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第三章 温泉を作る俺
65、露天風呂に入ろう
しおりを挟む一旦着替えを済ませた俺は二人と一緒に露天風呂まで来ていた。
そして今はマリーの作ったマジックアイテムを取り付ける場所を探しているところだった。
「このアイテムはかなり熱くなるようじゃから、直接取り付けるのはやめた方がいいと思うのじゃ」
「それなら露天風呂とは別に温度を調整する為の、源泉所を作る必要があるわけだな……」
そう思い俺たちは庭園温泉と、露天風呂の間に更に小さめの源泉用溜池を作り、そこにも露天風呂で余った岩を敷き詰める。
そして隙間には魔力を込めたマジックアイテムを置いてゆく。そして暫く待つと、源泉はボコボコと沸騰する程の温度になってしまった。
「これは流石に熱すぎるな……どうやって温度を調整するべきか?」
「バンさん、近くに川が有りませんでしたか?」
「いや、無いんだよなー。それならもういっその事川ごと作るか!」
俺は開いていたダンジョンリフォームの地形を見て、少し離れている川を分岐させてここまで伸ばす。
作っている川は簡単に飛び越えられるぐらいの幅なので、特に橋を作る必要もなさそうだ。
「あとは、源泉から露天風呂までの道のりをグリグリ作って、その道の途中で川の水を入れて調整すれば……どうだ?」
温度がどれぐらいだろうかと思って、俺は合流地点のお湯に手を入れてみた。
「あっつ!」
「バンさん、大丈夫ですか?」
「火傷はしてないから大丈夫だ。それに少し熱くないと道中で少しは冷めるよな?」
「確かにそうですね、露天風呂に着く頃には丁度よくなってるかもしれません」
二人でお湯が流れていくのをじっと見てしまう。
だけど、お湯が溜まるにはまだまだかかりそうだった。
「よーし、まだ時間がかかりそうだし。俺はせっかくだからフォグとか他の奴らも呼んでくるよ」
でもフラフは水がダメだし、確認したらアーゴもダメだったので最終的に呼べたのはフォグだけになってしまった。
そして露天風呂に戻ってきた俺は今、フォグと一緒に露天風呂用に作った衝立の裏で静かに二人を待っていた。
現在はすでに、セシノとマリーが露天風呂に入っているのだ。
「マスター、後で俺も入っていいのか?」
「ああ、俺たちは二人が出た後に一緒に入ろうな~」
俺はフォグをモフモフしながら、先程お湯が溜まった露天風呂に先に入ったセシノとマリーを思い出す。
マリーは性別がないからともかく、流石にセシノが入っているところに俺も一緒に入る訳にはいかない。例え服を着て入っていたとしても……。
「なんだろう、年頃の娘を持つ父親の気分だな。だけど服を着ながら温泉に入れるってマリーは言ってたけど、どういう事なんだろうか……?」
「ていうか、服着てるなら一緒に入っても良かったんじゃねぇのか?」
「いや、そこはセシノに拒絶されたらショックじゃん……」
こんなおっさん臭する人となんて嫌、とか言われたら立ち直れない……いや、気をつけてるからそんなに匂わないと思うけどさ。
ため息をついた瞬間、衝立からヒョコッとセシノが顔を出した。その髪は軽く濡れている為、まだ入ってる最中なのがわかってしまい、違う意味でドキッと心臓に悪い。
「バンさん! これなら一緒に入れそうなので、せっかくだから一緒に入りましょう」
「は、え? ちょ、ちょっと!」
凄く嬉しそうなセシノに手を掴まれた俺は、そのまま引き摺られるように露天風呂まで連れてこられていた。
そこにはすでにマリーが、タオルをおでこにのせて幸せそうに目を閉じていた。
「これは、いいものじゃ~。体が溶けるのう……」
よく見ると、その体の半分は本当に溶けてスライム化していて、ホラーみたいになっていた。
そして俺は掛け湯をして、服を着たまま露天風呂に体を沈めた。
「あ~、これは疲れに効くな……」
「ふふ、こうして一緒に入れてよかったです」
「だけど服を着たままだと体が重いな……」
「もっとゆっくりしたい人用に、専用の服を作るか別の露天風呂を作るか考えた方がいいかもしれませんね」
「確かにそうだけど……」
俺は露天風呂に浸かっているセシノをじっくり見て、ほんのり赤く色づいた肌に視線を彷徨わせてしまう。
「これは服を着てても男女分けた方がいいと思うぞ?」
「え、そうですか?」
俺は、少し透けているセシノの服を指さした。
それに気がついたセシノは更に顔を赤くすると、自分を抱きしめながら、叫んだ。
「キャッ!」
「なんだなんだ? セシノの嬢ちゃん、マスターに何かされたのか?」
遅れて入ってきたフォグが、露天風呂に浸かりながら不思議そうに言った。
俺は申し訳なくなり、フォグの横に移動する。
「いえ、フォグさん何でもないです……。でも確かに気になる方はいるかもしれませんね、服を透けないものにするとか、少し考えた方がいいかもしれません」
「うーん、そこは問題が発生したら考えようか」
「そ、そうですね。それに今日はようやく露天風呂が出来たんです! ゆっくり楽しみましょう」
「ああ、そうだな」
そう思って横を見たらフォグの毛が気になってしまい、俺はヘタっている毛を撫でる。
「いい石鹸で洗えばもっとフワフワになるかな……」
「何言ってんだ、マスター。俺たちはモンスターだから、フワフワにしてもすぐに戻っちまうぞ?」
「あー、そうか。でも今のままでいてくれるならそれでいいさ」
「ふふ、でもフォグさんを洗うバンさんは少し見てみたいですね」
この大きな体のフォグを洗う俺を想像すると、休みの日の父親みたいだなと思ってしまい、俺は遠くを見つめてしまう。
「楽しそうなところ悪いのじゃが、温泉の鑑定結果が出たのじゃ。効能を知りたくないかのぅ?」
「さっきまで溶けてたのに、そんなこと調べてたのか?」
「勿論じゃ、ワシをなんだと思っておるのじゃ」
「万能スライム?」
「うむ……言われ方はあれじゃが、あっておるのじゃ」
ため息をついたマリーは立ち上がり、俺のところまでくるとその小さな体を俺の膝と膝の間に埋めたのだ。
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