来たのは正解だったですね!」
「ええ、ミラに聞いて凄く気になってたから来てよかったわ~」
「それにしても面白いところよね、ダンジョンに温泉宿なんてさ。それに入り口にいた着ぐるみの従業員さんも最初驚いたけど、中身は普通だしそのギャップで面白かったね」
どうやらフォグとアーゴは、普通に着ぐるみとして認識されたようだ。モンスターとバレなかった事に俺はすこしホッとしてしまう。
それにしても服を着て入ってるとはいえ、木の隙間から見てるとなんだか覗きをしている気分になってしまいダメだ。
それも、今露天風呂に入っているのは女性ばかりでなおさらダメだ!
そう思い、そこから立ち去ろうと動いたのがまずかった。俺はガサリと音を立ててしまったのだ。
「そこっ! 誰ですか??」
「いっ!」
ミラが重力魔法で桶を飛ばしてきたのが、見事に俺にあたった。
バレてしまった以上、姿を出さない訳にはいかないだろう……。
「誰かいるです! 覗きですか!?」
「いや、ミラ待ってくれ! 俺だ、俺だから……」
そう言って痛む頭を押さえながら、桶を手にしてミラたちに近づいた。
「あ、バンテットさんです!?」
「楽しんでいるところを邪魔するつもりじゃなかったんだ……少し確認したい事があってここに来ただけでだな」
俺は本当に如何わしい気持ちで来たわけでは無いのに、なんだか罪悪感があって視線を彷徨わせてしまう。
それなのにミラは俺のところまで濡れた服でくると、手を掴んで一緒に露天風呂を楽しんでる仲間に、紹介しはじめたのだ。
「ここにいるのが、前話したバンテットさんですよ!!」
「え? あの噂の結界の上にドラゴンを乗せて回したっていう!?」
「違うわよ、ドラゴンを結界でお手玉したのよ~!」
一体俺の話はどんな噂に変わってるのだろうか、怖いから聞くのはやめておこう。
そう思っていると、ミラは掴んだ手ごと俺を引っ張り始めたのだ。
「仕事中なのはわかってるのですが、一緒に入りましょうです!!」
「いいわね~」
「せっかくだから、一緒に入ろう入ろう!」
「いや、待って! 俺は今、入るつもりはっ!!」
そう言って、三人に引っ張られた俺は勢いよくザバンっと露天風呂へと落ちていた。
誰かが入ってるときは、絶対にここへは近づかないようにしよう。それに覗きもダメだ。
そう思いながら、俺は露天風呂から顔を出したのだ。
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