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第三章 温泉を作る俺
59、宿屋へ戻る
しおりを挟む俺はレッドから飛び降りた後、今まで傍観してました風を装って急いで3人のところへと走り寄っていた。
「3人とも大丈夫だったか!?」
「あ、あれ? 赤竜の上に乗ってたお面のお兄さんは……」
俺がこちらにいるのに、ミラは困惑しているようだった。
「バンテットさんが、先程のお面の方では無かったのですね……?」
「ああ、俺はあそこにずっと隠れていたからな。きっとあれが噂のお面の男なのかもしれないな」
どうせお面の男が誰かなんてわからないんだから、押し付けておこう。
そんな事を考えていたら、男たちの様子を確認していたシガンがこちらに振り返り言った。
「それよりも、この5人組どうしますか?」
「あー、そうだな。ここに放置はできないから、縛ってトロッコに乗せて連れて行くか……」
「あの、この方々ですが……私たちがお預かりしてもよろしいですか? 私たちのファミリーを馬鹿にされたままでは困りますので、話し合いをさせて頂きます」
「確かにファミリー同士の問題になると不味いからな、その方がいいだろう」
そう頷いた俺はミラにトロッコを持ってきてもらい、男たちも一緒に乗せていったん宿まで帰ることにした。
そして気がついたらレッドは俺の服の中に戻ってきていたのだった。
帰りながら、俺はずっと気になってた事をミラたちに聞いていた。
「そういえばせっかく鉱山までいったのに、クエストはよかったのか?」
「実はですね……ふっふっふ~、じゃーんなのです!」
ミラが手を離せないためか、セーラーとシガンが沢山の鉱物を手にしていた。
「おお、こんなにどうしたんだ?」
「あの男たちから拝借させて頂きました」
「僕たちが本来採掘できるはずの時間分は貰ったのですけど……本当によかったのでしょうか」
「それはあいつらの自業自得だから、そのぐらいならいいんじゃないのか?」
人の物を盗むのは良くないが、もとはこの男たちが蒔いた種なんだ。それぐらい自分たちで回収してもらうのは当たり前だろう。
「それより、お前らはこのままダンジョンから帰るのか?」
「私たちは一度宿屋に寄らせて頂いてから、戻ろうかと思っています」
「もしかして私たちお客さんじゃないのに、迷惑です?」
「いや、迷惑じゃないさ」
でも、せっかく宿屋に戻るなら温泉をアピールしておくのもいいかもしれない。
「それから今日、温泉ができる予定なんだけど……よかったら見ていかないか?」
「「「温泉?」」」
「ああ。ちょっと変わった温泉だから、少しでも気になるなら見に来てくれるだけでもいいんだが……どうする?」
「私、すっごく見たいです!」
最初に俺の意見に乗ったのはミラだった。
それに続くように他の二人も顔を見合わせると、こちらを向いた。
「私も見たいですね」
「僕も……」
「それなら皆んなで見に行こう!」
そうは言ったけど、まだ庭園温泉が温かくなってない事を思い出した俺は、レッドに先に戻って温めておいて貰えるようにお願いしておく。
そしてようやく宿屋に着き、俺はトロッコを降りていた。
「やっと宿屋に到着したな。ところで、コイツらはどうするんだ?」
「そうですね、とりあえず起きるまで何処かに隔離しておくのがいいのではないでしょうか?」
セーラさんに言われて、俺は考た。
それなら逃げだせないようにするため、レッドにでも見張っててもらうか。
「じゃあ、あっちに連れて行きたいからミラだけ借りてもいいか?」
「トロッコ動かすのは任せて下さいです!」
「では、私たちは先に宿屋で待っていますね」
そして俺とミラは男たちをトロッコに載せたまま庭園温泉の端へと置いてきたのだった。
その帰り道ミラは興奮した様子で楽しそうに話しかけてきた。
「バンテットさん、あれが本当に温泉になるのです?」
「ああ、その予定だよ」
「もしかして今日、入れたりしますですか?」
「多分入れると思うけど、服はどうするつもりなんだ?」
「あ……忘れてましたです。どうしようです?」
本気でショックを受けてそうなミラに、それならと代わりを提案してやる。
「それなら今日は足湯ぐらいにしてさ、また今度改めて泊まりに来てくれよ?」
「うぅ……絶対に泊まりに行くでしゅっ!! あ、また噛んじゃいましたです~」
そんなミラを見て笑いながら、俺は宿屋の扉を開けたのだった。
そこにはセシノとセーラにシガンの3人が立ち話をしているようだった。
「あ、バンさんおかえりなさい。なんだか大変だったみたいですね?」
「まあ、それなりに……。それにしてもマリーは……?」
俺は玄関ホールを見回したけど、そこにはマリーの姿は見当たらなかった。
「マリーさんなら用事があるからと、出かけましたよ?」
「そうか、もう夕方近いからかな……?」
多分、マリーは牧場に向かったのだろう。
あいつはああ見えて一番忙しいからな。
「それで3人はなんでこんな場所で話し合いをしているんだ?」
「えっと、お二方から事情を聞いていただけです」
「まあ、それだけではないですけど……」
「せ、セーラさん。その話はしないで下さい」
「え? バンテットさんとの関係は聞いてはいけないことだったんですか? って、すみません。僕は言ってはいけない事を……死んで詫びます!」
そう言って、シガンはすぐに剣の鞘を抜こうとした。
それに焦ったセシノはシガンの剣を押さえようと手を伸ばす。
「いえ、死なないで下さい! 私が誤魔化そうとしたのが悪かったので……!?」
「セシノさん、シガンのそれは本気じゃないですから無視していいのですよ」
「そ、そんなの簡単に慣れませんから……」
少し半泣きのセシノを見て、そんな焦るような関係だっただろうかと、俺は話の意味を聞いてしまう。
「セシノにとって、俺との関係って?」
「そ、それは……」
目をキョロキョロさせて顔を赤くし始めたセシノに、そんなに言いづらい事だろうかと首を傾げながら言う。
「俺がセシノの保護者って話だよな?」
「そ、そうです。そういう話をしてました! だからもうこの話はやめにしましょう」
そんなセシノの様子にセーラとシガンはクスクスと悪い、俺とミラは首を傾げたのだった。
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