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第三章 温泉を作る俺

55、竜を祀る

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 レッドが仲間になったのはいいが、俺はとある事で悩んでいた。

「このまま帰るとレッドのサイズが大き過ぎて、他の冒険者にバレるよな?」

 正直な話、俺にはどうやってレッドを宿屋へと連れて行けばいいのか全くわからなかった。
 悩みながら何か良い方法は無いかと、俺はアーゴを見ながら呟いた。

「レッドがアーゴみたいに小さくなれればなぁ~」
「なれるにきまってるだろ」
「は……? レッドも小さくなれるのか!?」
「もちろん、なにせ俺様は最強だからな!」

 そう言って、レッドは俺の手に収まるぐらい小さくなっていた。

「ふふん、小さくならないと隠れられないところがあるだろ? 俺様はサボるためにスキル全振りだからな!」
「そんなドヤ顔で言われても……」
「そう言う訳だから、ボスの交代早くしろ!」

 そう促された俺は、仕方なくダンジョンリフォームを展開して、火山のボスを赤竜からその周りを飛ぶフェニックスにそっと変えておいた。

「マスター、フェニックス、オレ、ツタエテオク」
「そ、そうか。それは助かる」

 確かに黙っておくのはよくないから、ここは全部アーゴに任せておこう……。
 俺はダンジョンリフォームを閉じると、レッドを改めて見た。

「これでお前はもう戦わなくても多分大丈夫だから、俺たちと一緒に行こう!」
「マスター、俺様のためにサンキュー!」

 そう言って肩に乗ったレッド連れて、俺は宿屋に戻るためにフォグのところに向かう事にした。
 勿論、アーゴには露天風呂用の岩を運ぶのを手伝って欲しいとお願いしておいたので、どの鉱物にするか決めないといけない。
 でも今は庭園温泉のが先だから、後回しにしよう。

「フォグ、帰るぞー」
「おお、マスター! 良く無事だった……ん、その肩の竜って……」
「ああ、火山の元主だった赤竜のレッドだ。今日から俺たちの仲間になる」
「俺様はレッドフェニックス! 気軽にレッドと呼ぶ事を許してやるぞ!」

 凄く上からな態度に、フォグは何度か瞬きすると首を傾げた。

「コイツ、ドラゴンなのか鳥なのかよくわからない愉快なやつだな。俺はフォグウルフのフォグだぜ。森エリアの総括をしてるから、よろしくな!」
「森エリアの総括か、よくそんな面倒な事してられるな……俺様には無理ってやつだな!」

 そう話しながら笑う二体をみて、これなら仲良く出来そうだと俺は安堵する。

「よし、それなら宿屋まで頼むぞフォグ!」

 俺が背に乗ると、フォグはすぐに駆け出したのだったのだった。
 ようやく宿に着いた俺は、すぐにレッドを試したくて、そのまま温泉予定地へと移動していた。

「おお、少しだけ花と草が整えられてる……」

 どうやら、セシノが気になるところを少し直してくれたようだ。
 しかしそのセシノは、今はもう見当たらない。だいぶ時間も経っているし、もう宿に戻っているのだろう。
 本当はセシノにも見てほしかったけど、俺の好奇心は今だといっているので仕方がない。
 そう思い、俺はレッドに向けて庭園のど真ん中にある神殿を指差した。

「さあ、レッド! 今日からここがお前の家だ」
「おお!!」

 喜ぶレッドを見ながら俺は思っていた。
 神殿の真ん中には、やはり祀るものがあった方がいいよな。だからレッドを置いておけばちょうどよさそうだ。

「レッドはあそこの中であれば、好きなところにいてくれていいからな。ゆっくりと寛いでくれよ」
「そうかそうか! それならば俺様の寝床は~」

 そう言って楽しそうに飛んでいくレッドを見守っていると、案の定神殿の真ん中にある台の上に寝転んだ。

「あ~、ここがいいってやつだ。もう動きたくねぇよ~」

 レッドのいるその台は、水に薄っすらと沈んでいるように見える。
 どうやら体が完全に水に浸からないため、レッドにとっても丁度いい場所なのかもしれない。
 それを確認した俺は、池の中に手を入れて温度を確認する。

「流石にまだ温まらないか……」

 お湯になるまでどのくらい時間がかかるのかわからないから、温めてる間に宿屋の方を見に行くか。

「レッド! この水が温かくなるまで、俺は少し席をはずすからなー!」
「おー!」

 神殿から嬉しそうな声がしたので、多分大丈夫だろう。
 俺はフォグを連れて宿屋に戻ろうかと考えて、先程レッドからトロッコで逃した三人の冒険者の事を思い出す。
 もしかするとこの宿に来てるかもしれないから、フォグを連れて行くのはやめた方が良いだろう。

「じゃあ俺は一人で宿に戻るけど、何かあったらまた呼ぶかもしれない。でもダンジョン優先で行動してくれていいからな」
「わかったぜ、マスター」

 俺はフォグを置いて、宿屋の扉を開けた。
 そこには受付係をしてくれてる、マリーがポツンと立っているだけだった。

「マリー、ただいま」
「マスター、お帰りなのじゃ。どうやら火山の方が大変だったみたいじゃが……見た感じ、怪我はしておらんようじゃな?」
「ああ、この通り無事だよ。それよりもここに若い冒険者が3人来なかったか?」
「それじゃったら、今は食堂の方でセシノと話しておるぞ?」
「ちゃんとここまで来てくれたのか……よかった」

 あの3人が無事にここまで辿り着けた事に俺はホッとする。

「しかし、あの3人はもしやするとまた厄介事を持ち込んで気たかもしれんのじゃよ?」
「それはどういう……」
「直接行ってみればわかるのじゃ」

 そう言われて気になった俺は、すぐに食堂へと向かう事にしたのだった。
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