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第三章 温泉を作る俺
63、露天風呂を作ろう
しおりを挟むミラ達が帰った翌日、俺たちは露天風呂を作るために鉱山スポットへとまた来ていた。
昨日開けた穴は、今日見てみたら完全に塞がっていて何事も無かったようになっていた。
そこは、流石ダンジョンボックスとしかいえない。
そして温泉を作るにあたってマリーに手伝ってもらい色々調べてみたところ、サルファーが含まれる物の方が効能が得られそうなので、それが含まれる岩を敷き詰めて作る予定となった。
「アーゴ、岩をどれぐらい持っていけそうかな?」
「ココ、ゼンブ」
「全部!? いや、流石にそんなにはいらないから……半分ぐらい運び出してもらえるか?」
「ワカッタ、オレ、ガンバル」
そういうと、アーゴは何も考えずに巨大な岩を殴っていた。
後ろの騒音を無視して、俺は岩を運び出してくれているソイルドールたちを温泉予定地まで先導する。
因みにこんな百鬼夜行のような光景を誰かに見せるわけにはいかないので、フォグとマリーには冒険者が来ていないか見張ってもらっていた。
そして温泉予定地に着くと、すでに大きな穴が準備してあった。
「バンさん、こっちです!」
そこではセシノが待機しており岩の形を見て置く場所を指示してくれる。
俺はその指示をソイドールに伝えると一体ずつ言われた通りの場所へ岩を置いてくれた。
そしてその流れ作業を行う事、数時間……。
この場所に、大きな露天風呂が完成した!
「完成したけど、まだお湯が入ってないんだよなー」
「どうやって庭園温泉からここまでお湯を持ってくるつもりなんですか?」
「そこなんだよなー、湯の素であるレッドはあそこにいるわけだし……」
「あの、私まだそのレッドさんという赤竜にお会いしてないのですけど?」
昨日、セシノがいないときに全てやってしまったせいで、私も見たかったな~とセシノは少し不貞腐れていたのだ。
「それなら、何か思いつくかもしれないし見に行くか?」
「いいんですか?」
「どうせこれからは何度でも会うんだから挨拶は必要だろうしな」
そう言って俺たちは庭園温泉まで来ていた。
因みに作業を手伝ってくれたモンスターたちは、役目が終わると知らない間にいなくなっていたのでお礼はアーゴにお願いしておこう。
「レッドー! いるかー?」
「マスターか? 俺様はここでずっとダラダラしているぞ~」
「ちょっと、紹介したいやつがいるから出てきてもらっていいか?」
「んー、俺様に紹介? 仕方がないなー、俺様は何と言っても最強のレッドフェニックス様だからな」
そういうと、神殿からフラーっと出てきたレッドは俺の肩にちょこんと乗った。
「か、可愛いーー! え、これが本当にあの凶暴な赤竜なんですか?」
「俺様が、可愛い……?」
確かにこのサイズだと、セシノからみたら可愛いのかもしれないけど……レッド的には可愛いは良いのだろうか?
「ご、ごめんなさい。赤竜を可愛いなんて言ったら怒りますよね……」
「いや、俺様はカッコいいから可愛いまで何でもこなせる、スーパーな存在だからもっと褒めていいぞ!」
どうやら、褒めてくれればなんでもいいらしい。
「それはともかく、紹介する。コイツは従業員の一人、セシノだ」
「よ、よろしくお願いします」
「そして、こっちが元山エリアのボスをしてたレッドフェニックスだ」
「俺様のことはレッドって呼んでくれていいぞ!」
そういうと、レッドはセシノの肩へと着地した。
「あ、足の裏は熱くないんですね?」
「俺様が熱いのは鱗のせいだからなー」
「それじゃあ、鱗だけでも水を温かく出来たりするのか?」
「出来るだろうけどよ、効果が短いとおもうぞ?」
「まあ、そうだよなー」
鱗で温めるのはありかと思ったけど、レッドの鱗を毎回毟るわけにもいかないからな……。
「なんだなんだ、なんか悩み事か? この俺様が手助け出来る事なら聞いてやるぞ!」
「……えーっと、それがだなぁ。向こう側にも温泉を作ったんだけど、源泉をどうやって持ってこようかと悩んでいてだな……」
レッドは俺の話にうんうん頷きながら聞いてくれると、少し何かを考えて徐にベリっと鱗を剥がしたのだ。
「いやレッド、何やってんだ!?」
「いや、悩み解決するためには俺様の鱗を使ってマジックアイテムを作ると早い気がしたんだぞ!」
「マジックアイテム?」
「俺様の鱗には炎属性が付与されるからな、それで作った灼熱の宝玉とかなら、魔力さえ与え続ければずっと温かいのが持続するはすだぞ」
「成る程、加工して使えばいいのか……でも誰かマジックアイテム作れたっけ?」
そう思い俺はセシノを見ると、やはり首を振っていた。
そして反対側を見るとマリーがうんうん頷いていた。
そうか、マリーなら作れる……。
「って、マリーいつのまに!!」
「なんじゃ、わしがここにいてはいかんのかのぅ?」
「いつもマリーさんは突然現れるからびっくりしちゃいますね」
「そうじゃろうか? それよりレッドよ久しいのぅ」
そう言いながら、マリーはレッドを見てニヤリと笑った。
「よー、マリー久しぶり! 俺様はこうして立派なドラゴンになったんだぞ!」
「マスターよ知っておるか、こやつは元々フェニックスじゃったのが突然変異で竜になった個体じゃ」
「そ、それは恥ずかしい過去だから言わないでくれよ!!」
焦るレッドを見て、それでレッドフェニックスなのかと納得してしまった。
「そんな突然変異なんてあるんだなー」
「湖におるウィーネも同じように突然変異じゃよ? 突然変異すると異常に強くなったりするから、すぐにわかるのじゃ」
「マリー、昔の話はもういいだろ! 俺様は鱗を置いて戻るからなー」
そう言って、レッドは恥ずかしそうに神殿の中へと帰っていった。
モンスターにも過去の話をされるのは嫌だとかそういうのがあるんだな。
「相変わらず、レッドは面白いやつじゃな」
「揶揄ってやるなよ」
「これも愛情じゃよ……」
そう言ってレッドが去っていった方を見守るマリーは、親の目をしていた。
マリーはこのダンジョン全ての母だよな、なんて思っていたらくるっとマリーがこちらを向いた。
「ところでマスターよ、この鱗をマジックアイテムにするんじゃったな?」
「ああそうだけど……? この鱗だけで本当に作れるのか?」
「牧場に行けば加工するためのアイテムが揃っておるのじゃ、ワシが加工している間に露天風呂が機能するように準備しておくのじゃぞ。ワシも一度入って見たかったのじゃ、楽しみじゃな~」
と言いながら去っていく、マリーを見て俺とセシノはつい笑ってしまった。
「なんだか、温泉行くのを楽しみにしてるお婆ちゃんみたいでしたね。って、マリーさんにお婆ちゃんなんて失礼でしたよね……」
「いや、アイツの精神年齢はおばあちゃんだから間違ってないだろ。それより俺たちは露天風呂に戻るか。まだまだやることは沢山あるからな」
「はい、今日中に形にできるように頑張りましょう!」
そして俺たちは、露天風呂の周りの物を順番に作りはじめたのだった。
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